保江邦夫さんのYouTubeを見ていたら、湯川秀樹の師の山本クウガイ上人の話が出てきましたが、クウガイて誰だろう？
調べてみると山本空外、クウガイは空外と書くのか…
しばらくして隈元忠敬先生が空外上人について書いた文章があるのに気がつきました。
広島大学で定年間近の隈元先生の講義を受けたことがあったので、あのときこのことを知っていたら詳しくお話を聞かせてもらえたのにと、もうあり得ないことですが昔のことを回想してしまいました。
記憶を遡ると、先生がかつて西田幾多郎と双璧をなした西晋一郎の名前に言及したことが一度ありました。西田哲学が京都学派により盛んになったのにたいして、西哲学は衣鉢を継ぐものがなく、ほとんど忘れ去られようとしていることを嘆いておられましたが、山本幹夫（空外）先生の話は聞いたことはありませんでした。
広島大学はドイツ観念論の優れた学者を輩出する伝統のようなものがありますが、当時それがどのように始まったのか全く知らずに過ごしていました。
広島高等師範学校（これがのちに広島文理科大学、広島大学に繋がります）創立時に初代校長の北条時敬（西田幾多郎、西晋一郎両者の師）に教授に招かれた西晋一郎、同校が文理科大学になるときに助教授に推薦されたのが山本幹夫ですから、その伝統の礎はこれらの人々によって築かれたものだったのかと、今頃になってようやく気づいた次第です。
山本空外は広島市稲荷町の生まれ、生家は浄土真宗の檀家で、旧制高校の頃には四六時中寝ても念仏していた逸話を教育テレビの「こころの時代」のインタビューで自ら語っています。
下記の空外上人の略伝をみると、旧制高校時代、周防大島西蓮寺に山崎辨榮上人の教えを受けた藤本浄本上人を訪ね、念仏三昧を成就し、霊性の世界に覚醒したとあります。
http://cq-lillian.kir.jp/kugai-kinenkan/contents02/contents02.html
その時の体験談が『弁栄聖者の人格と宗教』（未見）にあるので、それを『山本空外上人足跡点描』より孫引きします。1921年（大正十年・一八才）八月の出来事です。
『忘れることの出来ない三日目の晩であった。・・・真夏のことでもあり夜分は蚊帳（かや）の中で念仏修行をしていたが、その晩の心の冴え方はまた格別であった。もとより閉目念仏しているのであるが、やがて心境の上では、蚊帳もなく、部屋もなく、大空の中にでもあるという境界の続くうち、明了了と実感せるは衆生摂取（しゅじょうせっしゅ）の表現ともいうべき聖像ーーこの詳細は今もあざやかに記憶するところであるが、ここに記すを差しひかえたいーーであった。おもわず歓喜踊躍おのづと感泣して、外形は動けども内心はじつに安らかであった。』
宗教・哲学・芸術に巨大な足跡を残された空外上人ですが、その空外上人の信仰された山崎辨榮上人はどのような方だったのか調べると、岐阜光明会のホームページに様々な資料がありました。
岐阜光明会
http://gifukoumyoukai.kiramori.net
特に「笹本戒浄上人 ― 二大恩人と上人をめぐる人々 ―」のところにある「弁栄聖者�機廚�PDFの11ページから始まる「四大智慧の事実」を読んで驚異の念に打たれたので、興味を持たれたら是非目を通していただきたく思います。
http://gifukoumyoukai.kiramori.net/06.html
このほかにも両手で同時にぐるぐる巻きに書いた短歌の書（岩波文庫『人生の帰趣』の表紙に使われています）や、米粒に書いた般若心経！などどうしてこんなふうに出来るのか、神人合一の境地でなければ説明つかないようなものもたくさん残されています。
もうすぐ終わる2019年はちょうど山崎辨榮上人の百回忌、100年前にこれほどの人が生きていたとは…
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