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2016年10月16日19:58

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よみがえれ！シーボルトの日本博物館

江戸東京博物館で開催中の『よみがえれ！シーボルトの日本博物館』に行きました。

↓よみがえれ！シーボルトの日本博物館公式ＨＰ
http://siebold-150.jp/

チケットは毎度お馴染み新聞屋さんからの貰い物。新聞屋さん、いつもいつも有難う。

シーボルトさん。私のイメージでは、「日本に西洋医学を教えに来た人で、日本地図を持ちだそうとして強制退去を命じられちゃった人だよね？日本で、日本人女性と結婚したのに。あと、都市伝説では、実はドイツのスパイ説もあるよね。」的な薄っぺらい知識しかありません。なので、音声ガイドを借りました。何故か、音声ガイドを、elfin'という、美声女コンテストで優勝した・・というアイドルユニットが担当しており、ちょっと不思議でした。シーボルトにアイドル。最初は違和感があったのですが、聴いてるうちに慣れましたが。声優さんもやっているそうで（美声女コンテストだもんな）、滑舌は良かったです。アイドルのキャピリン感はあるので、それが嫌な人には辛いかもだが。

で、結論から言うと、シーボルトがドイツのスパイっていうのは、やはり都市伝説らしく、純粋に日本大好き

な、おじちゃんだったみたいです。

前半に、シーボルト自身に関する展示があり、その後、シーボルトが集めた品々が展示されている構成で、この構成は良かったと思いました。品々展示の方は、何でも、ミュンヘンにおいて開催されたシーボルト最後の日本展示に基づいて展示されていたらしい。

フィリップ・フランツ・バルタザール・フォン・シーボルトさん。医師で博物学者ですね。『日本』、『日本植物誌』等を出版し、日本をテーマとした博物館展示を構想した人。当時のヨーロッパでは、ヨーロッパ以外の地域の民族やその文化への関心が、王侯貴族のみならず市民の間でも高まったそうな。

死後。ミュンヘンで開催された最後の日本展示を長男アレクサンダー・フォン・シーボルトが残した目録を元に復元的に再現したのが、今回の展示の目玉。
日本展示は、ライデン、アムステルダム、ヴェルツブルグ、ミュンヘンで行われたそうな。

シーボルトさん。1796年２月17日にヴェルツブルグの医学部教授の長男として誕生。ヴェルツブルグ大学医学部に進学。博物学者エーゼン・ベック等の薫陶を受け、博物学に関心を寄せる。1822年。自然史研究を行う為、オランダ陸軍に。1823年、出島オランダ商館付医官として初来日。この時27歳だったらしい。
因みに。お父さんは早くに亡くなり、叔父さんに育てられ、一応、大学を出て開業医にはなったらしい。でも、博物学をやりたくて、陸軍に行ったそうだよ。仕事は、商館のカピタンの健康管理だったんだけど、商館で通訳と交流し、日本の知識を得たそうな。

序盤は、シーボルトに関連した品々の展示。シーボルトの肖像画があったけど、優しそうな好々爺って言う雰囲気のおじいちゃんの姿だった。目元が笑ってるし。その反面、日本人が描いたらしいシーボルトの肖像画が酷い！（笑）　鼻が異常に高くて「天狗かよ！」みたいな顔で、悪意ねえか？って思った。でも、当時外国人を見慣れていない日本人には、きっと、こう見えたんだろうなぁ。

川原慶賀が描いた『江戸鳥瞰図』があった。浮世絵師の鍬形蕙斎の版画“江戸名所之絵”を忠実に模写したものらしい。でも元絵と比べると、富士山がハッキリ描いてないよね？

1823年８月。シーボルトは日本の調査を開始するが、外国人の行動は厳しく制限されており、薬草の採取くらいしか出来なかった。しかし、それから３年後。商館長の伴として江戸へ随行。前述の川原慶賀を同行させたらしく、その道中、富士山や水車、水路などを描かせた。展示には、『エトシナカワ（江戸品川）』があり、それは品川宿の様子だった。飯盛女が張り店におり、道行く人がそれを見ている様子。飯盛女は、給仕する女の人だけど、女郎でもあるんだよ。防水用の桶も細かく描いていたので、記録用なんでしょうね。

