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2014年12月14日22:24

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今週の科学ニュース−12月14日

 さて、今日は衆議院選挙と最高裁判事信任の国民投票の日です。選挙速報に飽きた方は、私のブログなどを読んで気晴らしにしていただければ幸いです。まいど、読みにくい文章で申し訳ないです。

金星探査機ヴィーナス・エクスプレス、地球との通信ができない状態に(欧州宇宙機関)
 欧州宇宙機関(ESA)の発表によると、金星の調査にあたっている人工衛星ヴィーナス・エクスプレスとの通信ができなくなったとのことです。時々あるコンタクトを元に調査したところ、太陽電池は太陽の方向を向いているが、通信アンテナが地球の方角を向いていないらしいそうです。もう9年も金星で活動してきているし、先日、金星周回軌道を上に引き上げるというエネルギーを酷使する操作もしたばかりですので、単に燃料切れを起こしたものと考えられます。ま、しょうが無いといえば、しょうが無いのでしょうねぇ。
欧州宇宙機関(ESA)の該当HPはこちら

MRSAに効く新抗生物質=院内感染治療に期待(東大)
 東京大学大学院薬学系研究科の研究チームは、(MRSAを含む)グラム陽性菌に素早く強力な殺菌作用を示す新しい作用機序の抗生物質(ライソシンE)を発見し、その作用機序を確定させたと発表しました。それによると、今までの作用機序と異なり、ライソシンEは、グラム陽性菌に限って細胞膜を一瞬で破壊する性質があるとのことです。従って、機序を確認するために感染させたカイコだけでなく、マウスでの実験でもカイコやマウスに対して全く無毒というすばらしい抗生物質です。この抗生物質は、沖縄の土から見つかったとのことですが、新しい有用細菌/細菌産生抗生物質をその辺の土から探すというのは珍しいことではなく、私の大学の同期で有用細菌の研究をやっていた男も、大学の裏の土から細菌を培養していました。まだまだ有用細菌も抗生物質も新発見の余地がありそうです。ただ、今まで発見・開発されてきた抗生物質に対して、耐性を持つ細菌が現れなかった試しはないことをここに付記しておきたいと思います。
Nature Chemical Biology誌の該当論文のAbstractはこちら

「折れない芯」シャープペン、“ハイテク戦争”が勃発
 2008年に三菱鉛筆が開発・販売し、(特に学生の間で)大ヒットしたクルトガは、当時、すでに枯れた技術とされていたシャープペンシルにもまだまだ改良の余地があることを示したことで、話題になりました。(私も愛用しています。)今回、ぺんてる(オレンズ)とゼブラ(デルガード)が、シャープペンシルを使用するにあたって最もよくある苦情である、「芯が折れやすい」点を改良した「芯が折れないシャープペンシル」を相次いで発売しました。ちなみに、両メーカーとも「折れにくい」なんて弱気なことは言っていません。堂々と「折れない」とうたっています。記事によると売れ行きは好調らしいです。こういう実用的なハイテク技術は日本人の最も得意とするところで、ちょっと基礎科学とは異なりますが、こちらで取り上げてみました。なお、こちらに、クルトガの開発ストーリーが掲載されています。開発エンジニアには参考になる話だと思います。

人工知能で人類は滅亡する? ホーキング博士の警告で議論再燃
 理論物理学者として有名なスティーヴン・ホーキング博士が、「ひとたび人類が人工知能を開発してしまえば、それは自ら発展し、加速度的に自らを再設計していくだろう。ゆっくりとした生物学的な進化により制限されている人類は、(人工知能と)競争することはできず、(人工知能に)取って代わられるだろう。」とコメントしたと報道されました。言うなれば、シンギュラリティが起きれば、「ターミネーター」の未来社会のような状況が起きるかも、とコメントしていることになります。これに対して、賛成する声がある一方、「大げさだ。」「人工知能が完成したら人類が追いやられるとする根拠となるデータがない。」という声も有り、見解が分かれています。ただ、一言言わせていただけると、いつでもプラグは抜ける、というコメントを聞かされると、それはどうかな、と言いたくなるのも事実です。

火山対応に小型ロボ、桜島で実用化実験(国土交通省)
 国土交通省が、人間が近づくのが難しいところへ派遣して情報収集などを行うロボット(システム)を公募し、応募してきたロボットが実際に使えるのかどうかの実証実験を進めています。今回は、鹿児島の桜島で行っていますが、今後は、雲仙普賢岳でも試験を行うとしています。なお、世界で最も命の危険がある科学者は火山学の研究者だと言われています。火山国日本では必要な技術で有り、火山噴火だけでなく、様々な自然災害に応用できると考えられるので、是非ともうまくいってもらいたいと思います。
国土交通省のプレスリリースはこちら

