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2013年09月30日15:44

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あまちゃん、有難う。 

宮藤官九郎氏脚本の『あまちゃん』が終わりました。スタッフさん、出演者の皆様、音楽担当の大友さん、そして、脚本の宮藤官九郎氏、お疲れ様でした。半年間楽しかったです。

宮藤さん、見事に最後まで描き切ってました。なので、続編は必要ありません。

だって、オープンエンドにしてくれたおかげで、私の脳内では、今・・この2013年にも(物語で描かれたのは2012年までだけれど)、北三陸市・・・本当にはない架空の市なのに(モデルは久慈市)、その町では、今でも、お座敷列車で、アキちゃん&ユイちゃんは潮騒のメモリーズとして唄っていて、たまに失敗して、「アキちゃんが音痴だからでしょ!」とか、ユイちゃんに言われて、アキちゃんも「ユイちゃんは、めんこいかも知れんけど、歌は、おらとどっこいどっこいだべ!」とか喧嘩したりして、ミズタクさんは、やっぱり、勉さんと琥珀掘って、たまに、凄いもの見つけるのに、全然分かってないし、ストーブさんは、相変わらず、残念なイケメンだし、夏ばっぱは、やっぱり海に潜ってるし、大吉さんは、安部ちゃんと結婚したのに、きっとまだ「春ちゃん、春ちゃん」とたまに言うし、鈴鹿さんは、寿司屋で、「社長が怖いのよ、仕事仕事って、何なの、あのスケバン!」とか愚痴って、横で、太巻さんが「でも、君の為を思ってるんじゃないの?」って言ってたり、そこに、河島さんが「GMTとアメ女のイベントの件ですが。」ってやって来るし、春子さんは春子さんで「鈴鹿さん、メンドクサイ!あの大女優、何であんなに面倒くさいのよ!」とカリカリしてるし、正宗さんは、その横で「あんまりカリカリしても・・・」って言いながら、スパゲティとか作ってるし。
甲斐さんは、相変わらず喫茶『アイドル』で「潮騒のメモリーズ、熱いよねぇ〜。」って言ってるし、海女クラブの人達は相変わらず、スナックでくだらない噂話をしているし、花巻さんはフレディだし、菅原さんは、相変わらず、金勘定に余念がないし、栗原ちゃんと吉田君は、仲良さそうだし、市長や、よしえさんもそこそこ幸せそうだし。種市先輩は、いっそんと南部ダイバーだし、ヒビキさんは、やっぱりアイドル追いかけてるし・・・。

そんなね、生活をちゃんと送ってるような気がするのです。何処にもいないのにね、ドラマの登場人物なんだから。

でも、そこは、ヴィンセント・スタリットの詩『221B』と同じ心境です。(コレは、ホームズとワトスンにあてた詩だけれど)

彼らは生きていたことがないから死ぬこともないのだ
なんと彼らを身近に感じられることか

mixiニュースにも取り上げられていたのですが、『あまちゃん』って、不思議なコトに、飛びぬけて視聴率が良い朝ドラってワケじゃないんですよね。平均くらいなの。
なのに、ドラマの最終回が来たってだけで、朝日新聞にニュースとして載っていた。『あまちゃん終了!』て。(毎日にも載ってたみたい)

おそらくなのだが、ネットの反応が尋常じゃなかったんだと思うんだ。

その要因って、2点あって、『深読みが出来るコト』と『小ネタの多さ』だと思うんだ。どちもヲタ心をくすぐりますよね。
深読みは、例えば、ドラマ冒頭だったら、「大吉は、何で春子さんの携帯番号を知ってたんだろう?」とか。皆、あれこれ想像していう言う。「実は大吉と春子は密かに連絡を取り合っていた。」「大吉は、『安部ちゃんから訊いた』って言ってるけど、春子は、安部ちゃんには教えてないって言ってるから、安部ちゃんと春子の間には何か、隠し事があるんじゃないか?」などなど。