そして、これは有名だけど、そこで、日本人女性タキと出会い、所謂夫婦生活が始まった。おタキさんって、その時16歳だったのね！因みに、元々は、シーボルトの身の回りを世話する女の子として来たらしい。シーボルトとタキの間には、イネとういう子供が生まれる。彼女は、西洋医学を習得した最初の女性医師になったそうな。『おたき肖像』があった。『日本』からの図版で、元はオランダの画家に描かせた物らしい。キリッとしてるけど、優しそうな女性だった。『イネの肖像』は、前述の川原が描いた物。女の子でも髪の毛を結構刈っちゃうんだな・・って、変なところを感心した。イネちゃんの顔立ちは、男の子っぽいかも。因みに、着てる羽織に、家紋の代わりに、シーボルト家の紋章が描かれている。

1828年。ここで、あの有名なシーボルト事件が起こる。幕府天文方の高橋景保らからの禁制品の不法入手が発覚。シーボルトは国外追放、再渡航禁止の処分を受けた。

急にコレが起こったからか、シーボルトからイネ母子に宛てた書簡から、その時の心配の様子が分かる。母子の生活を案じ、金製の指ぬきを送ったりしている。欄外に『オマエヲシトル（お前を慕っている）』と書いてあったりするらしい。コレ、ドイツ語（よね？）で書いてあって、『シーボルト発其扇宛和文書簡』という、カタカナで翻訳された手紙もあった。どうやら文面はたどたどしいので、シーボルト自身の物らしい。でも、筆跡は別人。シーボルトが音読したのを誰かが書き写したのだろう。おタキさんは、ドイツ語は読めなかったのかな？ここでも、母子の心配をしている。因みに、其扇＝おタキさん。

シーボルトは帰国後オランダの外務省の対日外交担当顧問になる。日蘭友好通商条約が結ばれ、追放処分が解かれ、1859年にオランダの商事会社顧問として再来日。結構経ってから再来日してるよね。31年後か。そして、日本での調査再開。1862年に帰国。収集品は後の民俗学博物館の中核になる。再来日した時、おタキさんとイネには再会出来たのかな？特に説明には書いてなかったケド、気になった。

『日本からの公開状』。シーボルトは出島に印刷機材を持ち込み、これは、そこで作った小冊子。12歳の息子アレクサンダーも載っている。彼は、身の回りの世話と調査収集の手伝いをさせる為、シーボルトと一緒に来日したそうな。イネの腹違いの弟よね？

『鳴滝の家屋模型』　1824年（強制追放前な）。シーボルトが中山作三郎所有の別荘を購入し日本人の門人を集めて講義を行った家屋の模型だそうな。精巧に作ってあって、ミニチュアの家ですよ。板絵までちゃんと描いてあったし、障子も貼ってあった。引き戸などの細工も細かい。かつては、模型内部に調度品もあったらしい。これ、シーボルトが作らせたのかな？
ここで、西洋医学を教え、日本人医師達を助手とし、日本の調査も行ったらしい。歴史、地理、植物、鉱物あらゆる物を調査していたそうな。

そこから誕生した植物学者『伊藤圭介肖像』があった。シーボルトの元で、植物学を学び、近代的な植物学の創始者になった人。手に植物を持ってる姿で描かれていたのがツボ。

ここでは、『薬品応手録』が面白かった。ヨーロッパから輸入されている薬品と日本で入手可能な代用品を高良斎が和訳した物。ドイツ語（かな？）と日本語で書かれている。これがあると、どの薬で代用出来るか分かるってコトよね？へぇ～。

話をシーボルト本人に戻す。
シーボルト『日本』刊行。日本の地理、歴史、風俗、人種、言語、動植物の本。1832年に刊行開始。自費出版だった為、資金難になったのか、1851年に中断したまま未完になってしまった。
その『日本』の扉絵の原画が不思議だった。猪に乗って中空を飛び、弓を構える武者。魔物を退治する侍。でも、魔物が西洋の魔物チックなんだよ。ボスが描くような魔物。魔物は豆まいて退治してるみたいだし（節分？）。何で、猪に武者が乗ってるのかなぁ？(^_^;)　他、周りには、扇など、日本的な物が描かれている。

次に出てくる『日本動物誌』と『日本植物誌』。日本植物誌は1835年～1844年で刊行。ツッカリーニとの共編。10分冊で刊行された。シーボルトの没後、ミクエルが続編を刊行した。
『日本植物誌』からは、ヤマブキとニワウメの図版が展示されていた。黄色のヤマブキ。発芽の様子（かな？）も描かれている。ニワウメは赤い実と花。
『動物誌』は、研究助手を務めたハインリッヒ・ビュルガーが集めた動物標本等が元になっている。1833年～1850年まで刊行。甲殻類、哺乳動物、鳥類等と分冊されている。今回は、甲殻類の展示で、デカイエビが鉛筆画でスケッチされていた。エビ表面のボコボコまで細かく描写。

