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2021年05月14日19:26

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マイクル・コニイ『カリスマ』<「河口部の港湾都市プリマス(デヴォン州、人口約25万)はコーンウォール半島最大の都市で、>

アルマダの海戦でスペイン艦隊を撃破したイングランド艦隊やアメリカへ移住したメイフラワー号の出発地として知られている」と絡めていたら、彼は巨大なSF市場をもつ米国で売れた専業のSF作家になれたかもしれない。<


15-2
冨士俊雄画
『カリスマ』
マイクル・コニイ作
画像
http://blog.livedoor.jp/piaa0117/archives/8832290.html
装画を描いた冨士俊雄の署名が、文庫版の画像では気づきにくいが、カバーアートの右下に入っているのがすぐわかる。しかも、その下に黒地にピンクでOSUSSANAの文字が入っている。作中人物の美女スザンナに挿画家までが惚れ込んでしまったのか!
 しかもスザンナが雷に撃たれ死んでしまう場面が重厚な背景を前に描き込まれている。しかし心配ご無用。別のパラレル・ワールドにはスザンナが生きているかもしれない。雷が落ちた現場のすぐ近くには、相対的に小さく描き込まれた館がパラレル・ワールドの研究所であろう。スザンナに惚れ込んだ主人公は生きているスザンナを求めて、パラレル・ワールドに入る実験に加わり、さまざまなパラレル・ワールドに出向く。
 とっかえひっかえ出てくるパラレル・ワールドはまるで芝居小屋の書き割りのようだが、重厚な描き込みがそんな安易なものではないことを訴えている。舞台が英国コーンウォール地方の漁村であることがミソであろう。
 この地方が存在するコーンウォール半島の沿岸の大部分はリアス式海岸になっている。大西洋から来る西寄りの強い風によって引き起こされた波浪により海岸が激しく浸食されているのだ。それでも北海岸と南海岸は異なる特徴をもつ。北海岸は大西洋の一部であるケルト海に面し、厳しい自然にさらされている。一方、南海岸は比較的護られている。おそらくパレレル・ワールドの研究所は秘密を守るため、北海岸の漁村に設けられたのであろう。

 ちなみに南海岸にある「河口部の港湾都市プリマス(デヴォン州、人口約25万)はコーンウォール半島最大の都市で、アルマダの海戦でスペイン艦隊を撃破したイングランド艦隊やアメリカへ移住したメイフラワー号の出発地として知られている」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%AB
と絡めていたら、彼は巨大なSF市場をもつ米国で売れた専業のSF作家になれたかもしれない。

 もう一つ注意を払っておきたいことがある。次の<15-3>『馬的思考』の作者アルフレッド・ジャリがブルターニュ・ケルトの血を引いているからである。
それというのも「ブルターニュ、アイルランド、マン島、スコットランド、ウェールズと並んで6つのケルト民族地域(Celtic nations)のひとつとして認められている。アストゥリアス州やガリシア州と並び、コーンウォールはマン島政府やウェールズ政府から8つのケルト民族地域のひとつとしても認可されている。コーンウォールはケルト民族地域の一員として、毎年ブルターニュでケルト文化を祝うために開催されるロリアン間ケルトフェスティヴァルに参加している。」(同上)
しかし、マイケル・コニイ自身はイングランドのバーミンガムに生まれる生粋のアングロ・サクソンといってよいかどうか迷うところだが、『カリスマ』の舞台がケルト系であることになんの関心を寄せていないようだ。もしそうしていたらフランスSFと米国SFの媒介項になりえたかもしれない。

まぁね、そのようなことをしなかったことにこそ、マイケル・コニイたる所以かもしれない。



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