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2016年08月30日22:36

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電気の次の動力源は何になるのか。本書の紹介する「磁気の時代」は興味深い未来だ。>

4.エネルギーの未来

本書は1900年代の1つの賭けを紹介する。2人の男が将来の動力源を予想したというものだ。1人はヘンリー・フォードで、彼は石炭(蒸気機関)の次には石油の時代が来ることに賭けた。もう1人はトマス・エジソンで、彼は電気自動車の実現を予想した。

その後を知る我々は、エジソンの方がより遠い未来を見通していたと評価できる。では電気の次の動力源は何になるのか。本書の紹介する「磁気の時代」は興味深い未来だ。


近未来:太陽光発電のコストが下がる

太陽光発電のコストが10〜15年ほどで石炭を下回る。これは発電効率の向上よりも、建設コスト削減や配置面積拡大、送電ロス低減によるところが大きい。
風力発電は成長するが、発電量全体に占める割合は小さいままだ。
電気自動車の次として、燃料電池車の開発も進む。

原子力発電は、第三世代の濃縮ウラン製造法(レーザー濃縮法)がコストを大きく下げるが、これは政情不安国への核技術拡散にも繋がってしまう。


世紀の半ば:温暖化が深刻化する

地球温暖化により熱帯病が北上する。河川の氾濫はベトナムのメコン川デルタ地帯、エジプトのナイル川デルタ地帯、そしてバングラデシュで深刻で、特にインド・バングラデシュの国境が最大の紛争地帯となる。
現在この対策として、二酸化炭素の液化埋蔵や、二酸化炭素吸収生物の創造など、温暖化対策技術が種々提案されいる。コストがボトルネックになっているものの、世紀の半ばには解決されているかもしれない。

世紀の半ばには核融合の商用化準備が整う。


世紀の終わり:宇宙太陽光発電と磁気の時代の到来

宇宙太陽光発電が実現する可能性がある。これは数百個の人工衛星で太陽放射を吸収し、エネルギーをマイクロ波放射で地球へ送るものだ。衛星1基で50-100億Wの発電ができ、1kw/hあたりのコストも安い。1基の大きさは約1.5km、費用は約10億ドル(原発一基分程度)となる。課題は打ち上げコストと送電ロスだが、打ち上げコストは今世紀末までには十分下がると予想される。

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宇宙太陽光発電に欠かせないワイヤレス伝送では三菱重工が開発を進めている
(画像:三菱重工)

もうひとつのエネルギー革命は、常温超伝導体による磁気の時代の到来だ。本書によれば、車や列車に使われるエネルギーはほぼ全て路面との摩擦に打ち勝つためのもので、磁気の時代になればエネルギー消費が大きく削減される。磁気モビリティは真空チューブ内で走らせれば6500km/hを実現できる。
また、現在は発電所の発電電力の30%が送電ロスで失われているが、常温超伝導体はこのロスを減らすこともできる。


21世紀の成長もエネルギーの未来に支配される(私見)

本書によれば、20世紀の急速な文明の発展には2つの要因があるという。安価な石油とムーアの法則だ。ムーアの法則に代表される指数関数的成長の成立について、ケヴィン・ケリー著『テクニウム』(2014)では、小型化や効率化によるエネルギー依存の低下がこれを実現していると指摘する。すると本書が挙げる「安価な石油」と「ムーアの法則」の2つはともに、「エネルギー供給量増加」と「エネルギー依存低下」というエネルギーに関する要因に言い換えることができる。
■テクニウムの自己増殖がもたらす未来(『テクニウム』書評3/3)(希望は天上にあり,2015/8/17)

エネルギー供給は21世紀においては、成長以前に文明の死活にもかかわり得る。2050年ごろには世界人口は100億人まで増加し、エネルギーや水・食料の不足が予想され、これは深刻な紛争を勃発させるからだ。この点で本書が予想するエネルギーの未来は、世界史の未来を占う上でも重要になる。

今のところ現実的な解決策は核融合の普及だろうか。核融合はかつては「夢の未来エネルギー」にすぎなかったが、ドイツの核融合炉ヴェンデルシュタイン7-Xの起動など、実現に向けて着実に進んでいる。
一方、核融合や自然エネルギー利用、宇宙太陽光発電はいずれも供給量増加の技術だが、摩擦を減少させて運動の効率を最大化する「磁気の時代」はアプローチが異なる。これは「エネルギー依存低下」に分類できる技術で、次なるエネルギー革命として期待は大きい。もしかしたら「磁気の時代」の技術も、ムーアの法則のような指数関数的成長をもたらすかもしれない。

ところでエネルギーといえば忘れてはいけないのが石油だ。石油は今も世界のエネルギー需要の大部分を担い、紛争の原因となっている。その未来について本書は次の言葉を紹介していた。




石油時代が終わったのは、石油がなくなったからではない。だから石油時代も、世界の石油が枯渇するよりずっと早く終わるだろう。

アハマド・ザキ・ヤマニ


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー以上転載ーー
http://hiah.minibird.jp/?p=2270#2

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