水鳥の恋
水の上にうかぶ水鳥は 恋をしていた
かわいい恋心だったか どうか
心の覗きようがないので わからないが
卑しいものには 思えなかった
ひとが ひとの恋を邪推するのは卑しいが
水鳥の恋ならどうだろう
ゆうぐれ
あの水鳥は一羽きり
河の夕日の ひかりの尾のなかにうかんでいた
水の上の水鳥は ほそい首をうなだれ
水をみつめていた
澄んでゆく 冬の水さながらに
水鳥は 恋をしていた
どの水鳥を恋していたのか 私は知っている
見まもっていた
ひとの恋を見まもったりすることはないが
私は見まもっていた
20171106
糸川草一郎
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