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2006年10月17日17:13

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メゾン・ド・ヒミコ

犬童一心監督の『メゾン・ド・ヒミコ』をWOWOWでやっていたので見ました。
映画館で見ようと思っていて、結果、行かなかったのですが・・・。WOWOWに入ると、本当に映画館に行くコトが減ってしまうな・・・。勿論、映画は映画館で見るのが1番良いのですがね。TV画面で見ると、TV画面サイズの記憶になってしまうから。

『メゾン・ド・ヒミコ』のあらすじ。
銀座にあった“卑弥呼”という伝説のゲイバー。そのゲイバーのカリスマ・ママのヒミコさん(田中泯)が、ある日突然引退し、神奈川県の海のそばに、ゲイ専用の老人ホームを作る。
それから暫くして・・・。
とある女性(柴崎コウ)のところに、男性(オダギリジョー)が訪ねて来る。女性は、ヒミコの娘。男性は、ヒミコの現在の彼氏。
男の話によれば、「ヒミコは末期ガンであり、その老人ホームに手伝いに来て欲しい。」と言う。
父親に、自分と母親は捨てられたと思っている(実際、状況としてはそうであろうな)娘のサオリは、「絶対に行かない!」と言い張るが、彼女には、借金があり、男はそれを見越して「それなら、老人ホームに手伝いに来てくれ。日当は3万円。これは、純粋な仕事の依頼。」と言い含める。

結果、サオリは、その老人ホームに手伝いに行くが、父親とは確執があるので、ギスギスしっぱなし。ゲイに対しての偏見もあるので、どうにも上手くいってくれない。
そんな中、この老人ホームのパトロンが警察に捕まったり、老人ホームのメンバーの1人が脳卒中で倒れたりと、事件が起こる。


元々は、フィリピンだったか、ベトナムだったか・・・で、実際、ゲイの為の老人ホームが作られた・・というニュースがあり、そのニュースに着想を得て、犬童氏が、製作した映画だそうだ。

変な言い方かも知れないが、私は見ていて、今市子さんのボーイズラブ漫画を思い出した。
今市子さんのボーイズラブ漫画も、どこかある種のユートピアめいて見えるが、実際は、結構ホロ苦く、ゲイの中で完結するのではなく、その他、家族や、地域住民と関係を持とうとして、だからこそ、苦くなる部分もあったりするのだと思うが・・・そんな感じがしました。

古いホテルを買い取って、ヒミコが作った老人ホームは、ある種、ゲイにとってのユートピアかも知れない。
でも、映画中盤で起こる、メンバーの1人であるルビーが、脳卒中で倒れ、ここでは面倒が見切れないと判断され、家族の許(このゲイのオジイサンは、1度結婚しており、息子がいる。元奥さんとは、度々連絡を取っていたが、その奥さんが亡くなってからは、息子とは音信不通の設定)へ戻される場面は、もう何とも言えない・・・。

サオリが切る啖呵「アンタら、家族捨てて、好き勝手して、面倒見切れなくなったら、息子に押し付けるの?アンタら、ホモのエゴって信じられない!」と言う台詞も痛いやね。サオリも同じ立場では、あるわけだし。
(ヒミコは、娘を呼ぼうとしたワケではなかったがな。ヒミコの彼氏が勝手にやったコト。なので、ヒミコは最初「こんな茶番は嫌いだわ。」などと言ったりする)

柴崎コウさん。私は苦手なタイプの女優さんなのですが、この役はピッタリでした。柴崎さんは、キツイ顔立ちなのですね。なので、この我が強くて、気が強くて、根性も座ってるサオリの役は合っていました。
最後の方、病床の父親に「母親の為に、アンタは絶対許さない!」と涙ぐんで言うシーン。好きだな。
その前のシーンの、寝てるヒミコの鼻血を拭取る場面も含めて、良いシーンだと思う。
その後のヒミコの台詞がずるい。
「それは、理に叶った選択だわ・・・。・・・・私にも一言、言わせてね。・・・私は、アナタが、好きよ。」
許されなくても、好きというコトか。
否、多分、ヒミコは、もうサオリが自分を許しているコトを分かっていて、それを分かった上での言葉なのだろうな。ずるいよ・・・ヒミコ(T_T)。

