第4話 『首謀者』
「すまなかったな・・・」
「なんでおめーが謝るんだよ?」
開口一番に謝罪の言葉を聞いた幽助が問い詰める。
「今回の件に関してだが、おそらく首謀者は私の息子だ・・・君の友人を巻き込んでしまったようだ」
そこにいた全員が驚いた。
「それは本当か?黄泉?」
蔵馬も珍しく慌てた様子だ。
「ああ・・・。やつが使っていたコンピュータでの検索履歴や借りて行った本を調べた結果、『裏世界樹の実』とやらの情報を集めていたようなのだ」
「蔵馬、おめーなら植物関係は詳しいんじゃねーか?」
黄泉の話す内容を聞いて幽助が蔵馬に尋ねた。
「聞いたことはあるが、噂・・・というよりほとんどおとぎ話レベルの代物のはず・・・」
「ああ、それなら俺も聞いたことあるぜ」
こいつでも知っているのかと蔵馬の話しに割って入った酎を見て一同がきょとんとする。
「人を筋肉バカか何かみてーに見るんじゃねーよ。なんかあれだろ?その実にはすげー妖気が蓄えられていて食べたやつはすさまじい力を得られるとか何とか…」
「特殊な宝石で作った刃を持つ刃物でしか刈り取れないって話だな、確か」
それを聞いて蔵馬がはっとした顔をする。
「氷泪石か!」
「飛影のいも・・・っといけね、桑原の恋人が流す涙か!それでそいつらは彼女をさらっていったんだな」
幽助も感付き、なるほどという顔をする。
「そうとわかれば早速・・・」
と言いかけた幽助を黄泉が片手をあげて制した。
「首謀者が私の息子であることが分かった以上ここからは私1人で動く。事と次第によっては・・・」
眉間にしわを寄せた厳しい表情で黄泉が遠くを見上げた。
「そうはいかねぇ、桑原の仇を討ってやらねぇと!修羅の場所は大体検討がついてるんだろ?案内してくれ!」
幽助が詰め寄るが、少し語気を強め黄泉が制する。
「今のはらわたが煮えくり返った君では下手をすると返り討ちにあいかねんぞ。冷静な判断が出来ないやつはお荷物になる」
「てめぇ・・・」
喰いかかった幽助を蔵馬がなだめる。
「やめろ幽助。黄泉の言うとおりだ。俺たちと修羅ならほとんど実力差はないんだ。桑原君の彼女をさらっていったやつらの中に修羅の妖気は感じなかった・・・おそらく仲間が数人いる・・・そいつらの実力も未知数な今、冷静じゃない君は危ない。」
「くそっ」
悔しさと怒りをにじませながらうつむく幽助。
「なに、心配はいらんさ。修羅も大きくなって強くなったとはいえまだまだ子供。私との実力差は歴然なのはお前たちも知っているだろう?
私1人で事を収められるさ。修羅の目的が何かを確かめ、雪菜という女性も無事に連れて帰るよ。さらった目的がその娘の流す氷泪石なら殺したりはすまい。」
先ほどよりは穏やかな表情に戻った黄泉がそこにいた。
第2回のトーナメントでも準決勝まで上り詰めたほどの男・・・その黄泉を前にみなもそう心配はいらないか・・・と納得したのだった。
「お前ならまず大丈夫とは思うが油断はするなよ・・・。裏世界樹の実が少し気がかりだ」
蔵馬が注意喚起をし息子である修羅のもとへと急ぐ黄泉を見送った。
そのころ妹である雪菜をさらった2つの妖気を追いかけ魔界に入った飛影は、今まさに邪眼の力で見つけ出したその2つともう1つの妖気の反応がある洞窟に突入しようとしていた。
「あそこだな・・・」
「待ってろ、雪菜・・・今助け出す。」
大木の根を素早く乗り越え、そのふもとに大きく口をあける洞窟へと入っていったのだった。
第4話 ―完―
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