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2014年06月16日17:34

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イキウメ 「関数ドミノ」

イキウメのお芝居、「関数ドミノ」を見ました。
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安井順平という人は、何なのでしょう?こういう言い方はあれかも知れないが、前川知大氏は、『良い実験材料』を手に入れたと思えて仕方ないです。
いくら、脚本家が良い本を書いたところで、役者が演出意図を理解し、それを体現出来る技量がなければ、その脚本は『ただの紙に書いた文字』にしかすぎません。それに血肉を入れるのは、やはり役者の仕事なのだと思います。

おそらく、安井順平という人は、どんなコトでも出来、どんな高度な演技を求められてもそれがやれてしまう・・・そんな気がするのです。こうなると、劇作家・演出家としては、彼に、ありとあらゆるコトをやらせたくなるだろうなぁ〜・・・と。
安井順平氏は、読売演劇大賞の俳優部門を受賞したのですが、どうやら、ドストエフスキーを下地にして書かれた、安井氏の1人芝居の評価が高かったようです。私は未見。見たかったのだが・・・。

それでも、安井氏が芸人だと思う瞬間。重い台詞を、シニカルさを込め、何処か軽妙に、引っかかるように言える。これは、おそらく、芸人の質。本来怖いだけになりそうなシーンに、何処か笑いを加えて演技出来てしまう。そして、おそらく、シャカ・大熊氏辺りが「安井さん、ユニットコントやるから来ない?」と言えば、芸人としてこの人は舞台に立つんだろう。その辺が、やっぱり面白い。

『関数ドミノ』の劇評に、『芸人でもある安井順平が』と書いてあって、嬉しかった。『芸人でもある』。現在進行形で書かれているんですね。芸人でなければ体現出来ないシリアスさ。それを出せる安井順平氏は、無敵の役者かも知れません。
まぁ、普段は、喋るキチガイですケドねっ!(笑)

安井氏の背中がチラ見えするシーンがあるんですが、相変わらず白い!そして細い〜。ウエスト折れそうなんだもん(^_^;)。この人、太らないねぇ。

『関数ドミノ』は3回目の再演。前回の再演が2009年。この時も、安井氏は出演しています。このお芝居、この劇団の代表作なんだろうな。

※以下、『関数ドミノ』の感想を書きます。お芝居はまだ続いていますし、このお芝居はDVDになる可能性があります。そちらでご覧になる方は、ネタバレになる可能性がありますので、ここから先は、読まれない方が宜しいかと存じます。

それでは、ネタバレOKの方のみいらっしゃいまし〜。

イキウメ 『関数ドミノ』
作・演出/前川知大 
会場:シアタートラム
出演 安井順平(真壁薫・目撃者) 浜田信也(左門森魚・目撃者。予備校講師) 大窪人衛(左門陽一・事故時の歩行者。森魚の弟) 森下創(土呂弘光・目撃者) 伊勢佳世(澤村美樹・目撃者・看護師) 吉田蒼(平岡泉・目撃者。陽一の恋人) 新倉ケンタ(新田直樹・事故時の運転手) 盛隆二(大野司・目撃者。医師。真壁の中学時代の同級生) 岩本幸子(横道雅子・保険調査員)

ザックリ粗筋。
暗転の中、車の急ブレーキ音。粉々に砕けるガラスの音。 
冒頭、各々の自己紹介から始まる。「真壁薫。目撃者です。仕事?それ、関係あります?」 「澤村美樹。病院の看護師です。事故当時は、外に出ていました。事故の瞬間は見ていません・・・。」

とある地方都市。ここで不思議な事故が起きる。現場は見通しが悪い坂道。左門陽一は、電話をしながら横断歩道に立ち、風で飛んだ帽子を拾おうとしていた。信号は赤にかわっている。運悪くそこに自動車が。運転手の新田が気づいた時にはもう遅かった。と、その時、まるで、“見えない壁”が陽一を守るように、車の方が大破。助手席に乗っていた新田の妻はガラスに突っ込み重体。本来、事故に遭うはずだった陽一は無傷。

この原因不明の不思議な事故を調査すべく、保険調査員の横道が目撃者全員を集める。しかし、これと言った手がかりになりそうなモノは何もない。新田は「原因が解明しないと保険が下りない。僕の妻は、今も管に繋がれた状態なんだ。」と訴えるも、話は停滞し解決を見ない。医師の盛や、新田が帰ったあと、真壁という男がこんなコトを言う。「世の中には『ドミノ』という現象がある。」と。

“ドミノ幻想”。人には奇跡を使えるドミノという存在がいる。ドミノは思いの強さに比例して発動する。通常は「こうなれば良いな・・・」と言う願いなので、不自然にならぬよう、1年、数年、数十年かけて、その願いは成就される。しかし、強い思いは『ドミノ1個』と呼ばれ、まるで、1つのドミノが倒れて結果が決まってしまうように、その現象が現れる。それを人は「奇跡」と呼ぶ。
土呂「それは、神様みたいなものですか?」 真壁「まぁ、期間限定の神様ってとこよ。ほら、ここ3年くらい、俺、調子が良い・・・みたいな奴いるだろ?そいつは、ドミノの状態になってるってコトだよ。」