でね。この映画の最大のヒットは、このヒミコ役の田中泯氏だと思う。この田中氏。本業は役者ではございません。
本業は、舞踏家。
私の記憶違いでなければ、暗黒舞踏家・土方巽氏のお弟子さんです。

だからでしょうか。動きの美しいコト!というか、身体表現が美しい。後半など、殆どベットで寝てるだけなのに(末期ガンの役だからね)、その寝てる様まで美しい。
こりゃ、春彦(オダギリジョーが演じた、ヒミコの彼氏の名)も惚れるは(笑)。
私も、惚れた(笑)。

舞踏家の方のあの、一種独特な色香って何だろう?身体表現を得意とする分野だからなのか。
それとも、スポーツと芸術が交じり合った、そんな独特の表現者だからだろうか。
身体を使うマッチョさと、芸術を語る耽美さと。そんなモノが融合しているからでしょうかね。

最期、死にゆく様すら美しい。(と言っても、特別演技をしてるようには見えない。眠っているように死ぬので)

他、好きなシーンは、サオリと、女装癖のあるゲイのオッサン(元、支店長だそうだ)がちょっと仲良くなるところ。
女装癖があるので、ドレスや女性物の洋服を沢山持っている人なのだが、サオリに「私は今度、女性に生まれて来たら、自分の着たい服を思う存分着るの。」と話す。
サオリは、「別に女に生まれてきても、着れない服なんて沢山あるよ。」と言う。
「例えば?」と問う、オッサンに一言。「バニーとか。」
サオリは、借金(この借金も母親の手術代や入院費だったりするのだが)を返す為、水商売をしようと、泣きまくって諦めて、お店の面接に行ったのに、面接官は、ツラ〜ッと、サオリの頭から足先まで見て「アンタ、バニーちゃん出来ないね。」と一言。
そして、面接は落ちた。
それから数日後。このオッサンの元に宅急便が届く。オッサンは、サオリに「怒らないでね・・・。」と一言。
その箱の中身はバニーの衣装。
オッサンの部屋で、2人でコスプレ大会をして、はしゃぐ2人が可愛らしい。
オッサンは、自分が死んだ時に着ようと思って作った白いドレスを着て「操を破っちゃった」。
サオリ「操なんて破くためにあるんだよ。」

この後、ゲイの仲間が正装して、ドレスのオッサンをエスコートしてダンスホールに行くシーンも何か、好きだ。
いつまでたっても皆が来ないので、ドレス姿の自分に呆れて来ないと思っていた皆が、正装して並ぶシーン。
「春彦が、エスコートをするから1番良い服を着て来いって言うから、急いで着替えたんだよ。」と言う皆。
因みに、サオリは、バスガイドの衣装。手には旗も持っている(笑)。
この辺り、ユートピアっぽいよね。

この後、この支店長さんは、元会社の部下とダンスホールで出会い、罵詈雑言を浴びせられるのだが(そして、サオリが大激怒(^_^;))。

あと、サオリの会社の上司の細川(だと思った)も良かったです。女子社員としょっちゅうデキちゃう、いい加減専務。役者は、西島秀俊氏。

個人的には、もう少し、苦い部分もあっても良かったかな・・・とは思うのですが、やはり、それはある種のユートピア・・・という部分で、このくらいの苦さで丁度良いのかも知れません。
(コレで、ペドロ・アルモドバル監督のゲイ映画のように、苦い通り越して、誰も救われないだったら、多分、見てる方は辛くなろう・・・(^_^;))

ゲイの方の職種がバラバラで、それがたま〜に分かるようなショットがあるのも好きだったな。モンモン背負ってるヤクザとか。
私が1番タイプのゲイのオジイサンは、元高校教師のマサキさんだった。いつももの静かに将棋を打っている人。1番、冷静沈着。かつ、紳士(笑)。
現在、ロトのCMに出てる役者なのね。
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