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2017年09月27日02:46

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吉村昭『海の史劇』

中学時代にシンガポールの日本人会古本市で単行本上巻のみ購入。その後高校受験のため帰国し、府立高校受験翌日に合本版文庫を購入し読了した。一言でいえば日本海海戦を描いた作品であり、小国日本が大国ロシアを撃破するカタルシスを求めて読み始めたわけだが、本書はバルチック艦隊がバルト海から喜望峰またはスエズ運河を経て対馬沖に向かう長大で苦難に満ちた遠征航路を延々と記録している。日英同盟によるイギリスの妨害、イギリスの圧力を受けた同盟国フランスの消極的支援など、国際情勢に翻弄され疲弊していく艦隊の窮状には、敵ながら同情を禁じ得なかった。この前人未到の称賛に値する航海の末に、バルチック艦隊は日本海軍によって完膚なきまでに叩きのめされてしまうのである。歴史というドラマ(史劇)は、決して一方的な視点で描いてはいけない。そのことを深く胸に刻んだ一冊だった。
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