私の名前は村上香奈子、中学二年生。町内の中学校に通う平凡な女の子。
この物語は、私の親友、村瀬葉月ちゃんについてのお話しです。
葉月ちゃんとは入学したてのころ、すぐに仲良しになりました。アイウエオ順で席が近く、真っ先に話したことがきっかけです。
葉月ちゃんは瞳が大きくて鼻や口が小さくて、いわゆる美少女風な女の子の印象が強く、でも話してみると、その不思議さにもっともっと魅力を感じました。
彼女の家は町外れにある洋館のようなお家で、まさにあの原田真二のタイムトラベルの歌の世界のようでした。
葉月ちゃんはそのお家にお母さんと二人暮らしで、兄弟もお父さんもいませんでした。お母さんはいつ遊びに行ってもお仕事でいませんでした。
彼女の部屋にはたくさんの珍しい絵本などがあり、それらを順番に眺めているだけで楽しく、私にはすべてが新鮮でした。たいていは途中のコンビニで100円のお菓子と飲み物を買い、お腹が空いたらお菓子を食べながら私たちは日の暮れるまで葉月ちゃんの部屋で過ごしました。
葉月ちゃんは可愛いだけではなく、運動神経も良くていつもリレーの選手に選ばれていました。クラスの男子で葉月ちゃんのことを好きな子も中にはいましたが、葉月ちゃんはクラスの男の子になんてまるで関心のない素振りでした。
同い年の男の子なんて幼い感じ。そう思わない?
私は葉月ちゃんの問い掛けに答えを窮しました。何故なら私はまだ男の子というものが良く分からなかったからなんです。家には男はお父さんだけでしたし、四つ上のお姉ちゃんとは余りそういう話しはしなかったし。
私ね、人間には興味ないんだ。
ときどき葉月ちゃんはそんなようなわけの分からないことを言って私を困惑させました。
でも私たちは人間だよ。
私にはこれが精一杯の反論でした。それ以上の言葉を私は持っていませんでした。
それはそうだね。
何故かいつもそんなとき、葉月ちゃんは寂しそうでした。
心地好い春風の中、葉月ちゃんと並んで帰るとき、私は少なからず自分が幸せだと感じました。
そう、私は葉月ちゃんに漠然と憧れを抱いていたのでした。
しかし、夏の暑さがやってきたある日、事件は起こりました。
香奈子ちゃん、私妖精さんに恋しちゃった!
真顔で葉月ちゃんはそう言って顔を赤らめました。
to be contuned
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