無頼豚ビルの4階にボクの会社があることは、世間ではあまり知られていない。
社員はボクとぐーちゃんだけだ。
5階の倉庫から、ぐーちゃんの鼻歌が聞こえてくる・・・。
「わたし〜がぁ、おじさんになったなら♪(もう、なってるよ!)」
彼は、この曲を歌うと、若かった頃の自分を思い出して、ついつい胸がキュンとなる。
「お〜いアニキぃ、そろそろメシにしようかぁ?」
おいおい、まだ始まって10分も経ってないぜ。
「あれ!?さっきいったばかりなのに、もう漏れそうな感じだぞ。これってさ、頻尿って言うんだってよ。アニキ知ってた?」
いいや、ボクはまだ若いから、その手のギャグには乗らないのだ。
それはそれとして、彼にとっては切実な問題なので、先日、ムーニー大人用を送っておいたのだが、ちゃんと使ってくれているのだろうか?
「若くはなあいわ〜もう昔のよおに〜♪」
また、ぐーちゃんが歌いだした・・・庄野真代だったかな?いい歌だ・・・。
この会社の事業内容は、たいしたことはやっていない。
ボクは手作業で、昔のアルファードの音源をCDにしたり、再結成ライブのDVDを2枚組で販売しているが、一年に2〜3枚しか売れてないから、儲けにはなっていない。
田園都市線の市が尾駅前には、ショッピングプラザ・アルファードがあるけど、みんな知らないだろうなあ。
まあ、早い話しがスーパーなんだけどさ。お湯の出ないポットとか、ブタ型ゆたんぽが好評発売中だよ。
最近は、ぐーちゃんをおじいさんタレントとして、CM製作現場に送り込んでいるのだが、これが、けっこう当たっている。
普段はフニャフニャな彼だが、カメラを前にすると、シャキーンとするから不思議だ。
大きな声では言えないが、強烈な放屁癖があるので、ガスピタンを飲ませたうえで、お尻の穴にはコルクで栓をして、ムーニーをはかせてあるのだ。
最近のCMでいえば、ポカリスエットで出てきた、あの重厚で柔和な表情は、コルクの栓で安心しきっているからこその笑顔なのだ。
実は、先日、事務所のテーブルの上に、あってはならないコルクの栓が、ころがっていた。
その日、ぐーちゃんは、新しいCMのオーディションだった。
彼のブログには、「二日後に楽天の・・・いや、落選の通知がきた」と書いてあった。
やっぱり、コルクしてないとダメだよねえ。
来年は、なんとかしてトヨタ・アルファードのCMに使ってもらおうと、願っている。
「アニキぃ〜、ふんがふんが、グフッ、ぶおぶおぶお・・・・」
いかん!ぐーちゃんの主要部品が油切れのようだ。
彼には、時々、こうして、上質のえごま油を注入してやっている。
落ちついてきたら、シワシワなところにオロナイン軟膏を塗ってあげるのだ。
こうしたメンテナンスによって、彼は今も新品同様に光り輝いている。
(この物語は、現実と空想に満ちたリアル・ファンタジーです)
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