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2015年02月22日23:56

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「おみおくりの作法」

本日は、ウベルト・パゾリーニの新作。
といっても監督2作目で
前作『マチャン』('08)は 思惟太は映画祭で観たから
一般公開されたのかなぁ…??
『フルモンティ』のプロデューサーとして有名な人です。
イタリア人でピエル・パオロ・パゾリーニとは親戚関係じゃないけど
ルキノ・ヴィスコンティは大叔父なんだって!!

で、本作。
泣けます! もう…滂沱の涙…でした(笑)。
韓国映画はずるい!と思いつつ泣くけど
これはね…
やられた!!って感じです。

いいですよ。
是非ご覧ください。





「おみおくりの作法」 ’13 (英・伊)


監督・脚本・製作:ウベルト・パゾリーニ 撮影:ステファーノ・ファリベーネ
美術:リサ・マリー・ホール 衣装:パム・ダウン
編集:トレイシー・グレンジャー,ギャビン・バックリー
音楽:レイチェル・ポートマン
m:エディ・マーサン,アンドリュー・バカン,キアラン・マッキンタイア
  ニール・ディスーザ,ポール・アンダーソン,ティム・ポッター
f :ジョアンヌ・フロガット,カレン・ドルーリー

’13 ヴェネチア国際映画祭 オリゾンティ部門 監督賞,国際芸術映画評論連盟賞
                  フランチェスコ・パジネッティ賞 最優秀作品賞
                  次の都市生活賞 映画賞


『フルモンティ』の製作者であるウベルト・パゾリーニが
08年の『マチャン』に続いて監督した孤独死を扱ったドラマ。
ロンドン ケニントン地区の役所の民生係ジョン・メイの仕事は
孤独死した住民の部屋に赴き 写真を探し 宗教を調べ 親族がいないか調査し
来歴や暮らしぶりから弔辞を書いて 葬儀のBGMを選択し
葬儀に列席し 遺灰を適切に処分する…こと。
誰も評価しない地味な仕事に
22年間コツコツと誠意を持って当たって来たジョン・メイは
役所の統合を機にクビを言い渡される。
最後の仕事となった“ビリー・ストーク”ケースに
ジョン・メイは心血を注ぐことになる…というお話。
仕事も地味だが、ジョン・メイなる中年男は
風采も地味なら暮らしぶりも地味で人生の精彩に欠けた寂しい人なのだ。
その彼が いつにも増して熱心に
ビリー・ストークの人生を調査する過程で見えて来る“人生の豊かさ”が
ジョン・メイ自身の人生を照らすことになるのだ。
『フルモンティ』がサッチャーの時代の失業問題が背景だったように
ここでもビリーはフォークランド戦争の空挺部隊の隊員であり
その心的後遺症が帰国後の彼の人生に影を落とすことになったことが判るし、
そもそも孤独死や無縁社会なるモチーフが極めて現在的な問題で、
前作『マチャン』も南アジアからの不法入国者を扱っていたわけだし、
パゾリーニという人はとびきり愉快で楽しい笑える設えの映画にも
きちんと社会問題を織り込むのを忘れない人のようだ。
しかもそれはエッセンスとして薫るだけなのだ。
映画はビリー・ストークの人生をたどることで見晴らせる
“人生の機微”を読むもので、
一見敗者のようなビリーの人生が その慎ましい豊饒さを現す時
ジョン・メイと共に観客も人生の意味に触れて
そっと微笑んでしまう。そういう映画になっている。
だからラストは衝撃で
意想外の結末と 意想外の感動にうろたえてしまう。
そうだった…!これは孤独死のお話だったんだ…と。
最後の日々を愛するネコと暮らした老女と
動物保護センターで働き やはり犬と暮らすビリーの娘ケリー…は
動物が彼女らの寂しさを支えている相似形だし
ジョン・メイの貧相な食卓と
フィッシュ&チップスの店の味気ない調理場…は
食の貧しさが人生の彩りをなくすことの喩になっているようにも見えて、
パゾリーニの演出は
ジョン・メイの身なりや100均みたいな安売りの店で買い物する様子…
などと共に、じわっと上手い。
エディ・マーサンは脇役としてしばしば登場する俳優だけれど
主演作は初めて。よい映画になってよかった!
彼の困ったような不幸な顔が 控え目だがにっこりほほ笑むものだから
優しい未来を想像してしまうじゃないか!(笑)
ケリー役は「ダウントン・アビー」のメイド頭ジョアンヌ・フロガット。
「ダウントン・アビー」といい本作といい
相当年配のおじさまに恋する役だよなぁ…とか思ったり(笑)。
社会問題を消化して見事な感動作に仕立てた
優れた映画だと思う。
万人にお薦めできる佳作である。
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