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2022年06月25日00:23

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【映画日記】【『アネット』公開記念 レオス・カラックス作品特集上映】『汚れた血』、『ボーイ・ミーツ・ガール』、『アネット』

 6月24日、金曜日。

 朝に起きて、映画チラシの整理をボチボチと進めて、午後に外出。

 シネ・ヌーヴォへ足を運び、新作映画チラシを収集。さて、まずはシネマクラブ年会員の更新だ。特典として招待券1枚をいただけた。同時に、スタンプカードへの押印1Pサービスという事で、丁度無料鑑賞ポイントが貯まった。即座に利用する事に。

 【『アネット』公開記念 レオス・カラックス作品特集上映】から3作品を鑑賞。

 レオス・カラックスの作品は、ビデオやDVDで観ると、かったるく感じてしまう事が多い。少なくとも僕はそうだ(『ポンヌフの恋人』を除く) しかし、映画館での鑑賞なら集中して観られる。『汚れた血』もビデオでの初見時はダレた。渋谷シネマ・ライズで観た『ポーラX』も、梅田ガーデンシネマで観た2013年の洋画マイ・ベスト・ワン作品『ホーリー・モーターズ』も、ソフトで観返した時は退屈したものだ(とはいえ、今回鑑賞した3作品も、合わない人が少なくないようで、劇場鑑賞であっても鑑賞中に頻繁に時計を確認している人が複数名いらっしゃった……)


●『汚れた血』

 フィルム上映。

 <アレックス3部作>の第2作である。初見はビデオソフトだったが、チラシとパンフレットを所有している。

【愛なきセックスによって伝染する<STBO>という奇病が蔓延するパリが舞台。ある日、ジャンという男が地下鉄内で死亡する。友人マルク(ミシェル・ピコリ)は、ジャンが金貸しのアメリカ人女性に殺されたのではないかと疑うが、彼もまた彼女から汚れた金を借りていた。その返済のため、マルクは製薬会社が開発した奇病のワクチンを盗み出そうと試み、ジャンの息子で手先が器用な青年アレックス(ドニ・ラヴァン)を実行メンバーに加えようとする。アレックスにはリーズ(ジュリー・デルピー)という恋人が居るが、マルクの恋人であるアンナ(ジュリエット・ビノシュ)に心魅かれて参加を承諾する……】というスジ。

 デヴィッド・ボウイが歌う『Modern Love』に乗ってアレックスが街中を駆け抜けるシーンが素晴らしい。名手ジャン=イヴ・エスコフィエの手に依る撮影(特に夜のシーンと空撮、そしてラストのビノシュの疾走シーン)もお見事だ。全編に才気が満ち満ちていて、実にスリリング。といって、作りはケイパー映画(強奪、強盗映画)のソレではないので、娯楽性には欠けるが、そんなものをカラックスに求めてはいけない(そもそも、誰も求めないだろうが)

 秀作である。


●『ボーイ・ミーツ・ガール』

 初鑑賞。フィルム上映。

 <アレックス3部作>の第1作にして、カラックスの長編デビュー作。この作品をカラックスはカンヌ国際映画祭の批評家週間に出品し、<恐るべき子供>、<神童>と称賛されたらしい。

【親友に恋人を奪われたアレックス(ドニ・ラヴァン)は、彼を殺害しようとするが思い留まる。その後、アレックスは同じ様な境遇のミレーユ(ミレーユ・ペリエ)を知る。とあるパーティーの会場で二人は近付きになり、束の間、恋の情熱を燃やす。しかし、ミレーユは別れたばかりの恋人との悶着を引きずっていた……】というスジ。

 この作品も撮影監督はジャン=イヴ・エスコフィエ。モノクロームの映像が瑞々しくも美しい。

 これは<破砕と綻びの映画>だ。

 冒頭に登場する車のフロントガラスは割れているし、アレックスのジャケットの裏地は綻んで破れる。飲み干した後のアンプル瓶は地面に叩きつけられて割られる。パーティーの主催者が大切にしているティーカップは縁が欠けているし、これもほどなくして割れる。アレックスがミレーユに電話を掛けている電話ボックスのガラス壁も丸い穴が開いているし、パーティーで二人が話をするきっかけになるのは、互いが手にしたグラスがぶつかって割れたためであるし、バスタブからは水が溢れ出る。全編に<破砕と綻び>が散見されるのだ。その中で生じる恋愛が上手くいくはずもなく、やがて悲劇的な結末を迎える。当然の帰結と言えよう。

 中盤に用意された超長回しによる、アレックスとミレーユの会話は非常に抽象的・観念的であり、ココでうんざりしてしまう方が少なからず居たようだ。僕はのめり込んで観ていたので飽きる事は無かった。幸運な事である。スクリーンというもの、映画館という空間は、僕にとって、魔法のような引力を感じさせてくれる。有り難い事だ。この感覚をずっと失わずに居たい。

 少々、粗削りとも思えるが、なかなかの佳作であった。


●『アネット』

 DCP上映。
 
 初鑑賞。4月の封切時は体調不良のため劇場に足を運べずで、残念に思っていた。今回の特集上映に感謝を。

 カンヌ国際映画祭監督賞受賞作。セザール賞では監督賞を含め、5部門での受賞を果たした。

 これねえ…… 予告編を観ても、どんな映画だか、さっぱり分からない……(苦笑)

【破天荒なスタンダップ・コメディアン、ヘンリー(アダム・ドライヴァー)は、国際的に有名なオペラ歌手アン(マリオン・コティヤール)と情熱的な恋に落ち、キャリア絶頂の中で結婚して世間の大いなる注目を集める。やがて2人の間に特別な能力を持った娘アネットが誕生するが、その後、ヘンリーの芸風に怪しい陰が見え始め、結婚生活が少しずつ狂い始めていく……】というスジ。

 脚本はカラックスとスパークスの共同に依るもの。撮影は、これまた優れた技量を有するカロリーヌ・シャンプティエ。

 本作はミュージカル。これは左程には驚くに値しない。カラックスは『ホーリー・モーターズ』で、部分的にではあるがミュージカル演出を採り入れているからだ(といって本格的なミュージカルには初挑戦ではある)

 観る前は「正統派の恋愛メロドラマ・ミュージカルかな?」と思っていたが、さに非ず。序盤は恋愛ドラマなのだが、次第にファンタジー、幽霊譚、スリラー、ホラー等の要素をぶち込んでくる。予想を何度も裏切られてドキドキした。狂いちぎった作劇に拍手を!!

 あやつり人形を用いたアネットの造形表現が気持ち悪く、なんだか落ち着かなかったが、最終盤でまさかの劇的描写が炸裂!! カラックスの面目躍如である。そのシークエンスでのヘンリーとアネットのデュエットが実にスリリングで目が釘付けになった。
 
 本編は140分で、コレが少々長く感じられるのが難ではある。120分程度に収めてくれると更に良かったろう。が、充分に見応え有り。予測不能な物語に翻弄される快楽を存分に味わう事が出来た。僕は相当に好きだなあ、コレ。

 23時頃に帰宅。そして、今、こうして日記を書いている。

 本日のベストは……
 
 『汚れた血』と『アネット』、同率! 『ボーイ・ミーツ・ガール』も悪く無かった。

 この特集、『ホーリー・モーターズ』は劇場とDVDで2度観ているのでスルーするとして、残る1作の『ポーラX』は久々に再見したいなあ。行けるかなあ。行けるとイイなあ。

 といったところで以上である。


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