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2020年01月03日14:25

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2019年映画ベストテン【日本映画編】

2019年映画ベストテンの続きです。日本映画編です。

■日本映画
1:お嬢ちゃん(二ノ宮隆太郎監督)
2:さよならくちびる(塩田明彦監督)
3:岬の兄妹(片山慎三監督)
4:蜜蜂と遠雷(石川慶監督)
5:海獣の子供(渡辺歩監督)
6:WE ARE LITTLE ZOMBIES ウィーアーリトルゾンビーズ(長久允監督)
7:HELLO WORLD ハロー・ワールド(伊藤智彦監督)
8:マチネの終わりに(西谷弘監督)
9:よこがお(深田晃司監督)
10:宮本から君へ(真利子哲也監督)
次:台風家族、最初の晩餐、ワイルドツアー

 1位は世の中はすべて下らない、と思っている不機嫌な女の子の話である。いわゆる中2病というやつかもしれない。でも、全編ずっと不機嫌な顔を崩さないヒロインを演じた萩原みのりのなんと魅力的なことよ。大したドラマはまったくないにも関わらず、彼女が登場人物(ナンパ男からお世話になってる叔母さんまで)に片っ端から喧嘩を売る(わけでもないが)だけで、ものすごく危なっかしく、見ていてヒヤヒヤする。とにかく彼女に何が起こるのか、じっと画面に集中してしまう。外国映画の1位にした『スケート・キッチン』はスケボーをやりたい少女だったが、こちらのヒロインは特にやりたいことはなさそうである。退屈な日常を何もなくただぼんやり生きていることにムカついている。それもリアルな青春だろう。一方でそういうことに気がついてもいない無為な人々もなぜか登場するが、彼女との比較で出したのかもしれない。

 2位は上半期ベストテンのほうに書いたので略。

 3位は昨年見た日本映画の中でも極北である。貧困のために知的障害の妹に売春させる兄の話。映画を見ながら、こんな人たちが本当に今の日本にいるのか、とか、いささか露悪的すぎやしないか、とか思ったのだが、とにかく白石和彌作品など裸足で逃げ出すほどの凄まじい極貧リアリティで参った。特に売り上げを狙う不良学生たちを追っ払うために排便をぶちまける場面には目を覆いたくなった。

 4位はただ良い演奏をするためだけにすべてをピアノコンテストに賭ける人たちの話。よくある恋愛パターンなどここには一切ない(そういうのを持ち込むキャラクターは早々に物語から退場させられる)。音楽だけがすべて、ほんの少しでも上の演奏を目指すのだけがすべて、という物語のあり方が実に清々しい。また驚いたのが、ピアノ演奏がはっきり区別のつくほどそれぞれの登場人物に合わせた独自の演奏になっていたことだ。ここまで丁寧に作り込まれている映画は見たことがない。とことんまで追い込まれるヒロインを演じた松岡茉優が最良の演技を見せた。

 5位はアニメーション作品。これも上半期で書いている。ちょっと『2001年宇宙の旅』っぽい映像に逃げたところがあるが、手抜きなどまったく感じさせない凄まじいクライマックスの作画には圧倒された。

 6位も上半期で書いたので略す。

 7位は5位に続いてアニメーション作品。予告編を見た段階で、新海誠のエピゴーネンの一本かと思ったのだが勘違い。ぜんぜん違った。前半はラノベ的青春SFストーリーの面白さでひっぱり、後半スイッチが入ってからは一気にアニメーションらしい動きの面白さで見せる。京都の位置関係を知っていると面白さが倍化する。エンドクレジット後のエピローグは明らかに蛇足っぽく、ない方がスッキリしてて私の好みなのだが、まあ許せる範囲。

 8位、9位は悪役の存在がよかった。8位の桜井ユキは恥ずかしながらぜんぜん知らない女優さんだったが、本作を見れば絶対気になって覚えてしまうほどの役であり演技だった。あの桜井ユキのずぶ濡れの迫力は、増村保造監督『妻は告白する』のずぶ濡れの若尾文子を思い出したぐらい鬼気迫っていた。9位の市川実日子がまた恐ろしい役で、強烈なインパクトを残した。ただこちらの監督の場合は、わざと市川の顔を陰で真っ黒にして映さないという演出をしたので、彼女の演技(というか表情)はちょっとわからなかった。