これ、宮藤氏曰く、正解は「放っといてください」(笑)だそうです。そこまで、計算して書いてなかったんですね(笑)。でも、視聴者は、勝手に、こうやって、深読みして楽しんで行く。安部ちゃん役の片桐はいりさんは「春子には、メアドを教えてもらったけど、春子には『教えてない』って言われちゃうような、安部ちゃんは、ちょっと可哀想な立場の人なんだな。」と思って演じてたそうな。

あと、ユイちゃんの新しい彼氏の、ハゼヘンドリックスは誰なのか?とか。私は、あれは、アキちゃんを安心させる為の、ユイちゃんの嘘だろうと思ったのだが、皆、大吉さんじゃないか?とか、ヒビキさんじゃないか?とか、イラストがクドカンに似てたからクドカンが出るんじゃないか?とか想像するする。今なら読み解きで熱いのは、潮騒のメモリーの『来てよ、その火を飛び越えて』は、『来てよ、その日(3.11)を飛び越えて』じゃないのかな?とかね。

皆、想像力豊かだよねぇ〜と思う。私は、自分がヲタなので、ヲタの思考は分かるのですが、ヲタは、読み解きと、読み代えってのを、自然にします。読み解きって言うのは、前述のようなコトですね。物語を自分なりに読み解いていく。読み代えは、例えば、アキちゃんの台詞には「本当は、こんな意味があったんじゃないか?」と、想像し(妄想し)、その台詞の言葉以上の意味合いをつけ加え、読み代えて行く。BL風味にしたいのなら、コレは、男性同士の会話でなされるけれど、まぁ、この場合も、読み代えってのをするんだ。

小ネタは、まぁ、見てる人なら分かるよね。あの多さね。見つけて壊そうは、search&destroyだし、プロジェクトXのパロはあるし(ナレーションは、田口トモロヲ)、「うす汚ねえシンデラレ」は、キョンキョンの初出演ドラマで、石立鉄男が言った台詞だし、松田龍平は「御法度」って台詞内で言うし、コーヒー飲むのは、探偵物語(松田優作だ!)のパロだし・・・もう、枚挙にいとまがない。
これ、分かると嬉しいし、分からない人も、何か面白さは感じるだろうし、ついには、あまちゃんの小ネタ検証サイトまで出来てたりね(笑)。

こういうモノがあると、ネット上で盛り上がって、これが重要なのですが、『勝手』に盛り上がっていくのです。何も、制作者側が「盛り上げて下さい」って言ったワケじゃない。勝手に盛り上がっていく。おそらく、社会現象になるモノの多くってそうなんだ。何か勝手に盛り上がって行ったっていう。

で、あまちゃん。斎藤環氏が言うように、「夜の住人」には、馴染みが深く、「昼の住人」には、目新しく見えた・・・んだとも思う。

夜の住人とは、即ち、サブカル好きたちですね。深夜のお笑い番組を端から見てたり、お笑いライブ、音楽ライブ、演劇に行ったり、ドラマも「大根仁と、福田雄一のだったら見るケド」みたいなね。
「昼の住人」は、本来の朝ドラの視聴者ってコトですね。夜は寝てる(笑)。規則正しく生きている。

大人計画(宮藤氏が所属する劇団)を20数年追いかけてるような私は、完全に夜の住人と言うコトになるでしょうが。
斎藤氏が仰る通り、私には、とても見やすいドラマでした。ドラマはあまり見ないけれど、演劇は良く見る私には、舞台役者さんが沢山出ていてとても見やすかった。
皆川猿時、伊勢志摩、村杉蝉之助、荒川良々、大人計画の大ボス松尾スズキに至るまで、大人計画の役者の面々、片桐はいり、木野花、渡辺えり、吹越満、マギー、そして、勿論、古田新太に至るまで、私が舞台で良く見る面々だったので、見やすいし、馴染みやすい。
でも、おそらく、TVドラマを見る層には、舞台の役者さんって、あまり馴染みがなくて、面白く見えるような気がします。

