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2019年06月06日08:42

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蟻の街の子供たち 北原怜子(きたはらさとこ)−31

聖母文庫 聖母の騎士社刊

 だからこそ、この一週間、夜の目も眠らぬ思いをして、子供たちに劇の猛練習をさせてきたのです。心なしか、朝の集合の時でも、道々の電車の乗り降りの態度でも、三ヵ月前の「蟻の街」を知っているものには、おそらく想像もつかない程きちんとした団体行動をとってくれました。
 
 高円寺の駅には、光塩女子学院の学生が三人程出迎えに来ていて下さいました。私たちの一行がメルセス女子修道院の正門から入って行くと、正面玄関の高い高い石段の上から、純白の修道服に黒のベールの院長様はじめ三、四人のマードレがにこやかに下りて来て、子供たちに歓迎の挨拶をして下さいました。そして、食事の用意ができるまで、運動場で自由に遊ぶようにと、マードレのお心尽しで、いろいろの運動具をかして下さった上に、鈴木弥生先生はじめ、各集落担当の先生方も出て来られて、みんなと一緒になって遊んで下さいました。
 やがて、食事の知らせを受けて、私たちは、ぞろぞろと地下室の大広間に入って行きました。正面には一段高い教壇があり、それに向かって、コの字型に机と椅子が壁に沿って並べてありました。六十人の子供たちが席につくと同時に、二十人近くの学生が隣の調理室から御馳走をはこんで下さいます。きれいに彩色した御復活祭のゆで卵、お寿司、ミルク、ドーナツ、・・・一つ一つが運ばれるたびに、子供たちは目をみはって喜びました。子供たちのそのニコヤカな顔を見ただけで私は、自分がどんな上等な料理を頂いた時にも感じられなかった嬉しさで胸が一杯になりました。

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