真壁は言う。「陽一の兄、森魚はその『ドミノ』なんじゃないか?」と。真壁「だって、アイツ、予備校で人気講師なんだぜ。今まで大した成果も上げてなかったのに、ここ1年でトップ人気の講師だ。」

最初は皆、まともにとりあわなかった。

しかし。真壁はある実験をしだす。土呂はHIVキャリアである。森魚と友達になって、土呂が、森魚にHIVキャリアであるコトを打ち明け、相談する。もし、森魚が強く「彼が治れば良いのに。」と祈れば、HIVのウィルスは体内からなくなる・・・・そんな実験である。土呂は、森魚と仲良くなるため、森魚の勤め先である予備校に行き、「大学に社会人受験をする。」と言い、森魚に色々相談に乗ってもらう。土呂と森魚は親しくなる。
保険調査員や、看護師の澤村は、初めはこの実験に反対していたが、この発案は土呂からと言うこと、土呂が「漫然と発病を待つより、一か八かでも、奇跡に・・・そちらにかけた方が良い。」と言い、納得せざるを得なくなる。新田は言う。「それなら、もし、森魚が『妻が助かれ』と祈れば、良くなるのではないか?森魚がドミノであるコトを伝えれば・・」と。真壁は言う。「バカだな。ドミノは、自分が『ドミノ』であるって気づいちゃいねえんだ。気づいたら大変よ?人間なんて、欲望の塊なんだから。」 そもそも、新田まで森魚に近づいたら、何か企んでいるコトはバレ、実験は出来なくなると言う。

陽一には彼女がいる。森魚は、彼女と陽一が上手く行くように祈っているようだが、彼女は料理も出来て、しっかりしている陽一に、少し魅かれているようにも見える。

ドミノ幻想。皆信じてはいなかった。しかし、徐々に森魚のまわりに不思議なコトが起こり始める。森魚は、昔、小説家を目指していた。今でもネットで小説をアップしている。その小説が認められ、出版社から声をかけられたと言うのだ。森魚は、既に友達になっていた土呂にそのコトを話す。森魚「まさか・・・土呂さんが裏で動いてるってコトはないですよね?編集者が知り合いにいる・・・とか・・・。」 当然、そんな事実はない。

土呂は言う。彼といると、パンチラを見る確率が異常に上がると。皆はバカにするも、真壁は真剣だ。「男なんて性欲の塊なんだから、女見れば、やりたいって思うし、パンチラが見たいは普通の願望なんだよ。(陽一に)おい、オマエ。オマエ、兄貴に彼女なんて紹介すんなよ?アニキにやれてちまうのがオチだぜ?」 真壁は言う。「大して面白くねえのに、売れてる小説家とかいるだろ?アイツら全員ドミノなんだ!」

盛は、真壁と中学時代の友人。彼は、真壁を、ドミノ幻想がある妄想患者ではないか?と心配する。
真壁は鼻で笑い否定。「俺、昔っからついてなかったんだ。彼女が出来たと思ったら、その彼女は友達に取られるし。悪いコトばっかり俺には起きる。ドミノだったんだ。俺の周り、ドミノが必ずいやがる。チクショウッ!その影響で、俺には悪いコトが起こるんだ。そいつに良いコトが起これば、そいつの代わりに悪いコトが起こる奴がいるってコトよ。森魚の弟が助かったから、新田の妻が怪我したようなモンでさ。ヒットラーって知ってるだろ?ヒットラーは全部合法的にやって権力手に入れてんだぜ。アイツ、ドミノだったんだ。ヒットラーはドミノ!」 

新田は、目撃者たちの忠告も聞かず、森魚に接近。これがバレ、仲間たちから、これでは実験にならないと怒られる。ただ、新田の妻と森魚を会わせるというコトは、看護師の澤村が仲介し、なされることになる。もし、森魚が新田の妻に「生きて欲しい」という感情を強く持てば、新田の妻は助かるかも知れない・・・。

森魚は新田の妻に会う。しかし、森魚は管に繋がれた新田の妻の状態を見て「早く楽にしてやりたい。」という感情を持ったようだ。
土呂の実験にも気づきそうになった森魚に、土呂は、HIV感染者であるコトを告げる。「私、雑誌で読んだんです。ガン患者が、ガンになり、余命に好きなコトをやろうって、世界一周旅行をした。そうして帰国したら、がん細胞が消えていた。何故だと思います?」 森魚「それは、やりがいが出来て、自分の体内の免疫力が上がったからでしょう。」 土呂「そうです。あの、私、大学に入るって言うやりがいがあれば、HIVも治るような・・・そんな気がするんです。」 新田は、この話を信じ、少なからず感動したようだ。

