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2023年04月30日08:28

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経済談義第46回:インフレ期待について

経済談義シリーズ第46回です。日本経済超悲観派の僕がその論拠を解説していきます。



黒田日銀元総裁の「異次元の金融緩和」の理論的根拠について、前回は「貨幣数量説」について説明しました。

今回はもう一つの根拠である「インフレ期待」についてです。
インフレ期待についてはこの連載の第14回ですでに取り上げていて、おさらいということで引用します。

(以下引用)
アベノミクスは基本的にはケインズ経済学を基礎にする政策ですが、ケインズ経済学とは異なる点もあります。なかでも大きな違いは、特に黒田総裁が力説する「期待インフレ率」という概念です。

物価が上がることをインフレというわけですが、ここでいう期待インフレ率というのは、実際の物価上昇率ではなく、今後どれだけ物価が上がっていくか、市場が「予想する」上昇率のことです。

これからインフレがやってきそうだ、物価が上がりそうだ。
世の中全体がそういう雰囲気になれば、大きな買い物は値上がり前にしておこうとか、工場建設などの投資を前倒ししようとか、金利が低いうちに借金しておこうとか、そういう人や企業が増えて、結果としてお金が回るようになるだろう、景気がよくなるだろう。
たとえるなら、インフレ期待という笛を政府と日銀が吹いて、国民とお金に踊ってもらおうという目論見です。
(以上引用)


実現が確かでない政策目標を、市場をあおることで期待から現実に変えていこうという作戦は、いわば一種の「はったり」です。

ポーカーなどの賭け事では、自分の手札が悪い時でも、切り札を持っている「ふり」をすることで相手をけん制して、こちらの望むゲーム展開を実現するテクニックがあります。
アベノミクスはこれの経済版です。デフレという敵を、インフレ期待というはったりをかまして退治してやろうという作戦です。


しかし現実には、安倍氏と黒田氏が繰り返しインフレを吹聴したにも関わらず、物価上昇の目標が達成されることはありませんでした。
「デフレマインド」、つまり物価が上がるわけはないという固定観念があると黒田氏は説明していましたが、僕の見解は異なります。
デフレというのは、日本経済の潜在成長力が低下したことから来ている「結果」であって、はったりの笛を吹いたからといって調子よく踊るようなものはなかったのです。
「飛べるかどうかを疑った瞬間に永遠に飛べなくなってしまう」というピーターパンの一節を当時の黒田氏は引用してインフレの夢を訴えましたが、そもそもそんな夢は存在しなかったということです。


なお期待(予想)が現実に変わるということは、金融市場においては起こることがまれにあります。ただしそれはほとんどの場合悪い方向への変化です。
これから株価が急落する、という市場予想が主流になると、多くの投資家が株を売り抜けようとして株価は現実に急落します。
あの銀行が危ない、といううわさが流れると、預金者の引き出しが殺到してその銀行は実際につぶれます(先日もアメリカで起こりました)。

そう考えると、「期待」に期待する、というのは政策としてはあまり賢いやり方だとは思いません。
それが成功しなかったということは、市場は、そして日本は、安倍氏と黒田氏が「期待」したよりも賢かった、という言い方ができるのかもしれません。


最後に、この連載の第14回から再度引用します。8年前、2015年の記事です。

(以下引用)
クロダノミクスはもともと賭けの要素が大きい政策ですから、それが成功していないこと自体は、悲観派から言わせてもらえばなかば予想されていたことであって驚きはありません。
ただ、、黒田バズーカなど劇薬のような政策を投与したことによる深刻な副作用が今後現れてこないかどうか、その点を悲観派はとても心配しています。そういう悲観的な予想が当たらないことを祈るばかりです。
(以上引用)



連載バックナンバー:
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