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2015年06月24日17:57

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『フォックスキャッチャー』

映画『フォックスキャッチャー』を観た。

(2014年 米 監督:ベネット・ミラー
出演:スティーブ・カレル チャニング・テイタム マーク・ラファロ シエナ・ミラー ヴァネッサ・レッドグレーヴ アンソニー・マイケル・ホール ガイ・ボイド ブレット・ライス)

なんとなーく観たくなって、劇場にて鑑賞。でも、なんとなく観るには、ギョッとする作品だわね。

【大学のレスリングコーチを務めるオリンピックメダリストのマーク(チャニング・テイタム)は、給料が払えないと告げられて学校を解雇される。失意に暮れる中、デュポン財閥の御曹司である大富豪ジョン・デュポン(スティーヴ・カレル)から、ソウルオリンピックに向けたレスリングチーム結成プロジェクトに勧誘される。同じくメダリストである兄デイヴ(マーク・ラファロ)と共にソウルオリンピックを目指して張り切るが、次第にデュポンの秘めた狂気を目にするようになる。(シネマトゥデイより)】

1996年に実際に起こった事件を基に描かれている。

そもそも、こういう事件が起こったということすら知らなかった。ソウルオリンピックの頃なんて、そう昔のことでもないんだけど…。ところで、デュポン社とは、世界第3位の化学会社だそうで、有名なものにテフロン加工があるらしい。そう言われれば、ちょっと馴染みが出てきたな。

その大富豪家に生まれた、ジョン・デュポン。生粋のおぼっちゃまの感じがありあり…。
母親から愛情を受けずに育った彼は、友達もいなかった。幼い時に遊び仲間はいたが、どうやら彼の母親がお金で「友達」を買ったということらしい。…これでは嫌でも屈折してしまう。

その屈折しまくったジョン・デュポンを演じたのが、スティーブ・カレル。『リトル・ミス・サンシャイン』の叔父さん役と聞いて、ようやくピンときた。特殊メイクのせいで、本当に誰だかわからないもんね…。オスカーは逃したものの、何を考えてるのかよく分からない曲者を、よくここまでクールに、不気味に演じきれたものだ。

そのデュポンのレスリングチーム“フォックスキャッチャー”に誘われたのが、マーク・シュルツ。ロスオリンピックの82キロ級レスリングの金メダリスト。金メダルは獲得したが、レスリングはアメリカではマイナーなスポーツ。仕事も解雇され、同じく金メダリストの兄デイヴに頼るしかなかった。

そんな根暗な男を演じたのが、チャニング・テイタム。ずいぶんと体を鍛えたのね〜。すっかりムキムキ!さて、このマークという人物は、どうやら兄に対してコンプレックスを抱いているらしい。ずっと親代わりのように育ててくれた兄。感謝はしているが、自立したかったのかな。

マークの兄、デイヴ。マーク・ラファロ演じるこの人物は、とても人望があり、レスリングも強い。コーチとしても一流の腕を持っている。美しい妻と子ども、守るべき家族もある。

あと、母親役のヴァネッサ・レッドグレーヴが貫禄。出番は少ないけど、気品のあるマダムって感じで存在感抜群だったわ〜。

フォト


それにしても…、私はレスリングのことは素人だけど、チャニング・テイタムもマーク・ラファロも
ずいぶんと本格的にレッスンを積んだのね。マーク・ラファロは経験者だったらしいが、実際のデイヴとは利き手が逆だったらしく、新たに訓練し直したのだとか。

なんというか、とにかく不快だ。ジョン・デュポンという人物が不快すぎる。お金で何でも手に入れてしまうデュポン。母親が自分ではなく馬に心血を注ぐように、彼はレスリングに没頭した。自宅の敷地内に練習場を作り、選手を住まわせ、オリンピックで金メダルを狙える選手を育てようとしたのだ。

一方、自分の居場所をやっと見つけたと思ったマークは、デュポンに傾倒していく。
でも、兄デイヴの存在を絡めながら、運命の歯車は少しずつ狂っていくのね…。

この事件は、異様としかいいようがない。いえるのは、デュポンもマークも「大人」ではなかったということ。子どもがそのまま大きくなったような…。お金では買えないものがあること、自分の意のままにはならないことがあると気づいた時、糸はプツンと切れたのだ。

ベネット・ミラー監督は、わけのわからないこの事件を、あらゆる角度からリサーチして、小さな事実を積み重ねて描いている。結果、ジョン・デュポンという人物の、孤独と狂気を垣間見ることになった。そして、俳優さんの演技から、事件に携わった実際の人々に対する真摯な姿勢というものがとても伝わってきて、事件の性質上不快感は感じるが、作品自体には悪い印象はない。

あまりいい気持ちはしない作品なので、大っぴらにオススメするわけにはいかないが、映画としては完成度が高いのではないかと思う。ベネット・ミラー監督の作品は『マネーボール』しか観てないが、ちょっと『カポーティー』も観てみたくなっちゃった。

これは、まぎれもない悲劇だ。大富豪、ジョン・デュポンの哀れさが切なすぎる…。



『リトル・ミス・サンシャイン』
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=560498137&owner_id=3701419
『マネーボール』
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