 10位は原作漫画が有名ながら未読。しかし真利子監督らしいバイオレンス描写を堪能した。あのマンションの階段の狭い踊り場での格闘は、久しく見ていない映画っぽいアクションを思い出させてくれた。他にも泣きじゃくる池松壮亮のごはんの汚い食べ方とかも強烈で忘れられない。ただ本作はもともとTVドラマでやったものの続きの映画化なので、よくわからない登場人物などが出てくる。単独で評価できない部分があるのは残念。あと関係ないけどピエール瀧が普通に出てきたのでビックリした。やっぱり演技が自然でうまい。もったいない。

■総評
 外国映画の方は、アジア映画が不作の年であった。単に私がいいものを見逃しているだけかもしれないが、見たものにはあまり魅力を感じなかった。それでもインド映画の『バジュランギおじさん〜』はベスト12位、ジャ・ジャンクー監督の『帰れない二人』は14位に入ったのだが、どちらもテンからは残念ながら漏れた。

 気になったのは7時間18分の『サタンタンゴ』や3時間54分の『象は静かに座っている』の長尺映画。見てみたかったんだけど、リスクが高くてやっぱり見れなかった(それでも『ワンス・アポン・ア・タイム〜』や『アイリッシュマン』は見たけど)。ジジイになったので途中でトイレが我慢できそうにないこと、つまんなかったらどうしようということ、そしてやはり入場料金が高額になるのがネックだ(ちなみに見た二本は通常料金)。

 あと2019年の後半の外国映画は「スタンリー・キューブリック・イヤー」だった(数カ月でイヤーというのもおかしいけど)。10月に「午前十時の映画祭」で『時計じかけのオレンジ』を見る。1987年に大毎地下劇場で見て以来32年ぶりの再会であった。大毎地下劇場は、今はなき伝説の名画座で、このときは『未来世紀ブラジル』と2本立てで、「薔薇色の管理社会」と銘打って上映していた。今考えてもクールだよね! それはいいんだけど、今回の上映で感激したのは、映倫によるボカシがなくなっていたこと(例の高速3Pが黒丸なしで見られるなんて! 時代は進んだ)と、字幕担当が『フルメタル・ジャケット』の原田眞人だったことだ。原田監督はアンソニー・バージェスの原作にあった奇妙な未来のスラングまで完全翻訳。まったく見る前まで思ってもみなかったので、これは予想外に嬉しかった(この「午前十時の映画祭」も今年の三月をもって終了だ)。
 で、『時計じかけ〜』の興奮も冷めやらぬうちに、シネリーブル梅田で『キューブリックに愛された男』『キューブリックに魅せられた男』の、キューブリック関連の二本のドキュメンタリーが連続上映され、これも当然見に行った。感想は割愛するがどちらも面白かった。そして最後はなぜか『シャイニング』の続編である『ドクター・スリープ』が公開。まあ、面白いというには微妙な映画だったけど、劇中で『シャイニング』のカット割りやセットがオマージュとして再現されていたのは興味深かった。

 日本映画の方は特に言うことはないが、それでもあえて言えば昨年の一番の話題はピエール瀧(『居眠り磐音』『麻雀放浪記2020』)、新井浩文(『台風家族』)そして沢尻エリカ(『人間失格』)らの出すか出さないか問題、であった。まあ、私個人は直接の被害者・関係者でもない限り、とやかく言うべきではないと思うけど(キリストの教え「あなた方のなかで罪のない者だけが石を投げなさい」だ)。もちろんそれなりの刑事罰は受けて反省してもらうのが前提の話だけど。俳優的魅力においてはピエール、新井は映画に復帰してくれていいけど、沢尻は個人的にちょっと(笑)。そんなことより、芸能事務所の圧力もしくはTV局などの使う側の忖度で、元スマップの三人やのんこと能年玲奈が出させてもらえなかったりすることの方がよっぽどか問題だと私は思う。

 あとアニメ作品はそれほど振るわなかった。『天気の子』もまあ、普通だとは思うけど、あそこまでTOHOゴリ押しだと、みんな引くわな(記録を作るためか、1月現在もまだ上映をやっている。本当に客入っているの?)。

 TOHOといえば、6000マイルを貯めると一カ月フリーパスをもらえる制度が昨年で廃止になった。フリーパスは有難いと思う反面、実際はやってみると地獄の映画マラソン(意地になって見たくないものまで見る、笑)になるので、しんどくもあったのだが、それももう終わりということである。一つだけいえるのは、2020年は見る本数が確実に減る、ということだ。

以上です。
ダラダラした長文に最後までお付き合いしてくださった方、有難うございました。
それでは来年のベストテンまで、お元気で。さようなら〜。

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