「美女と野獣(La Belle et la Bête)」の訳でちょっと気になるところがあった。
気になる翻訳が目に付いた本は「名作短編で学ぶフランス語」(尾河直哉編訳)で、13ページ。
原文はこう。
「Les deux aînées avaient beaucoup d'orgueil, parce qu'elles ètaient riches; elles faisaient les dames, et ne voulaient pas recevoir les visites des autres filles de marchands」
deux:2(人の)
aînées:姉たち
orgueil:高慢
parce que:なぜなら
dame:貴婦人(madame:私の貴婦人→婦人に対する敬称)
et:and
voulaient:vouloir(英語でいうとwant,wishつまり”…したい”)の条件法
recevoir:受け入れる
visite:訪問(名詞)
autre:他の
fille:娘
marchand:商人
訳はこうなってる。
「お金持ちだったためふたりの姉は気位が高く、まるで貴婦人気取りで、同じ商人(あきんど)の娘しかお客に迎えようとしませんでした。」
とすると、同じ商人の娘のお客は迎え入れる→商人以下の身分の娘のお客は迎え入れない、と理解できる。
et以下の文の主動詞はvoulaientでne,pas(否定の副詞)で囲まれているので、「望まない」、recevoir、visiteも一緒に訳すと「訪問を受けることを望まない」。つまり、素直に読めば同じ商人の娘たちの訪問を受けることを望まなかった、→もっと高貴な身分の娘たちの訪問は喜んで受け入れた、という風に読める。
普通「…しか…ない」と否定を限定する場合は接続詞queを挟むのだが、訳した人は見落としたのだろうか。
翻訳を持っていないので、ネットで英訳を探したら、古いものだけど、あった。
https://en.wikisource.org/wiki/Old_time_stories_(Perrault,_Robinson)/Beauty_and_the_Beast
該当の箇所はこうなってる。
「The two elder girls were very arrogant as a result of their wealth; they pretended to be great ladies, declining to receive the daughters of other merchants,」
declineが(招待、申し出などを)断る、辞退する、という意味なので、やっぱりそうだな。
私の持ってるのは初版なので、再版してたら修正されてるかも。出版社にはホームページからメッセージを送った。
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