で、シーボルト事件に発展した地図の展示も。世界地図の上に日本を正しく描くというのが当時の目的だったらしく、特に北方の情報を得るのが大切だったらしい。
シーボルトはどうやら、日本図を写していたらしいのだが、今回この地図の写しがシーボルト関係の施設から発見され、「写してた」説が証明されたらしい。今までも「どう考えても、精密な地図見てないと、これ、描けないよ？」という地図があったから、写しがある説はあったらしいのだが、今回それが立証された形になった。
それが、『伊能特別小図写（西日本）』。天文方の高橋景保がシーボルトに渡す為作ったカナ書き伊能特別小図の写し図。高橋は西洋の情報が欲しかったので、シーボルトとの交換条件に合意して、これを渡したらしい。取引したってコトね。
他、『蝦夷図写（樺太部分）および唐太島之図写』、『蝦夷図写』もあり、どちらもかなり精密。蝦夷～は、地図番号がふってあり、地名表と見比べられる。蝦夷～は、千島に関する地理情報。シーボルトは、アイヌの資料を1826年、最上徳内に面会の上、入手したそうだ。最上徳内の肖像画の展示もあった。厳しそうな人ではあったかな。

コレがあったから、国外追放だったのだが、結果、シーボルトは写しは持って来ていた・・ってコトなのよね。

前述通り、シーボルトは、コレクション展示をライデン、アムステルダム、ヴェルツブルグ、ミュンヘンで開催・。ライデンは、シーボルトの自宅で公開したらしい。

『オランダ王立日本博物館案内』　シーボルト第１日本コレクションは帰国直後の1831年にオランダ政府の購入が決定したが、財政難で実行出来ず、1838年、４年分割で代金を払うも、今度は展示する建物が見つからなかった。シーボルトは自宅にそのまま展示。これは、その時の案内パンフレットらしい。

1863年。第２コレクション展開催。1607点で構成された。展示会は１人50セント。余剰で日本にオランダ学校を設立するという希望も認められた。その旨を書いた『アムステルダム産業振興協会秘書発シーボルト宛書簡』も展示されていた。

シーボルトは、熱心に日本民族博物館を作りたがった。『マックスシューレの外観図』があり、当初、この一部に日本博物館を作るつもりだったらしい。また、バイエルン公国ルードヴィッヒⅠ世宛書簡には、熱心に「日本博物館を設立してくれ」と頼んでいた。残されたコレクションは、1874年にバイエルン政府により買い上げられてはいるらしい。これが元になり、民俗学博物館が出来たのだが、その前に、シーボルトは亡くなってしまい、出来た博物館を見るコトは叶わなかったらしい。
個人的に、日本に興味を示した、ルードヴィヒⅡ世にも頼んでいたのがツボ。白鳥城（ノイシュヴァンシュタイン城）を建てた、美形のホモの王様ね。Ⅱ世は、きっと、日本好きだよ（笑）。

で、今回、アムステルダムで展示された様子を再現したスペースがあった。『日本の宗教』って言う展示名だった。これは、日本資料展覧会の雑誌記事が残っていて、それを元に復元したらしい。
これが、まぁ、日本人の目から見ると不思議。花鳥画が描かれた金地の衝立の前に、中央に阿弥陀様、右に器を持って、ちょっと前かがみの観世音菩薩、それと対になるように左に勢至菩薩。麒麟の香炉や、誰だか分からない(^_^;)僧形坐像。宇賀神っぽい蛇体の弁天様。デカイ灯籠も飾ってある。衝立の前に置いたのは、演出かららしいんだけど、「これ、日本の宗教かな？」ってちょっと思うよね(^_^;)。日本人の目から見てエキゾチックに見えてしまう。

で、ここからが、前述通り、ミュンヘンで開催したシーボルト最後の日本展示に基づいて展示した日本の様々な物の展示。
まぁ、本当に色々あったよ。胃薬や漢方薬や、歯磨き粉まで。銅製の卵焼器が、今と同じ四角かったのに、ちょっと感動した。江戸時代から、こんなのあったんだねぇ。アイヌ関連から、僧侶の帽子から。興味を持った物をピックアップしてみた。

『かるた』があった。デザインやルールが独自で、シーボルトも注目していたそうな。

『商家模型』家屋のミニチュア。幕末～明治期の外国人に人気の物だったらしい。暖簾がかかった家。人が中に３名いる。反物があるので、反物屋なのかな？

やたら、麦わら細工があったのも目を引いた。綺麗だったし。麦わら細工は、城崎と大阪の物があったそうな。『石畳文小箱』　麦わらの小箱なのだが、買った店の包み紙までご丁寧にそのままになっている。光沢のある表面。つやつやしてる。
『玩具　鼠』　大森細工というらしい。小さな黒茶の鼠。東海道を行き交う人の土産物だったそうな。カエルもあった。

