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2015年04月26日23:52

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今週の科学ニュース-4月26日

 皆様、こんばんは。巷は、選挙で騒々しいのですが、これが終われば、いよいよゴールデンウィークです。天候も良さそうとの予報が出ています。ゆっくりお休みください。

「攻め」は後ろ、「守り」は前…棋士の脳が活動(理化学研究所)
 理化学研究所の研究チームは、将棋のアマチュア・プロの有段者の対局における脳の動きをfMRIで調査しました。その結果、棋士は、脳の後ろ側で攻めの判断を、脳の前側で守りの判断をし、その情報を前頭葉に送って、攻めか守りかの最終的判断を行い、具体的な次の一手は脳の別の場所で、攻めか守りかの判断を行った後で考えられることがわかったとのことです。つまり、攻めか守りかというような直感的な二律的な選択については、脳のかなり離れた部分でそれぞれの価値判断が行われ、それを手がかりに前頭葉で判断されると言うことで、将棋だけでなく、日常的な二者選択的な判断(たとえば、物を買うか買わないかといったもの)も同様に行われるのではないかと研究者たちは言っています。これがわかれば、(どうやったらできるかは別にして、)脳のどの部分を鍛えれば決断力が上がるかがわかるような気がします。
理化学研究所のプレスリリースはこちら。(研究チームの3人の内二人は中国の人のようです。)
Nature Neuroscience誌の該当論文のAbstractはこちら

マグロ:哺乳類に近い? 速さ、距離は魚の倍以上(国立極地研究所他)
 基本的には魚は変温動物なので、その体温は周りの水の温度と一致するのが普通ですが、マグロ・カツオやホオジロザメはその体温は海水温より高く、なぜ、体温維持にエネルギーが必要なのに、体温が高いという状態にあるのかが謎でした。今回の国立極地研究所などの研究チームが、各種魚にセンサーを取り付けて、その行動の様子を調査したところ、マグロ・カツオなどは、他の魚と比較して倍以上速いスピードで、倍以上の距離を一気に泳ぐことがわかったとのことです。体温が高いと言うことは、えさが多く必要となる代わりに、泳ぐ筋肉に投入できるエネルギーを多くできることを意味し、このことから、速く泳ぐことによって、より食料の多いところに早く到達し、外敵からも逃げることができる利点があるとのことです。なお、この事実は、エネルギーの使い方や生活スタイルからみれば、哺乳類や海鳥などの恒温動物に近い生き物といえるそうで、表題の意味はそこにあります。
国立極地研究所のプレスリリースはこちら
米科学アカデミー紀要の該当論文のAbstractはこちら

黄色ブドウ球菌対策が有効か=アトピー性皮膚炎(慶応大学他)
 アトピー性皮膚炎を起こした皮膚の表面に黄色ブドウ球菌が多く存在していることは知られていたそうですが、今回の研究結果は、逆に黄色ブドウ球菌を取り除く/付着しないようにすることができれば、アトピー性皮膚炎が発症しないことがマウスで証明されたというものです。これは、すぐにでも人間に応用できそうな気がしますが、黄色ブドウ球菌のみを殺す抗生物質や殺菌剤が見つかっていない為、まだすぐに具体化しないことになりそうです。と言うのも、抗生物質を使用すれば、黄色ブドウ球菌は簡単に殺せますが、その際に、人体に有用な細菌(腸内細菌など)も殺してしまうため、人体に悪影響を及ぼすことになりかねないからです。MRSAのような細菌も出ている現在、黄色ブドウ球菌のみを殺菌することを実行するのは、言うのは易く、行うは難しと言う状況です。
慶応大学のプレスリリースはこちら
Immunity誌の該当論文のAbstractはこちら

スペースデブリ、高精度レーザー照射で除去 理研など新手法(理化学研究所他)
 エメリウム光線の新しい活用法です。ただ、実行するとなると、結構大変な仕事になりそうです。
理化学研究所のプレスリリースはこちら
Acta Astronautics誌の該当論文のAbstractはこちら

殺虫剤でハチが依存症に?農薬入りの餌好む傾向を確認(英ニューキャッスル大他)
 ニューキャッスル大他の研究チームは、新たな「沈黙の春」をもたらすと一部生物学者らから警告が出されているネオニコチノイド系の農薬が、ハナバチに対して依存症を引き起こすことがわかったと報告しました。さらに、ネオニコチノイド系農薬には作物の受粉を媒介するハチの記憶と位置把握機能に混乱を引き起こし、蜜を探し回る能力に悪影響を及ぼす可能性が有ると指摘されており、蜂による受粉が重要な要素となる農業に悪影響を与えることになり、早めに対策をとらないと、心配なことになるものと思われます。
Newcastle Universityの該当HPはこちら
Nature誌の特集記事はこちら
Nature誌の該当論文はこちら

植物細胞が融合「教科書書き換える発見」(名古屋大学他)
 従来は、植物では細胞壁が硬いため、受精の時以外の細胞融合は起きないとされていましたが、名古屋大学と科学技術振興機構などの研究チームは、受粉の際に、胚が受精を「締め切る」過程で植物でも細胞融合が起こっていることを新たに発見したと発表しました。ただ、「教科書を書き換える発見」というのはややオーバーな表現で、名古屋大学のフロントページではこの記事はプレスリリースとして扱われておりません。
名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所のプレスリリースはこちら
科学技術振興機構のプレスリリースはこちら
Cell誌の該当論文のAbstractはこちら

微小なプラ片、日本周辺を漂流…生態系に影響も(環境省他)
 環境省によると、海面近くを漂うプラスチックのごみは、細かく砕けるなどして、プランクトン程度にまで小さくなることが分かっているそうで、これらのプラスチックは分解も消化もされないので、食料と一緒に海洋生物が摂取すると影響を受けると心配されています。これまで、プラスチックがどのように外洋を漂い、どこに滞留しているかは未解明でしたが、今回の調査で、日本周辺の沖合では、微小なプラスチック片が海水1トンあたり2・4個の割合で漂流していることがわかったとのことです。これが多いのか少ないのかの評価は意見が分かれるところでしょうが、プラスチックの性質から、今後これが増えこそあれ、減ることは無いと思われるので、対策が急がれるところです。
環境省のプレスリリースはこちら
九州大学のプレスリリースはこちら

海底が謎の隆起、海面10m超の高さに 知床半島の沿岸
 今週最も詳しく報道されたニュースの一つです。北海道は知床半島南東側の羅臼町春日町付近で海岸の一部がかなりの速度で10〜20メートルも隆起しました。地震もなにも無かったとはいえ、とんでもない地殻変動の前触れかと一部で心配されましたが、結局、かなり局地的な地滑りが引き起こした「反動」が隆起の形で現れたことがわかり、関係者をほっとさせているようです。朝日新聞の記事に動画があります。また、北海道新聞の記事(こちらこちら)にわかりやすい写真と図解、さらに、今回の隆起のメカニズムの解説が出ています。これを見ると、今回の地形の変化はきわめて局地的であることがわかります。全く、おどかさないでほしいと思います。

 では、また来週。
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