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2019年07月14日18:42

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「物価が下がる」について




日本は今、二十年にわたる長期の不況にあえいでいるという。その不況の正体は「デフレ」であるといわれる。
デフレとは、ものの値段が下がり続けることだ。逆に言えば、お金の価値が上がり続けることを意味する。
今年一万円で買えるものが、来年はもっと安く買えるかもしれない。だから買い控える。物が売れなければ会社は利益を上げられない。だから給料も出せない。そのために景気が低迷する。
なるほど、もっともな説明のようだ。
しかし、ひとたび立ち止まって、冷静に考えてみたい。ものの値段が下がることは、本当に「悪い」ことなのだろうか。
いうまでもなく、産業は日々効率化している。もともと手仕事で作っていたものが、機械で作れるようになる。効率は数十倍になる。その分、製造にかかるコストが下がるのだから、売る値段も下げることができる。
誰も効率を後退させようとは考えていない。日々、生産効率は向上していく。つまり、同じ時間に作れる製品の数や質は、日々向上している。生産コストは日々下がっているのだから、それに伴って物価が下がっていくのは、至極当然の結果である。
物価が下がるということは、それだけ経済が効率化しているということだ。時代が下るとともに、同じお金で買えるものの質がどんどん高くなっていくのは、当たり前のことなのだ。
そしてこれからは、人の時代ではなくなる。現在人がおこなっていることの多くをロボットや人工知能が代行することになる。そうなれば、今よりもさらに生産にかかるコストが低減していくのは目に見えている。生産にかかる手間が減るのに、物価が上昇していくのは、むしろ不自然なのだ。
日本の政府は、「インフレ目標」を掲げながら、デフレ経済が続くことを願っているのではないだろうか。今の日本にとって、インフレが起こるほど恐ろしいことはない。一般的には、インフレが起これば市場に出回るお金の量が増えるから、労働者の給料も上がって経済が活性化すると説明される。
しかし、お金の量が増えれば労働者の給料が上がる、となど、いったい誰が約束できるのであろうか。確かにバブル経済期の日本は、年功序列制度や終身雇用の制度が生きていて、企業に勤めてさえいれば収入が増える社会であったかもしれない。
しかし、時代は変わった。企業は支出を抑えて内部留保を蓄える思考にすでに変わってしまっており、政府もそれに合わせるかのように法を整備していきた。派遣の解禁しかり、裁量労働制の導入しかり、改正出入国管理法制定しかりである。今や企業は、人件費をいかようにも抑えることができる。たとえ企業の収入が増えたところで、それが労働者の給料に回る保障などどこにもないのだ。
一方で、政府もそのような状況であることを本心では願っているに違いない。なぜなら、現在の日本国の財政は、デフレを前提にしなければとても成り立たない状況にあるからだ。
国内総生産の二百パーセント分にもあたる国債発行残高を積み立てながら、なぜ日本がいまだに破綻せずにいられるか。それが企業、または個人の貯蓄に支えられていることは言うまでもない。
企業も個人も、デフレ下にある現在では、収入の多くを貯蓄に回そうと躍起になる。それは将来の実入りの減少を恐れるとともに、将来の貨幣の価値の向上を期待するからに他ならない。貯蓄の多くは銀行に積み立てられる。それが国債を購入する原資に転用される。
要するに、現在の日本は、企業や個人の収入が増えることによって貯蓄の額が増し、それが新たな国債の受け皿となることで持ちこたえているという構造になっているのだ。
それをわかっているからこそ、政府は大企業に対して優遇したい。法人税を引き下げ、消費税を引き上げることによって輸出企業への還付を厚くし、経団連寄りの政策を打つことによって、企業の内部留保の積み上げに加担する。
いうなれば、現在の日本の財政はデフレだからこそ持ちこたえているいのであり、インフレが起こることなど、誰も望んではいないのである。
政府の方針がデフレを支持し、かつ産業は日々効率化していく。これで物価が上がるというほうがおかしいのは明白ではないか。
それでも政府が、旗印のように「デフレ脱却」を謳うのは、一種の印象操作であり、洗脳である。政府は国民に、「景気が良くなる」などという実感を持ってほしくはない。反対に、デフレのままでは、今後も景気は厳しい局面が続くか、あるいは悪くなる、と思っていてほしいのだ。
それが、消費者心理を一層冷え込ませ、デフレの状況を長引かせる有力な基軸となる。
ものの値段が下がるということは悪いことではなく、当然のことであるし、日本が財政破綻を免れているのも、いわば貨幣価値が上がっていることの恩恵である。
いたずらに、「デフレが悪く、インフレがよい」と妄信することもなかろう。

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