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2015年03月30日09:29

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「今夜、すべてのバーで」

中島 らも著     講談社文庫


たしか高校くらいの時に読んだと思いますが、久しぶりに手に取りました。最近忙しく、私にとってこんなに本を読んでない期間は無かったと思います。なんとなくリハビリのような感覚で読みました。



ライター業を営む小島は35歳。そしてアルコールに依存してしまっています。彼を取り巻く状況は厳しく、もはやこのままでは生きていけないと感じた小島は病院に向かい、そこで今までを振り返るのですが・・・というのが冒頭です。


アルコール、という存在は上手く付き合えばとても楽しいものですし、酒は百薬の長とも言いますが、同時に非常に恐ろしい存在でもあります。私もアルコールが好きですし、お酒を飲みながら誰かと話す、という行為をとても楽しいという実感があります。そしてもちろん二日酔いの経験もあります、二日酔いって苦しいですよね。


お酒を飲んだ事がある人であるなら、誰にでも経験したことがあるアルコールに纏わる話し、そしてアルコールのトリビアルな知識を得られ、小島=中島らもさんの人柄を楽しめる作品になっていると思います。中島らもさんの小説やエッセイはとても楽しい作品が多いですけれど、その中でも1番シリアスで、個人的に1番好きな作品です。


中島さんはかなり変わった方ですし、褒められた人物ではないかも知れませんが、とても興味深く、時に非常に重い現実を言葉に置き換えられる人だと思います。そんな中島さんがアルコールに依存していく物語は、とても切実で、ある意味現実から逃げているのかも知れませんが、しかしこの不条理な世界では何かに依存や中毒を起こさない人はいないとも思わせるのです。


主人公小島(=中島らも)は非常に冷静で客観的に自分を見つめ、アルコールを見つめ、その状況を楽しんでいるかのようです。が、そこにアイロニカルな悲哀とでも申しましょうか、突き放した自分を捕えていて、そこにこの依存という問題の根深さを感じさせますし普遍性を感じてしまいます。


アルコールを飲んだ事がある方に、オススメ致します。
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