前回までは、こちらが燃えつき型と呼んでいるタイプの勉強ができない子について考察して来ましたが、今回からは次のタイプである学習障害について書いていきます。
まず最初にお断りしておかなければならないのは、私は学習障害についての専門家でも何でもなく、あくまでも生徒を見て来ての個人的な経験を書くのであり、主観的な見解になる可能性が高いことを御理解頂きたいということです。
しかしながら、多くの生徒を指導する中で、普通に勉強ができない子とは違う感触を得ることは多々あり、これが学習障害いうものかと感じることが少なくありません。
序章でも書きましたが、1999年に文部科学省によって示された学習障害の定義を改めて書くと、「基本的には全般的な知能発達に遅れはないが、聞く、書く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである」となっています。
映画俳優のトム・クルーズさんが学習障害で文字が読めないということも先に触れましたが、最近ではテレビなどでも時々取り上げられるようになっており、その認知度が徐々に上がりつつあると思います。
先日も学習障害で大変な苦労をした方の半生を再現ドラマで物語る番組をやっていましたが、少しその方のことを書いて、学習障害がどんなものであるかを改めて知って頂くことにします。
Ａさんは、見た目は全く普通の少年で、友達と遊んだり、大人とコミュニケーションを取るのにも困難はなく、いわゆる勉強以外の一般的な生活を送るのに何の不自由もありませんでした。
しかし、Ａ少年は文字をよく読むことも書くことも上手くできず、小学校に上がるとテストでほとんど点数を取ることができなくなります。
元々人の話を聞くことは好きだったそうで、授業はしっかりと聞き、授業内で先生から指されると、“口頭”でははっきりと答えることができたと言います。
そういうＡ少年に、まだ学習障害についての知識の乏しい先生は、漢字のテストができないことを「漢字なんて100回ずつ書けば誰でも覚えられるの…」と叱り、努力が足りないのだと指摘していたそうです。
Ａ少年自身も、最初はそのように考えていたようですが、中学に上がる頃には、努力してもどうしようもない自分を諦めるようになり、学校で相手にされないために自らグレてしまったのでした。
その後社会に出ると飲食店(居酒屋)で働くようになり、お客さんのメニューをメモを取らずに覚えるため非常に大変だったそうです。
そんなＡさんが、大人になって自分自身は学習障害だったことに気付いた時、自分ができなかったのは努力がたりなかったわけではなかったことを悟り、涙が止まらなかったとのことで、その苦労は想像を絶するものであるように思われます。
Ａさんは今、大工さんとして働いているそうですが、このＡさんのような学習障害を持つ子供が、予備軍やグレーゾーンを含めると、ほぼクラスに１人位の割合で存在すると言われています。
学習障害の子供達は意外に多いのです。
〜以下次号に続く〜
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