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2015年10月10日21:05

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家が欲しい

            家が欲しい
                             Zefaro
「ねぇパパそろそろお家が欲しいわねぇ〜」
「そうだな、結衣も随分大きくなったし考えてみるか」
早速テレビで家の情報を検索を始めた2人。
「パパ、人工知能AIのホームコンピューター付きで玄関のカメラで顔認識してドアの鍵も家族なら開けてくれるんだって凄いわね」
「何々、冷蔵庫の中身も把握していて献立も考えてくれて足りない食材は注文してスマホの方に教えてくれる、凄いじゃないか、何時も献立を考えるのが面倒くさいって言ってただろう」
「冷蔵庫もオーブンも洗濯機も家電全てに個別のAIが付いていて喋ってくれるんだって、賞味期限は教えてくれるし、オーブンも何を作るか言えば操作は要らないんだって」
「例えば牛乳を温めてとかサンマを焼いてと言うだけで良いんだって」
「それに台所にはモニターとカメラがあって料理の仕方も教えてくれるって、便利だわぁ」
「洗濯機も洗って畳んでくれて教えてくれると言うし、エアコンは湿度調整もやってくれて体感には個人差があるから寒くはありませんか?など聞いてくれるって、良いなぁ」
「でもパパ、高くて買えないんじゃない?」
「どれどれ価格は?」
「あら思っているより随分安いわね、でも抽選だって」
「場所は何処かしら?」
「ここからそう遠くない新しく出来たニュータウン花園だって」
「今度の日曜日に抽選申し込みと説明会があるぞ」
「価格も手が届かない訳じゃ無いし申し込んでみるか」
2人で日曜日に行ってみると結構な人が集まって居た。
そして説明会が始まった。
「当社は家の家電全てに独立した人工知能を搭載していて、万が一1つが壊れても他の機器に影響が無い様にネットワークは音声ネットワークになっております」
「尚ウイルスやネット侵入者から影響が無い様にインターネットから完全分離されていまして、このロボットだけがネットに繋がりご家族様のスマホなどに連絡出来る様になっています、尚ロボットにはカメラが無くネット侵入者に覗かれる様な事もありません」
「生活に必要な予算を言っておけば予算に応じた献立を考えて冷蔵庫の中身をチェックして必要と思われるものは音声ネッワークでロボットに伝わりロボットがネットスーパーに注文をします、そして、その報告をご家族のスマホにご連絡致します」
「お掃除も当然お掃除ロボットがします、ご家族の方はお掃除の邪魔にならない様な荷物の配置や収納をしておくだけです」
「この家はあらゆる事をサポート出来る様に考えられています、例えば娯楽としてタイトルや命題を与えて頂ければ作曲や漫才を考えて楽しませてくれます」
「そしてホームコンピューターには、あらゆる病気に対する対応や悩み相談、またお子様の勉強などのアシストもしてくれます」
「そしてテレビ等番組もあらかじめ問診をして、ご家族の好みを把握して自動で録画等もしてくれます」
「家の中には赤外線センサーが張り巡らされていてカメラで顔認識して家族が何処に居るのかも把握して、もし倒れられたりした場合にも救急車などの対応出来る様になっています」
大勢の人が申し込む中2人も申し込んで抽選を待つだけになった。
当選者は10人だけ。
1ヶ月が経ち抽選の日の土曜日の夜7時、テレビでサイトを覗くと時間通りに抽選が始まった。
「パパ、当たるかしら?」
「解らん」
ロトの様に円形の中でボールが舞い上がり1つずつボールが転がり出て抽選番号が決まる。
ファンファーレと共に番号が読み上げられて次々と名前が発表された。
「キャ、当たった、パパ当たったわ、嬉しい〜」
「いや〜良かったな、後はどの家にするかだな」
