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2019年06月04日08:08

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蟻の街の子供たち 北原怜子(きたはらさとこ)−29

聖母文庫 聖母の騎士社刊

 話は、みんなが蝶々さんになり、一人の女の子が、天の使いとなって、空から舞い降りて、それぞれの蝶々さんに春の訪れを知らすのです。眠りの暗い生活から、明るい希望に満ちた生活を恵まれた蝶々さんたちの喜び、天主様ありがとう、ありがとうと、羽根の生えた蝶々さんたちは嬉しそうに、天使と一緒に踊り回る・・・というのです。これは家族から虐待さあれて、憂鬱(ゆううつ)な生活をつづけていた久ちゃんが、最近になって何か人生に明るい希望を見出すようになった喜びと、感謝の心を蝶々によせて描いたものでした。
 復活祭までの一週間というもの、子供たちは、毎日、私の家へやって来て、どたんばたんとはね回る音が、夜おそくまでつづきました。


御復活祭おめでとう

 いよいよ御復活祭の当日です。私は朝早くから忙しく立ち回って、蟻の街、今戸、本願寺の三ヵ所の子供たち六十人程をまとめて、高円寺のメルセス女子修道院へ引率して行きました。道々子供たちは夢中ではしゃぎ回っておりました。しかしほんとうのことを言うと、今日の御復活祭の行事に最大の期待をかけていたのは、私でした。
 というわけは・・・話が、「蟻の街」のクリスマスが終わってすぐの土曜日、十二月二十九日にさかのぼります。私はその頃、メルセス女子修道院のマードレ・マリア・アンヘレスを中心とする精神修養のための土曜日例会にかかさず出席しておりましたので、その席上で、マードレに「蟻の街」のことや、今戸や、本願寺の浮浪者集落のことについてご報告申し上げました。それが動機となって、翌年の春から、この三つの集落にメルセス女子修道院に所属する光塩女子学院の生徒が五人ずつ、毎週日曜日に派遣されることになりました。あれはたしか、新春早々の土曜日だったと思います。突然、メルセス女子修道院からお呼出しの電話があったので、いそいで出かけて行くと、例の三集落に派遣される責任者の分担の打ち合わせ会がもう終わったあとでした。結局、各集落に二人ずつ先生が送られることにきまり、私は、鈴木弥生先生とご一緒に「蟻の街」だけを受持つことに決定しておりました。

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