相方は、台高山脈を繋げたがっている。そこで今回、高見山から伊勢辻山まで繋げようということになった。
いろいろ記録を見て、杉谷から林道を少し行って、コウベェ矢塚に登り、伊勢辻山に行き、そこから高見山に行くという計画を立てた。
あまり人が入っていない所だ。道迷いの可能性も高い。
時間に余裕を見て早く出発しようということになった。
前夜、登山口の杉谷で車中泊した。
4時半に目が覚めると、小雨がぱらついている。ちょっとテンションが下がる。
5時にアラームをかけていたが、6時まで寝てしまった。
「やっぱり、無難な大峠からのピストンにしよう。」
起きると相方が言った。大峠から伊勢辻山の往復は4時間、大峠から高見山の往復は1時間半かからない。
迷うところも少ないだろう。
車で大峠まで行くことにした。
大峠への道には徐々に雪が現れてきた。スタッドレスとはいえ、雪道の運転はなれていない。
相方が慎重に運転する。
「今日の核心部かもしれないね。」
大峠に着く。10cm近い積雪がある。
「もっと雪が降って、車を出せなくなったら大変だよ。」
「うん、伊勢辻山に行くのは止めて高見山だけにしよう。」
「それならたかすみ温泉から登ろうよ。たかすみ温泉からは登ったことがないの。」
ということで、すぐにユーターンすることにした。
たかすみ温泉の駐車場で仕度をする。
前に和歌山ナンバーの車が止まった。中から女性が一人出てきた。
「和歌山のどちらからですか?」
「岩出町です。」
「私は那智勝浦町です。山で和歌山の人に会うのは珍しいんですよ。」
駐車場を8時過ぎに出発した。
曇り空だが、昼頃からは晴れる予報だ。山の雪はどれくらい積もっているんだろう。
途中で緑色の毛糸の帽子が落ちていた。
「きっとさっきの和歌山の人のだわ。山頂でこの帽子がなかったら寒いでしょうね。」
帽子を拾って持って行くことにした。
高見杉に着く。
樹齢700年以上の大木だ。
高見杉を過ぎたあたりから雪が出てきた。
時折青空も顔をのぞかせる。
杉谷との分岐のあたりから雪が多くなるが、先行者のトレースがある。
周囲には目印になるテープがあまりない。トレースがなかったら、迷わないで歩けるだろうか。
山頂に着く。
祠にびっしり雪や樹氷が付いている。
屋根の雪は今にも落ちそうだ。
時折雲が途切れる。
周りの山々も雪や樹氷で白く輝いていた。
雲が途切れると、樹氷と青空のコントラストが美しい。
避難小屋には二人いた。
男性は小峠から登ったそうで、この人がラッセルをしてくれたそうだ。
「多い所は膝まであって大変でしたよ。」
もう一人の女性はたかすみ温泉の駐車場で会った人だ。帽子を渡すと喜んでくれた。
私たちはラッセルをしてくれた男性にお礼を言った。
二人が下山し小屋でお湯をわかしていると、大峠から登ったと言う年輩の夫婦が来た。
ラジオを付けている。うるさい。
登山中なら熊避けと考えられるが、小屋でつける必要はないだろう。
「何かラジオを聞く用事があるんですか?」
かなり迷ってからそう聞いてみた。
「あっ、消しましょうか?」
「ええ、お願いします。」
そのご主人は奥さんが「寒い寒い」と言っている隣でビールを飲んでいる。
もう一度景色を眺めてから下山する。
風が強い。
今日の体感温度はかなり低かった。
杉林に入ると、木の上から雪がバサバサと落ちてくる。
大きな塊が頭にぶつかる。寒いが、どんどん雪は解けているようだ。
初めの計画とは、大きく違ってしまったが、思わぬ雪山を楽しめた。
また、雪の心配がなくなったら、伊勢辻山まで歩きに来よう。
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