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2017年06月01日00:58

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『 メッセージ 』を観てきました。

ひろぼうさん、ガラリーナさんの高評価にそそられて、『 メッセージ 』を観てきました。
ぼくも堪能しました。 未見の方には、ぼくもおすすめします。

( ネタばれあり )
昨今はSFはもはやジャンルでさえないほど普通な手法になっていて、あるいはスピリチュアルなファンタジー作品も陳腐なものが多くて、むしろ食傷気味なのですが、本作は本格的・正統派のSF映画と言える出来栄えでした。

ひろぼうさんご指摘のように、H.Gウェルズや『 2001年 』を思わせる表現もありますし、飛行物体はルネ・マグリットの絵画( http://musey.net/2078/4126 ) を思わせ、そうした古典的な作品の引用が作品に深みを与えることに成功していると思います。

映画に限らず、絵画も、音楽も優れたアートは私たちの思索や感性を触発させるものですし、本格的なSFは別の世界観を見せることによって、私たちのものの見方を広く、深くさせてくれますが、本作はそういう作品です。 
観終わった後に、掲示を受けた何かを反芻し、余韻に浸させてくれるのです。

本作のテーマの一つは異文化理解です。
エイミー・アダムス演じる言語学者を通して示される表意文字という概念( 表音文字の英語の映画作品では異文化、漢字文化圏の観客には逆に当たり前だけど)や、サピア・ウォーフの仮説( ひさしぶりに聞いた。 言語によって、その人の世界観や考え方が決定づけられるという考え)などによって、文化を相対化して考えることと、異文化理解するのはどういうことなのか、そのアプローチの過程を見せています。

それによって、今カオスと化し、虚無と猜疑心と暴力の広がる世界に生きる私たち観客に、異文化理解の持つ力、カオスを超越する知性の可能性を示しています。
そこに感銘を受けました。

もう一つのテーマは人生の深遠さです。
原作者のテッド・チャンは無神論者だそうですが、時間や空間の壮大さ、人類を超越する存在などについてのSF的論考を提示することによって、逆説的に宗教的テーマ、生と死、避けられない運命を覚悟した上での生きる意志、言い換えれば、人生の深遠さを私たちに考えさせるのです。

こう書くと、堅苦しく、難解で退屈な作品と思われそうですが、大人の鑑賞に堪える、琴線に触れる作品でした。
若い人にも、ぜひ観てほしい作品です。

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