月やあらぬ 春や昔の春ならぬ 我が身ひとつはもとの身にして
世の中にたえてさくらのなかりせば 春の心はのどけからまし
けふこずはあすは雪とぞふりなまし 消えずは有りとも花と見ましや
ぬれつつぞしひて折りつる 年のうちに春はいくかもあらじと思へば
見ずもあらず見もせぬ人の恋しくは あやなくけふやながめくらさん
起きもせずねもせで夜をあかしては 春の物とてながめくらしつ
(在原業平/古今和歌集 恋歌 より) *2首目のみ「春歌」より
花の色はうつりにけりな いたづらに 我が身世にふるながめせしまに
思ひつつぬればや人の見えつらん 夢と知りせばさめざらましを
うつつにもさもこそあらめ 夢にさへ人めをもると見るがわびしさ
色みえでうつろふものは 世の中の人の心の花にぞありける
(小野小町/古今和歌集 恋歌より)
「古今和歌集」は延喜5年(西暦905年)勅選和歌集第1号としてつくられたものです。当時は漢詩文全盛であったようですので、この「やまとうた」歌集の勅命は、日本文化自立の歴史から言っても重要であろうかと思います。
私は、その中でも在原業平と小野小町の歌が最も好きです。勿論、紀貫之等偉大な歌人が多く登場しますので、あくまでも私の好みです。
この2歌人の素晴らしさは、なによりも「やまとことば」の美しさによると思います。
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