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2017年04月30日23:14

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内藤正敏・松岡正剛『古代金属国家論』

本書は、1980年に上梓された松岡正剛と内藤正敏との対談『古代金属国家論』を文庫として復刊したものである。実質的には松岡はインタビュアーに徹し、内藤の「宗教科学民俗学」「古代金属文化論」と呼ぶべき知見を縦横無尽に語らせている。

議論の中心となる場所は、出羽三山を擁する奥羽山岳地帯である。化学者としての専門知識と山伏としての修行体験から、内藤は山岳地帯を拠点とする古代修験者たちは単なる呪術者集団ではなく、中国道教の煉丹術を継承した科学技術者集団であると考えた。その最たる技術が金属資源の開発である。

聖武天皇の大仏造営事業による金属需要をきっかけとして、大和政権は東北地方の鉱脈地帯に目をつけ侵攻を開始する。その攻防は最終的に奥州藤原氏が滅亡するまで続き、それ以降も山岳地帯の呪術と技術を支配することが権力者の条件となったという。

ともすれば稲作文化に偏重しがちな日本民俗学において、谷川健一と共に金属文化の重要性を問うた業績の嚆矢と言えよう。

http://booklog.jp/item/1/4845628767
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