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2014年12月13日22:19

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「フランシス・ハ」 「夜だから」 「シャトーブリアンからの手紙」

10日は「夜だから」、

11日は「シャトーブリアンからの手紙」を観に行きました。



「夜だから」、

チラシには
気鋭のキャスト、スタッフが集結しインディペンデント体制で作り上げた映画である―とある。
監督:福山功起  脚本:港岳彦。
恋愛もしくは結婚に敗れた若い男女が出会う物語…なのだが、
雰囲気重視で お、面白くない…。
京都府宮津市の画はいいのだが
不倫相手の妻に刺された女―と
妻に自殺された男―の恋愛譚は、
その背景に見合うキャラ造形の深化がなく
俳優の演技だけに頼っている風で
少しも面白くならない92分を耐えねばならなかった。
エピソードらしいエピソードがないから
二人の会話と性交シーンと宮津の画で作る雰囲気を読むしかなくて
雰囲気だけは伝わるけれど
二人の抱える苦悩や内奥がこちらに響くことはない。
千葉美裸,波岡一喜の二人は熱演だっただけに
残念な仕上がりだった。



「シャトーブリアンからの手紙」、

『魔王』以来13年ぶりのフォルカー・シュレンドルフの新作。
ドイツ将校暗殺の報復処刑「ナント事件」の映画化だが、
ナチ占領下のフランス人の受難をドイツ人シュレンドルフが撮っているのだ。
17歳の少年ギイ・モケの死がナチに対する抵抗運動の象徴となった…ようだが、
シュレンドルフは彼のドラマを突出させず
過剰な報復に苦慮する地元のドイツ占領軍首脳陣や
処刑名簿を作らされるフランスの行政役人や
対独協力者や
処刑執行を迫られるドイツ軍兵士
処刑に当たって呼ばれた神父
処刑される27人の人質たち…といった事件周辺の人々を
できるだけ均等に描こうとしていて
そこがとてもいいのだけれど、
中途半端にドラマと事実が混交して
作品のカラーがぼやけてしまっている…ような気がする。
ドキュメンタリー様の俯瞰の構図にしてはドラマが甘いし
感動話にしてはドラマ性に欠ける…
そんな印象だった。
それでも
フランス人の愛国心を鼓舞するような作りでないことがとても嬉しいし正しいと思うし
地元のドイツ軍首脳陣のヒトラーの意向に対する反応等は
とても興味深い。
嘔吐して銃殺を続けられないドイツ軍兵士は
ハインリヒ・ベルがモデルなのか…!



本日は、『イカとクジラ』のノア・バームバックの新作。
大変珍しい ダメ女のお話です。
主演のグレタ・ガーウィグは彼のパートナーだそうですよ。





「フランシス・ハ」 ’12 (米)

監督:ノア・バームバック 脚本:ノア・バームバック,グレタ・ガーウィグ
m:アダム・ドライバー
f :グレタ・ガーウィグ,ミッキー・サムナー

親友からルームシェアを解消されたダンスカンパニーの見習いダンサー
フランシス27歳がねぐらを求めて転々とする
トホホ女子のお話。
洋の東西を問わず トホホ男子の映画は数多ある。
山下敦弘の“ダメ男三部作”とか
『コーヒーをめぐる冒険』とか
『インサイド・ルーウィン・デイヴィス』だってそうだ。
しかし、トホホ女子が主人公である映画は極めて稀…というか
同じく山下敦弘の『もらとりあむタマ子』くらいしか思い出せない。
『イカとクジラ』のノア・バームバックがヒロイン フランシスを演じる
グレタ・カーウィグと共同で書いた脚本が素晴らしくて、
モノクロで撮られたニューヨークライフは、言われるように
ヌーベルヴァーグ作品の都市を思い出させる。
疾走シーン(最寄りのATM に向って走っているのが身も蓋もないけれど(笑))に流れる
デヴィッド・ボウイ「モダン・ラブ」を筆頭に
劇中の選曲のよさも魅力で、
けっこう美人なのに“非モテ!(undateable)”と度々罵られる
フランシスのトホホ人生は、
大学を出てから30代を迎える前頃の
精力的に夢を追い続ける体力の充実と それが実らない現実と
青年でありながら大人も要求される微妙な時期の女子の内容を
まぁ 見事に掬っていて、
現在その年齢の女子も かつてそれを経験した女子も
身につまされるというか 共感しまくりというか…
フランシス頑張れ! と声を大にして応援したくなるのだ。
これを観ていると、27歳アメリカ人女子も けっこう子どもだな…と
安心したりする。
“ダンサーになる”夢の周りはガチガチの一本道じゃなくて
ユルくてふわふわの肌触りだけれど 正体がはっきりしない。
そういうまさにモラトリアムな感じを“甘えた自分”とちゃんと認識しながら
何の手立てもなく漫然と時を過ごす感じ…が、
肯定的に 楽しく摑まえられているのだ。
恋人からのプロポーズより 親友との親密な同居を選んだのに
親友は別な友人とオシャレ地区で新ルームシェアの挙句 結婚…
見習いダンサーからの本採用は叶わず失業…
実家に帰るも 田舎はつまらないし失業やホームレスを言い出せないから居辛い…
男子の部屋に転がり込むが 女子力のなさを指摘される…
友人の友人所有のパリのアパルトマンを無料で使用させてもらうが
2泊3日の滞在ではパリ友と会えないまま帰郷…
母校の大学の夏休みの学生寮に雑用係として置いてもらう…
ウェイトレスとして出勤した母校のパーティで友人たちの落ち着いた現在を知る…
そんなフランシスは、
ざっとした性格で 考えなしの発言をしては場の空気を悪くし
片付け下手で 実はダンスの才能もない…のだけれど、
彼女を見つめるノア・バームバックの眼差しは優しいというよりうれし気で
くすくす笑いが聞こえて来そうな軽やかさを感じる。
たぶんその軽やかさが
映画を観客の親しいものにしているのだと思う。
“フランシス・ハ”とは何のことなのか…?判るラストはまことに秀逸。
よい映画である。佳作。
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