『燗銅壺』　野外で酒の燗に用いる銅の壺。炭を入れ、水を注ぎ、炭の熱で沸かした湯の中に酒を入れたちろり（とって付きの円筒形の容器）を入れる。

『木材見本』　栗、銀杏、樅、屋久杉等の木材。こんな物まで？！と思ったら、シーボルトの目的の一つにヨーロッパ人が輸入するに値する産業・工芸品、原材料や様々な技術による製品まで多彩に紹介するコト・・というのがあったらしい。なので、原材料の展示もあったと。

『卵形独楽／卵形入れ子合子』　入れ子の合子。マトリョーシカみたいで可愛いの。小さいなぁ。日本人、小さい物作るの本当に得意よな。

『漁鯨之図』　漁の方法を詳しく紹介した絵。シーボルトは捕鯨にも関心を寄せていたそうな。今は捕鯨って海外では悪いイメージあるけど、この時は、そんなコトはなかったんだろうな。

『釣瓶形虫籠』　滑車に２つの虫籠が結んである。蛍、鈴虫等を売る虫売りが江戸にはいたそうな。

『房楊枝』　シーボルトのこんな物まで！シリーズ（笑）。ようは、江戸時代の歯ブラシ。良く、歌麿の描く美女が、枝みたいなの持って歯を磨いてるよね。あれ。私、初めて見られて、ちょっとテンション上がる（笑）。柳などの木で作る。片側の先の端を叩いて繊維を房状にする。柄の部分はヘラ状で、舌苔を削ぎ落とすのに使う。

で、突然現れる、黒漆に螺鈿細工の綺麗なスマホケース・・・。ん？スマホケース？これ、オーパーツじゃん！って思ったら、コレ『花鳥螺鈿嗅ぎ煙草入』なんだそうです。虹色の螺鈿細工。鳥が枝にとまる姿。嗅ぎ煙草入は19Ｃ当時の代表的な輸出品目だったらしい。シーボルトは日本の漆工芸を、素晴らしい物と認めていた。「こんなに漆工芸が素晴らしい国はない。」と言っていたとか。でも、コレは見れば見るほどスマホケース・・・(^_^;)。

シーボルトは何でも集めた。高級品から普及品まで何でも。

『蝶牡丹螺鈿東海盆』　東海盆は、琉球王朝時代に客人をもてなす料理や神仏への供え物を盛りつけた蓋付の器のコト。牡丹と蝶が描かれている。琉球の物なのだが、どうやらこれは長崎の物らしく、長崎でも制作されていたらしい（琉球に売っていたのか？）。

『鉄線蒔絵灯籠形弁当箱』　デカイ灯籠の形をした弁当箱。「やりすぎ！」って思ったら、隣りのお兄さんも、一緒に来ていた彼女らしき人に「コレ、やりすぎだろう！」って言って笑っていた。屋根が外れて、中央が両側に開き小皿を収める形式らしい。周りには鉄線が描かれる。弁当箱は、他にも、『船形漆塗弁当箱』もあり、「当時の日本の金持ちは、一体、何を競ってたんだろう？」って思った（笑）。船形～は、屋根の部分が酒を注ぐ容器になるのかな？

『魚形蓋物（鰹）』　酒宴で使う魚形の蓋付容器。他に鯛の形もあるらしい。アムステルダムの手引きには、“青いものはｓｅｂｉ（マグロ）で、それを生食す”とあるらしいが、コレは鰹の間違い。

緑の漆塗りの庶民的な器が綺麗だった。緑の漆って珍しくね？と思ったら、当時は、緑の漆が流行していたんだそうな。

急に太刀が出て来て驚く。『黒石目塗桐紋散太刀（将軍家茂拝領の刀）』　シーボルトが家茂から贈られた太刀。刀かけの前面には雛の意匠。サイドに太鼓の上の雄鶏と雌鶏が寄り添う図が。これは、閑古鳥。元々は戦に使う太鼓の上に鶏が乗るくらい世の中が平和って意味なんだよ。天下泰平って意味なの。今は、「店にお客がいないコト」を閑古鳥って言うよね。

『碇夫婦岩文法被（長崎くんち衣装）』　朱色のド派手な長崎くんちの法被。長崎の裕福な子供が着ていた物らしい。夫婦岩に、本当に立体で金の注連縄がかかっていたよ。他、黒別珍のもあった。