面白かったコトに、皆川さんを芸人さんだと思ってる人もいた。まぁ、皆川さん、何故か役者なのに、一発ギャグを山ほど持ってる人でもあるのですが。

そして、あまちゃんでの松尾スズキが、松尾度数が高くお送りされていた(笑)。あれ、最初、浮いて見えて「大丈夫なのか?」と思ったほどだった。大丈夫だったが(笑)。
私、何故か、朝ドラの脚本家に、宮藤氏が決定した時点で、松尾スズキ氏が出るって信じて疑ってなかったんだよなぁ。今思っても不思議。そんなコト、誰も言ってないのに。しかも、宮藤氏は、最初、松尾氏はキャスティングしなかったのに。キャスティングしたのは、プロデューサーさんの1人がたまたま『TAROの塔』(松尾スズキ氏が岡本太郎の役をやった)のプロデューサーで、「甲斐の役は、松尾スズキが良いんじゃない?」と言ったからだそうな。で、「松尾さんがやるなら、ギャグ増やそう。」と宮藤氏が思って、ギャグシーンが増えたんだそうな。
出るって言っても、松尾氏、芝居の演出があって、朝日新聞の連載小説やってるし、忙しいから、三又又三や、大久保さんのように、チラって映って「わぁ、松尾さん映った〜」って、大人計画ファンを喜ばせる程度だろう・・と思ったていたら、甲斐って名前までもらって、結構良い役だったと言う。松尾氏は、宮藤氏にキャスティングしてもらえなくて、ご立腹の様子でしたが(笑)。

あと、思ったのは、宮藤氏って、やっぱり、大人計画の人なんだなぁ〜・・・って思った。
大人計画の芝居の雛型・・というか、パターンで多いモノで、ダメ人間が、そのダメさを打破しようとした結果、まわりに甚大な被害が及んだり、人が死んだりして、デストピアな笑いになったり・・ってパターンが多いのですが。

このドラマでも、主人公のアキちゃんは、ダメ人間なんですね。しかも、最後まで成長しないの。
って言うか、前代未聞のような気もするが、朝ドラで、少女がヒロインなのに、その少女に、「私は成長しない」宣言をさせてしまう。
「成長するって、そんなに大切なコトか?」と。「背が高くなったり、おっぱいが大きくなったり、そういう自然に成長するだけじゃダメなのか?」と。

思わず、あ、そっか・・・と思う。大人計画の世界では、ダメ人間は成長すると、まわりに甚大な被害を及ぼすんですね。で、結果、「ダメ人間はダメなままでいてくれれば良かったのに・・・」ってなる。なら、ダメ人間が成長しないとどうなるか?幸せになるんですね、まわりもダメな自分も。アキちゃんって、そうなんだ!って思いました。大人計画の幸せパターンってコレなのか!って(笑)。
で、相手がダメなら、どうすりゃ良いか?ダメじゃないまわりが変われば良いんですね。春子の台詞「アンタは何も変わってないけど、まわりが変わっていった。アンタがまわりを変えていった。それって案外凄いことだよ!」ですね。

この『あまちゃん』のB面が、『サッドソング・フォー・アグリードーター』な気がして仕方ない。2011年に上演された、宮藤氏の芝居。私は好きでした。宮崎あおい演じる主人公ミドリもアイドル志望だった。彼女は、アイドルになれず、実家に帰って来るのだが。風俗店で出会った年の離れた婚約者のオッサンを連れて。彼女は昔はデブだったケド、今はとても美しい。ダメ人間の昔とは違う。ミドリは昔と変わってしまった。結果、まわりは言う「昔のアンタは、デブでブスだったケド、昔のアンタの方が良かった。」と。 ミドリは言う。「そんなコト知ってるよ!知ってる!私だって、そう思ってるよ!だけど、もう、戻れないじゃない!だったら、この頃の、昔のアタシを嫌いになるしかないじゃない!」

面白いですね。宮藤さん・・っていうより、大人計画の思考で嗜好なのかも知れないですが、ダメ人間はダメなまま、成長しないままの方が幸せになるんだな・・・って言う。成長したミドリは、その後、婚約者に撃ち殺され、成長しないアキちゃんは、ユイちゃんと潮騒のメモリーズを復活させる。