地球の水、彗星でなく小惑星に由来か ロゼッタ探査機(欧州宇宙機関(ESA))
 何週間か前のこの欄で、ESAが打ち上げた彗星探査衛星ロゼッタから分離した着陸船フィラエはなんとかチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に着陸したものの、場所が悪く、あっという間に搭載電池を使い切ってしまった記事を掲載しましたが、今回の発表は、母船のロゼッタが周回軌道上から収集したデータを解析した結果となっています。地球に大量に存在する水は、地球そのものから生成したものだけではなく、宇宙から供給された水も多く含まれるとする説は比較的広く知られていますが、その水の共有源が小惑星なのか、彗星なのか議論が分かれていました。今回の観測結果は、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星を構成している氷に含まれるH2O(水)とD2O(重水)の比に関するもので、地球上に存在している水と比較して、かなり重水の占める割合が高いという結果です。地球上に存在している水の中の重水の占める割合は、むしろ、小惑星上にある氷のそれに近く、今回の結果は、宇宙から地球への水の供給源としては彗星より小惑星の可能性が高いことを支持しています。
Bern UniversityのMedia Releaseはこちら
Science Express誌の該当論文のAbstractはこちら

けがしたフクロウ、はり治療で飛べるまで回復 スペイン
 フクロウにも鍼灸のツボがあるとは知りませんでした。犬猫にあると聞いたことがありましたが、鳥もとは。「ツボ」というのは意外と脊椎動物に普遍的なものなのでしょうか。

鳥の種類、恐竜絶滅後に急増…ゲノム解析で判明
 米日韓中英を中心とする国際研究チームは、大規模な鳥の遺伝子の解析・比較結果を20本あまりの論文にまとめて発表しました。それによると、鳥はワニなどと共通の先祖を持つ恐竜の一系統で有り、恐竜絶滅後1000万〜1500万年の間に種類を大きく増やしたことなどがわかったとのことです。今回の結果は非常に多岐にわたるため、一言でまとめることができないのですが、今後の鳥類の遺伝学的研究に大きな基礎データを供給するものとして注目できそうです。
Science誌の該当論文掲載号の目次はこちら。(リンク先は当然英語です。)

Muse細胞で培養皮膚の実用化に成功(NEDOなど)
 2010年に日本で発見された、人間の皮膚、骨髄、脂肪(細胞)等に広く存在する腫瘍性を持たない多能性幹細胞であるMuse細胞を用いて、NEDOなどの研究チームは人間の皮膚を培養し、医薬品・化粧品等の開発におけるスクリーニングや製品性能検証等用途に用いるキットの販売の開始にこぎ着けました。Muse細胞は、いろいろな組織に分化することができるのに、iPS細胞のような腫瘍発生の危険性がない利点がある多機能細胞ですが、生殖細胞などに分化した例がなく、iPS細胞ほどの万能性がない細胞と認められています。しかし、元々皮膚の細胞から取り出せる多機能細胞なので、皮膚の形成へのハードルは低く、今回の結果により、テストピースとしての利用だけでなく、皮膚移植などへの応用も期待できます。
NEDOのプレスリリースはこちらこちら
東北大学のプレスリリースはこちら

青色LEDの光に殺虫効果(東北大)
 日本の青色LEDの開発研究に携わった方々がノーベル賞を受賞されたのは記憶に新しいところですが、東北大学はこのほど、ショウジョウバエや蚊などの小さい昆虫のさなぎに青い光を照射すると殺虫効果があることが確認されたと発表しました。そのメカニズムは、紫外線を照射した場合と同様に、活性酸素の発生が関係すると考えられるとのことです。従来より低いエネルギーの光(したがって、従来より低いエネルギーで出せる光)でも殺虫効果が出せることが証明されたとのことで、その応用が期待できるとのことでした。
東北大学のプレスリリースはこちらこちら
Scientific Reports誌の該当論文はこちら

火星の巨大クレーター、30億年以上前は湖?(NASA)
 NASAは無人火星探査車キュリオシティが着陸・調査しているゲールクレーターは30億年前は大きな湖だった可能性があると発表しました。これは、キュリオシティが撮影したクレーター内部の地層の様子から推測されたものです。湖の大きさから言って、数百万年は存続していたと考えられるとのことですが、何十億年も前に干上がったと考えられるため、今更生命云々は期待できないと思います。しかし、地層の中に化石がある可能性は残されており、今後の調査が待たれます。
NASAの該当HPはこちら

レーザー兵器の運用成功=攻撃1回のコストわずか1ドル−米海軍
 米海軍は、高出力レーザーを応用した破壊兵器の開発に成功し、ペルシャ湾で成功した実証実験の様子を公開しました。このレーザー兵器の名前は、「LaWS」と名付けられ、輸送揚陸艦「ポンセ」に搭載され、必要なら使用して良いとの指令を受けているとのことです。レーザー砲一発あたりのコスト、実に1ドル未満とのことで、一発1億円も珍しくない対艦ミサイルと比較しても(いや、比較するまでもなく)非常に安上がりな兵器であることも証明されたとのことです。実験の様子は、こちらに動画が掲載されていますが、大型艦を一発で粉砕するような派手さはないものの、小型艦には十分な脅威となる威力があると思われます。やっぱり、スペシウム光線やエメリウム光線みたいな破壊力は難しいのだろうなと思われます。そんなのんきなことを言ってはいけないのかもしれませんが。

 では、今週はこの辺で。テレビでは、自民党の圧勝を伝えています。
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