『花車蒔絵香割道具箱』　聞香用に沈香等の香木を切る為の物。大工道具のミニチュアと息子のアレクサンダーは勘違いしていたらしい。確かに、ミニのこぎりや、ノミ、木槌などがあるから、香道を知らなかったら、そう思うかも。

『花鳥螺鈿鍼箱』　こんな物まで持って行ったか！シリーズ。鍼治療の道具のセット。鍼もちゃんと入ってる。箱自体は、元は嗅ぎ煙草入れだったらしく、それを鍼入れに直した物らしい。

『塗漆雲鶴竹鶏松鶴文染付蛸唐草文蓋付壺（有田焼）』　長い大層な名前なのだが、元は梅干し壺だったらしい。それに漆塗りを施した物。周りは唐草文様。梅干しは五升入りだったらしい。蒔絵の梅干し壺は珍品。中央に金で鶏が描かれている。シーボルトさんは、中身の梅干しを食べたあとの、壺だけ持って来たんだろうか？

『色絵牡丹鳳凰文茶銚（京焼）』　コレ可愛かったな。小さな急須。牡丹と鳳凰が描かれている。蓋には、牡丹に梅。小さくともかなり豪華に見えた。シーボルトのコレクション、急須は７つもあるが、抹茶茶わんは１つもないらしい。何故？茶道には興味なかったのかな？日本に来る外国人が１番目を引きそうな文化なのに。

『獣面』　狐面の一種。耳が植毛で出来ていて、これは珍しいらしい。何かのお祭りに使ったのか？それとも民芸品の類？

『三浦大介図』　川原慶賀の描いた絵。構える武者と馬上の白装束の男。川原さん、こんなちゃんとした絵も描くのか！（失礼）　川原はシーボルトの専属の絵師。1842年、長崎追放にあってしまう。この絵は、田口に改姓しているので、晩年の作品らしい。

『備荒草木図　乾』　清庵が飢饉の際に食用出来る山野の植物の絵と調理法や注意点を纏めた救荒書。今回は、蓮を描いた部分が出ていた。蓮根だね。

『改正日本興地路程全図　増修定本新分郡界』　江戸後期の日本で普及していた日本図。シーボルトは文化８年版を元に、翻刻して『日本』に掲載した。付箋の跡も２ヵ所あり、説明文を付けたのではないか？とのコト。（お忘れかも知れないが、これ、博物展示で人々に見せてます）

『人物画帳』　第１回の来日の際、川原に書かせた109人の庶民の姿の画。紙本彩色。水汲みする女の絵が展示されていた。余白にはオランダ語、ドイツ語、ローマ字表記の日本語で絵解き解説がある。他の部分はタブレットのような物があり、それで観られるようになっていた。熊の肝売りや、集金人、虚無僧・・・そして何故か、泥棒。泥棒も庶民の姿なのか？(^_^;)

アレクサンダーの目録には全てのケースの分類名が記されているワケではない。なので、良く分かっていない部分もあるらしい。

『銀札（二朱銀）』　二朱銀の紙の札。掛札ね。外国人は長崎でそのまま日常取引に使用できるが、日本人は銀貨と交換する必要があった。なので、日本には殆ど残っていない物らしい。

『石灰町踊行烈』　長崎くんちに奉納する演じ物案を描いた物。今回は、太刀を持つ赤い衣装（くんちの法被？）を着た少年の絵が出ていた。長崎関連が多いのは、出島関係なのかな？

43年間日本を研究したシーボルトは、1866年10月18日、ミュンヘンで死亡する。シーボルトは最後まで、再び日本に行きたいと願っており、『シーボルト発長男アレクサンダー宛書簡』にも、「ぜひ日本に再訪を」とアレクサンダーに伝えている。これは叶わなかったのだけど。
最後の頼みとフランスの派遣団へ同行を頼むも、これも断られてしまったんだって。

最後の望みは叶わなかったけれど、民俗博物館は出来て、今は、こうやって、不思議なコトに、現代の日本人が、シーボルトが残した江戸期の日本の物を見て感心したり、「何だコレ？」って思ったりしています。それで、シーボルトさん、満足に思ってくれないかな？それとも、やっぱり、日本に来て日本で死にたかった？

お土産は、ポストカード４枚。あと、母に頼まれて、墨田区観光協会（江戸博に入ってるのだ）で、お菓子を買う。

シーボルトに興味がある人、江戸期のオモシロ物が見たい人、あと、古民具好きも楽しめるかも知れません。

11月６日までやっています。

おまけ。