学習障害と言っても、症状や程度は様々で、前述のＡさんやトム・クルーズは比較的重度のものと考えられます。
現在、このように重度の学習障害については、専門機関もそれなりに充実し、様々なサポートを受けられるようになっており、仮にＡさんが少年時代が現代であったとすれば、人生もだいぶ違うものになったはずです。
一部の高校や大学の入試においても、入試問題を印刷ではなく音声で聞かせてくれるなどの配慮がなされるようにもなり、学習障害の認知度が格段に向上し、そういう子を何とか社会人として育てていこうという機運が盛り上がってきたことは非常に良いことだと思います。
ただし、問題はそれだけで解決するわけではありません。
専門機関などでトレーニングを受けられ、入試などの場面でもこうした配慮の受けられる学習障害は、Ａさんやトム・クルーズさんのように症状のはっきりした場合に限られ、大多数にあたると思われる軽度のものや、グレーゾーンのような存在は、引き続き同じような境遇に晒され、苦労の多い人生を強いられています。
うちの塾に来る、学習障害またはその疑いのある生徒さんというのも、文字がほとんど読めないようなことはありません。
ただ、普通に勉強ができない子とは明らかに違う特別な感覚が確かにあり、言葉で説明するのは難しいのですが、簡単に言うと、経験上「これは…」と感じさせるものがあるということです。
そのタイプの子にも様々で、計算はまずまずできても文章題はダメ、国語の漢字は得意でも文章を読むのが苦手、英語は難しい子が多いですが、基本的な文法事項や単語だけはできる子も少なからずいます。
一般的に言えることは、ものを単独で見ることはできるものの、文章題、文章読解、英語の長文など、繋がりを理解して進めていくような課題に難があることが多いです。
こういうお子さんは、小学校の先生などの勧めにより結構な確率で学習障害であるかどうかの検査を受けに行っているのですが、その結果はグレーゾーンと出ることが多いようです。
詳しいことはよく分かりませんが、検査は数値化されているらしく、ある数値を超えると学習障害と認定され、専門の機関に送られてトレーニングを受けたり、入試の特例を認められるなどの措置が取られるということで、要するにそれを１ポイントでも下回る結果になると何の配慮もされず、普通の学校の普通の生徒としてやっていかざるを得ないということなのです。
そうなると、どこのクラスにもいるいわゆる“普通に勉強のできない生徒”の1人となり、塾にも手助けを求めようということで、特にうちの塾のような地域の個別指導塾には、そういうタイプの子が来やすくなると考えられます。
〜以下次号に続く〜
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