森魚と陽一の彼女の間に不穏な空気が流れる。森魚は陽一の彼女に自慢の手料理を振る舞うが、陽一にはそれは彼女が浮気をしているように見えた。彼女は、陽一の卑屈な面が嫌になったのか、陽一と分かれてしまう。

新田の妻が死ぬ。真壁は言う。どんどんドミノが転がっていると。新田の妻が死んだのは、森魚が新田の妻を「早く楽にしてあげたい。」と望んだから。
土呂は、HIV検査を受ける。信じられないコトに、HIVウィルスは消え、陰性になっていた。真壁は喜ぶ「ほら!森魚はドミノだ!ドミノだったんだ!」 土呂は「森魚は神様だ!」とたたえる。真壁「ほらみろ!どうだ?俺の言った通りだろ?森魚は偶然のパンチラから、オマエの神様に昇格したんだぜ?ドミノはいたんだ!ほら!!」 横道は、この状況を冷静に見ている。

土呂は、実験のコトを森魚に伝えに行く。土呂は森魚に「アナタは私にとってキリストです。」と伝える。しかし、森魚は笑う。「違いますよ。いえ、私がアナタにとってそこまで影響を与えた人になれたのは嬉しいですよ。でも、違います。私だって、思い通りにならないコトは沢山ある。アナタ自分で言ったじゃないですか。『ガン患者が、やりがいを見つけ、免疫力が高くなってガンが治った』って。それは、アナタ自身が、やりがいを見つけ、免疫が高まって、HIVが治ったのでしょう。」

森魚はドミノではないのか?でも、不思議な現象は実際起こったし、目の前で新田の運転していた車は大破した。医師の盛は「信じない。」というが、横道はある結論を出す。
「確かに、ドミノという人間はいる。でも、それは、森魚さんではく、真壁さん。アナタではないんですか?」と。驚く真壁。真壁「そんなワケねえだろ?仕事も上手くいかねえし、彼女も友達に取られて・・・」 横道「アナタは、物事を強く願ったことがありましたか?何かになりたいって真剣に願ったコトは?いつも、手前で『やっぱりダメだ』と諦めていたんじゃないですか?」 諦めたネガティブな思いをドミノが感知していたら・・・。

横道「確かに、森魚さんの周りで不思議なコトは起こりました。でも、陽一さんと彼女が別れてしまったコトは、森魚さんの本心とは違います。確かに森魚さんによる奇跡は起きましたが、それは、真壁さん。アナタが願った通りに起こっている。」 真壁「だって、事故は・・・。」 横道「あの時、何か叫んだのは、森魚さんだけですか?皆何か叫んだはずです。あの場面を見て、強く思ったはず・・・。」

真壁は、ショックのあまり、崩れ落ちる。「何だよ・・・俺・・・ドミノだったのかよ・・・。何だよ・・・願えば何にだってなれたのに・・・。俺の人生何だったんだよ・・・。いなくなりたい・・・。消えたい・・・。」

一瞬にして真壁の周りが暗くなる。真壁には何かが見えているらしい。真壁「皆!伏せろ!何だあれ?オイ!皆、いないのか?大きい!あれ、何だ?オイ!皆、いないのか?オイ!オイ!」

暗転。明転。一瞬のうちに、真壁の姿はあとかたもなく消えている。

こんな話。
最後の真壁役の安井氏の演技が圧巻です。本来なら怖いはずなのだが、ちょっとバカにも見えるんだ。自分がドミノなのに、そうとは知らず、ひねくれて卑屈に生きてきた彼が、憐れに、そして、バカバカしくも見える。これはやっぱり芸人の質なんだと思う。
最後真壁に見えた『大きなもの』って何だろう?私は勝手に虚無の具現化だと思ってるんだケド。
その虚無の具現化に取り込まれ、真壁は跡形もなく消えたと。

面白い話なのだが、途中の陽一と森魚の会話や、土呂と森魚の会話の部分などが、やはりちょっと単調で長く感じるんだよな・・・。見せ方にもうちょっと工夫が欲しいかなぁ・・と。
あと、私、結構早い段階で、「おそらく、真壁がドミノだな。」と気づいてしまった(^_^;)。これ、もう少し、デゴイのような・・・ミスリードできる何かがあると良いのかもね。看護師さん辺りに何かが起きて、デゴイになる・・とか。

森魚役の浜田氏が良いキャラなんだよな。浜田氏でコメディが見たいと思ってしまう。常に前向きでフィジカルな人なのだが、陽一が彼女を取られたと思って文句を言うと、「そもそも兄ちゃん、泉ちゃん(陽一の彼女)は、ちっともタイプじゃないぞ。兄ちゃん、もっと身体がでかくて、ガンガンセックスが出来る女性が良い!」と。笑った。陽一「兄ちゃんて、すがすがしいほど、分かりやすいね・・・。」

もし、真壁が、まっすぐでポジティブシンキングだったら、世界は変わっていただろうか?そんなコトもないような気がしてしまう。

次回のイキウメは、10月に新作をやるそうです。
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