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2024年05月03日09:26

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経済談義第62回:円安の日本国債への影響について

長期連載の経済談義シリーズです。日本経済超悲観派の僕がその論拠を解説していきます。



超悲観派の心配していることの一つとして、「日本国債の暴落」というのがあります。
日本国債を買う人がほとんどいなくなって、国債市場には売りが殺到、政府が新規発行や借り換えで国債を発行してもたたき売りのような価格でしか売れずに資金繰りに行き詰まる、というシナリオです。

楽観的な評論家の皆さんは、日本国債の価値は盤石であってそんな悲観的なシナリオは杞憂にすぎないと一蹴するのですが、はたして本当に大丈夫でしょうか。



日本の長期国債の利率は現在のところ約1パーセントで、たしかに安定的に推移しています。
しかし、これをドル建てでみると全く異なってきます。

1年前の円ドルレートは123円/ドル、現在は153円/ドルですから、円はドルに対して約19パーセント下落しています。(ユーロなどほかの通貨に対してもドルほどではありませんが大幅下落です。)
ですからドルでみれば、日本国債の利回りは1パーセントではなくて実は「マイナス18パーセント」なのです。
しかも、この円安の流れはかなり長期にわたって続く見通しですから、国債のドル建て利回りもマイナスの状態が続きます。

これは何を意味しているかというと、世界中の投資家から見ると、日本国債という金融商品は資金の運用先として全く魅力がない、いわばごみのようなものである、ということです。
日本国債が偉い偉いと楽観派の評論家の皆さんがどんなに持ち上げても、投資家から見れば、運用先の数ある選択肢の単なる一つであって、国債が唯一だとか、国債の価値は盤石、などということは全くないのです。


日本の金融機関は円で考えるし、日本国債を満期まで保有するのだから問題ない、と楽観派の方はおっしゃいます。
しかしこれも当たりません。
日本だろうがアメリカだろうが、金融機関が営利企業として運用利回りを追及している以上、ほかの金融商品としての比較を考えなければならないからです。

ほかの金融商品として、たとえばアメリカ国債の長期金利は現在約5パーセントで、日本国債を圧倒しています。
そのうえドル高が進めば円換算の価格はかさ上げされますから、日本国債よりさらに有利です。

そんな状況で、利回りほぼゼロの日本国債なんか抱え続けようと考えるほうが、金融機関としての営業センスを疑われるでしょう。


こうして魅力を失った日本国債が市場に大量に投げ売りされるようになると、当然ながら市場価格は暴落します。
ひとつ重要な点として、国債というのは、市場価格と実質利率が連動する性格を持っています。それはこの連載の第5回で説明した通りです。
https://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=277042&id=1937661952


国債の市場価格が急落、利率が急上昇すると、その日から政府が発行する国債は定価では市場で売れず、大幅値引きしなければ売れなくなります。
つまり、政府は調達したい金額を集められなくなるのです。
それは新規発行債でも借り換え債でも同じです。

少しのお金しか集められなくなっても、返さなければならない金額は変わりませんから、実質の利回りは市場価格に連動して「直ちに」急上昇します。
利率上昇は今発行する国債の満期まで影響がない、などというのは誤解である、ということです。

不足分を賄うために国債を追加発行すれば、売りがさらに優勢になって価格はさらに下落します。それはこの連載の第12回で説明しています。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1944848290&owner_id=277042



国債価格が急落すると、緊急的な対応として、日銀が買い入れを行うことが考えられます。

日銀のゼロ金利政策は、公式にはすでに終了しましたが、状況に応じて国債の買い入れを行うとしています。
資金繰りのひっ迫に危機感を持った日本政府が、日銀に圧力をかけて買い取らせる、という可能性も考えられます。日銀による国債の直接引き受けは法律で禁止されていますが、間接的な買取はこれまでずっと行っています(これに対して僕は批判的ですが)。

日銀の現総裁の植田氏は(前総裁の黒田氏と異なり)中央銀行の独立性の観点からそうした政府への協力には乗り気でないでしょうが、緊急事態だからと説得されればおそらく拒否できないでしょう。

世界中から殺到する売りに日銀が孤軍買い向かう、国債市場はそういう構図になります。
これはある程度は成功するでしょう。理論的には、日銀は円通貨を無限に発行できます。

しかし、買い支えのために大量の円を発行すれば、これは長期的には円安とインフレを助長する働きを持ちます。
円安は日本国債のドル建て利回りをさらに低下させ、さらなる売りを誘うことになります。

そのうえ、今度は別の大惨事シナリオ「ハイパーインフレ」の可能性が頭をもたげてきます。
(結果としては)円安とインフレ対応として発行された通貨が、円安とインフレを加速させる、インフレスパイラルのフィードバックループが形成されるおそれがあるのです。



円安が引き起こすこうした地雷のような潜在的な危機を、日本政府と日銀がうまく回避できるでしょうか。

経済アナリストの市川眞一氏は、テレビの経済ニュースで、円安への対応を「これから長い長い戦いが始まる」と形容していました。しかし、円安が国債市場に遠からず大きな動きを引き起こす可能性があることを考えると、そんな悠長なことを言っている時間はないかもしれない、と僕は心配しています。



連載バックナンバー:
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1942875057&owner_id=277042
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