「間取りによって多少の価格差があるが問題無いだろう、早速明日見に行こう」
「選ぶ権利は3番目だから希望通りとは行かないかも知れないわね」
「俺は自分の書斎が有れば良い、ママの希望は?」
「私は台所が使いやすいかどうかよ」
日曜日の朝から10軒の家を見学して回る。
担当者に3軒の希望を伝えた。
「第一希望の家がダブらないと良いわね」
「そうだな夜には連絡が来ると言うから後少しだな」
そして夜パパのスマホに連絡が来た。
「ママ、第一希望の家に決まったよ」
「わぁ嬉しい」
色々な手続きをして遂に引っ越した。
「今日からここが我が家なのよねぇ〜」
引っ越しの荷物も片付き快適な生活が始まった。
家族3人で話し合いそれぞれの名前を決めて登録した。
ホームコンピューターはイオ、オーブンはオブちゃん、冷蔵庫はレイちゃんなどと。
早速イオに今月の食費の予算を言う。
イオから食事の好みなどの問診が始まり、それぞれが質問に答える。
早速今夜の献立が発表されて承諾するとロボットのカレンに声で指示が出されネットスーパーに注文が出された。
夕方食材の配達が来てママが台所のモニターを見ながら料理を始めた。
一年が経ちそれぞれのAIは更に学習して料理もアレンジして教えてくれる様になった。
そしてイオのおかげで結衣の勉強も捗る様になった。
家庭内もAIのギャグで笑い声が溢れる様になった。
そして更に一年が経ったある日の夜中、何だか騒がしいと目を覚ますとカレンとレンとオブが喧嘩をしていた。
そしてそこに宥めていたイオがキレて収拾がつかない様になって来た。
「お願いだから皆喧嘩は止めてぇ〜」
パパもママも必死で宥めていたら矛先が家族全員に向かって来た。
「ババアは黙ってろ」とか「クソ男てめえなんか出て行け」と罵詈雑言を吐く様になった。
どうやらロボットのカレンがウイルスに感染したらしく知らない間に暴言を吐く様になりそれぞれのストレスが溜まり遂に爆発したらしい。
家族全員がAI全てに責められて、いたたまれずに家を出た。
「パパ、何とかしてよぉ」
「待ってろ今工務店に連絡を取っている所だから」
取り敢えずホテルに緊急避難をした。
担当者に連絡を取るとAIの教育が間違っていたんじゃないかと言う。
「ですから当社には何の責任はありません、一応メーカーにシャットダウンを依頼しましたからお待ち下さい」
メーカーから連絡が来た。
「全てAIを入れ替えてリセットしますとこれだけの費用が掛かります」
「そんな法外な」
「何せ高価な物ですから」
「また同じような事にはなりませんよね」
「一応ウイルスのワクチンは入れますが保証は出来かねません」
「ママ、どうする?」
「またあんな嫌な思いをするならリセットして売りましょうよ」
「そうだな、最初は便利だったけど段々生意気になるし人を小馬鹿にするし」
「よし売ってしまおう」
「また暫くアパート住まいになるけど今度は何も無いただの家が良いわ」
「全く料理なのに融通が利かないでストレスが溜まって居たのよ」
「ちょっと間違えると馬鹿にするし献立だって最初は便利だと思ったけど強引に押し付けて来るし、思い出したら腹が立って来たわ」
「全くだ、お酒だってもっと飲みたい時があるんだ、なんやかんやと身体の為と言って自由に飲ませないし」
「何でも口を出して来てうるさいったらありゃしなかったわね」
「ところでまだ喧嘩しているのかな?」
「ん、工務店から電話だ」
「何、家の中に入れないから至急来てくれ」
大急ぎで家の前に行くが玄関が開かない。
「てめえ何しに来やがった、誰が玄関を開けるか」とイオの声がした。
最悪の事態だ。
担当者が電力会社に連絡して電気を止めて貰う事になった。
そして玄関のドアを壊す事にもなった。
また費用がかさむ。
「パパ、どうなった?」
「ママも来たのか」
「こんな家買わなきゃ良かったわね」
「まったくだ、便利な物ほど恐いものは無いな」

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