私、宮藤さんの次回作が前述の『サッドソング・フォー・アグリードーター』じゃなくて、本当に良かった・・・って思います(^_^;)。同じアイドルがテーマだから、あまちゃんを重ねる人も多いと思うもの。サッド〜が先で、あまちゃんが後なら良いケド、あまちゃんが先で、サッド〜が後だと、あまちゃんで初めて宮藤さんのコト知って、宮藤さんが、三谷幸喜氏のような、ウェルメイドのコメディ芝居を書くと思って見に来たお客は、精神的ショックがデカイと思うの・・・。この芝居、上演当時『東京の下町を舞台にしたホームドラマ』って説明されていたから、あまちゃんの下町ヴァージョンみたいなのって思って来ちゃう人がいたと思う。・・・良かった〜次の芝居が、バカロックオペラで・・・。

私、どうも、100%宮藤官九郎が苦手らしいのです。宮藤さんがやりたいコトを100%出すと、「あ、私には合わないや・・・」ってなる。前作のロックオペラもそうだし、轟天VSカヲルもそうだった。どうも、何某かの規制があって、その枠内で作ったモノの方が、マイルドになって好きなようです。あまちゃんは、その点、良い感じに宮藤テイストが薄まっていたのも、私には良かったのかなぁ〜と思ったり。でも、『春子ブックセンター』と『熊沢パンキース』は好きなんだよな・・・って、春子〜は、規制はあったか。大人計画本公演の芝居なので。大人計画本公演で、今のところ、唯一の宮藤氏作・演出のお芝居。宮藤氏が、緊張しすぎて、不眠症になった芝居。

良い感じに薄まっていたケド、それでも、宮藤さん色は出ていて、「不謹慎」は心に染みた。震災後、不謹慎やら、自粛やらで、お笑いライブが中止になったりした中、宮藤氏が震災後の6月にやった芝居が、前述の『サッドソング〜』。ひょっとしたら「震災直後に、日本人の8割が死んじゃう話なんて、不謹慎」って言われたのかも知れない。それでなくても、悲劇や他人の不幸を笑う芝居の多い大人計画は、ある意味、不謹慎極まりない芝居をやってる劇団だろうし。宮藤氏は傷ついたし、腹立ったのかな?って。「不謹慎、不謹慎言いやがって!だったら、俺の今までやってきたコト、全部不謹慎じゃねえか!」って思ったかなぁ〜と。で、いつか、その思いを、自分の作品の中に入れてやろうと思ったかも知れないね。それにあのヒステリーのような自粛の嵐は、傍から見れば、滑稽でもあったろう。

あまちゃんの、震災の演出は、本当に見事だった。ジオラマで被害を表すやり方。井上監督の見事さ。冷めていて冷静だけれど、その演出の方が、よっぽど胸に響いたし、それぞれの3・11を思い出す為には、あの方法が1番のような気がする。本物の津波の映像を使うと、衝撃は伝わるが、衝撃しか伝わらない。ハリウッドのパニック映画ならそれで良いケド、あまちゃんは違うモノね。思い出して欲しいのは、衝撃ではなく、それぞれの3・11。その日の各々の記憶。
しかも、ジオラマを菅原さんが作っている場面はドラマで見ていて、追体験できるので、そのジオラマが壊れた方が、よほど切なく、そして、悔しかった。

あまちゃん、半年間有難う。とても楽しかったです。大人の事情もあるでしょうが、続編は作らないで欲しいです。本当にちゃんと完結していたから。もし作らなくちゃいけなかったら、GMTのその後とか、その後の勉さんとミズタクとか、そういうスピンオフにして下さい(本当は、それも嫌だけど)。

「震災があっても、性格がすぐに変わったりしないですよ。」は、宮藤氏の言葉だけれど、きっと、今も北三陸で、皆、アホみたいに、元気に、ダメ人間はダメなまま生きているんだろうな。

じぇじぇ!『あまちゃん』期間平均20.6%で『梅ちゃん』超えられず
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=54&from=diary&id=2595680
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