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2016年10月04日23:37

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「野獣死すべし」 「レッドタートル ある島の物語」 「汚れた英雄」  「怒り」 「ある天文学者の恋文」

「野獣死すべし」 ’80 監督:村川透

「蘇える金狼」と並んで松田優作の初期代表作なのかな?
どちらも初めてまともに観たけれど
「蘇える金狼」は「007」的当時の男のダンディズム(?)を証す
車,銃,女,スーツ,時計,鍛えられた肉体…といったアイテムを
日本人が携え得ることを松田優作が画として示したんだなぁ…
などと思って観たけれど、
それがいかな松田優作と言えども
まだ何となく日本人の身の程に合ってない感じと共に
“当時(70年代)”を強力に印象付けているように思う。
「野獣死すべし」は
松田優作がキャラ作りすぎで 気持ち悪いくらいなんだけど
むしろその“作りすぎ”が面白くて笑っちゃう。
今観るとおいおい…と色々突っ込みたくなるが、
70年代の劇画みたいだよね。
暴力も狂気も全部ベトナム戦争のせい…みたいなところが。
カットが何気に長くて ちょっとイラッとするのも
70年代だなぁ…って感じがする。
「〜金狼」にしろ「野獣〜」にしろ
松田優作って有名大学卒のインテリ―って役 演ってるんだねー(笑)。





「レッドタートル ある島の物語」 ’16 (仏・日)

監督:マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット

’16 カンヌ国際映画祭「ある視点」部門 特別賞

新海誠は『言の葉の庭』で“雨”の表情を摑まえようとしていたが、
本作は“水”、いや圧倒的水量がもたらす“海”の質感が
アニメーションにより試行されているのだ。
浮力のある“水”が人やカメやカニや筏を浮遊させ
浮遊が許すスピードで島の時間が流れ
人もカメもカニも
海に生かされ 海と戯れ 海に抱かれて死ぬ。
赤いウミガメに愛された男の物語である。





「汚れた英雄」 ’82  監督:角川春樹

角川春樹の映画を初めて観た。
正直 映画には期待していなくて
今を時めく「真田パパ」草刈正雄の若い頃を観ておこうかな…と。
この前に観た『復活の日』の彼が
ディーン・フジオカにそっくりだったのに驚いたのだが
(ディーン・フジオカが草刈正雄の若い頃に似てるんだけどね)、
やっぱりいい男よね(笑)。
で、そのいい男が思いっきりカッコつけてるわけで
それはいいのよ、そういう映画なんだから。
でも、肝心のバイクレースの面白さが伝わらない。
新谷かおるの「ふたり鷹」はレースが面白かったのになぁ…
レースのかけひきやメカニックのスキルなんかがドラマを作るはずが
その辺皆無。
まぁ35年経っているとはいえ
ロン・ハワード『ラッシュ/プライドと友情』の演出や編集がいかに優れていたか!
と、思わずにいられない。





「怒り」 ’16

監督・脚本:李相日 原作:吉田修一 撮影:笠松則通

キャラの情動を正しく演出し観客の情緒をかき乱すスキルの高さは
さすが李相日。
東京,千葉のエピソードはよいのだが
肝心の沖縄のエピソードが弱い。
タツヤがイズミを護るために頑なに犯行の理由を黙秘する―
その幼いイノセンスに届けていない気がする。
軽度の知的障害のあるアイコのキャラと
演じた宮崎あおいの演技が映画の出色だと思うが、
東京,千葉のエピソードは小説的に実に上手くて
この二つと比すと沖縄はキャラが10代ということもあって話が弱い。
しかし沖縄のエピソードが犯罪の解決に繋がるわけで
お話の弱さを補完するのが“幼いイノセンス”なのだと思う。
映画は尺の問題もあって沖縄のお話の厚みはかなり削られてしまっていて
原作でも見えにくい(というか 巧みに隠されている)タツヤの心情を
追う余裕がなくなってしまっているような気がする。
しかし完璧な脇役であったタツヤこそが“怒”に対峙するわけで
目立たない地味な脇役タツヤを目立たせないようにしながら
その幼いイノセンスに導くのが 今一つ。
それが残念。
これは真犯人は誰か?という話じゃないからね。





「ある天文学者の恋文」 ’16 (伊)

ジュゼッペ・トルナトーレの新作。
ラブストーリーとして なかなか面白いのだが、
なんと言うか…韓国映画,ドラマのそれのようなのだ。
企図されたラストに向って
かちりかちりとステキなピースが嵌って行く…そんな構成が先に窺えて
ロマンチックで知的で大人の雰囲気なのが上質な少女マンガみたいだが
お話の厚みに欠ける。
ただの不倫じゃん…と思ってしまうもの。
不倫の後ろめたさは措いて
ロマンチックな喪失譚にばかり夢中にはなれないよ。
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