おじいちゃんは薬屋をやっていました。
あ、薬屋って、薬局ですけどね。
薬局と薬店とあるの、私はずいぶんたってから知ったんですが、ご存じでしたか?
簡単に言えば、薬局はお医者さんから出る処方箋を元に薬を出せる所、薬店は「胃薬の○○ください」「はーい」っていう所です。
もちろん薬を売っていたけれど、おばあちゃんの実家はお医者だったので、そこで作っていた薬をおばあちゃんは全部覚えていたんですって。
だから、そういう薬も作って売っていました。薬屋の仲間を作って、そこに卸していたんです。
家の奥の方には工場(こうば)がありました。
おじいちゃん夫婦、伯父さん一家、使用人の忠ちゃんが住んでいて、もう1人使用人のイノウエくんと叔父さんが通って来てました。
工場は女の人が中心になって、ビンに詰めたり、ラベルを貼ったりしていたな。
ほかに、医薬分業同盟という組織を作って、お医者と薬を出す所を別にしようっていう、今はアタリマエになってる仕組みを作るべく、運動もしてました。
ガリ版を使って、会報を出したりして。
時々(毎月?)会合があって、10人ぐらいの薬屋さんが来ました。
その薬屋の前にあるアパートに私らは住んでたので、私の遊び場はもちろんおじいちゃんの家。
薬屋、工場、家庭の部分、2階のアパートの部分、庭、そして自分の家。遊ぶのには充分でしたね。
で、これはおじいちゃんが白衣着て店番しているところ。
タバコ吸ってますね。
おじいちゃん、吸ってたかなあ? まあ、その頃男の人はほとんど吸ってたって、母が言うけれど。
伯父さん、叔父さん、忠ちゃん、みんな吸ってたもんな。
よく見えないかもしれませんが、右側が調剤する所で、3畳ぐらいあったでしょうか。
端っこに精密な秤(はかり)が写ってます。
でも、処方箋で薬を調剤するって、あまり見たことないような。
だけどいろんな薬は必要だから、おじいちゃんの顔の後ろの部分と、写ってない部分に、ビンに入った薬がい〜〜っぱいあったのです。
「クロロホルム」「エーテル」なんていうのもあったなぁ。
調剤室には輪ゴムとか雑多な物を入れる引き出しもあり、唯一お客さんの子供にあげる風船と「ケロちゃん」が入ってて、私の興味ももっぱらソコだったんですけどね。
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