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2006年08月07日18:50

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コクーン歌舞伎 東海道四谷怪談 北番

暑いですね。私は無類の汗っかきなのですが、汗かきすぎて、カラッカラに干からびてしまうような気すらします。
水を与えたら戻るんでしょうか?乾燥ワカメの如く。

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WOWOWで、『コクーン歌舞伎 東海道四谷怪談 北番』をやっていたので見てみました。

今回は2パターンの四谷怪談があったそうです。南番は、演出が、初演(だと思う)のコクーン版 東海道四谷怪談に近く、本家の歌舞伎の四谷怪談に近いのは、こちらだそうです。
WOWOWでやったのは北番。こちらの方が現代劇風。何しろ音楽が現代音楽で、イメージソングは、椎名林檎さんの『浴室』。有名な“提灯抜け”のシーンもなかったです(南番にはあるんだって)。ただ、提灯が一つづつ炎上していくシーンがありました。

面白いな・・・と思ったのは、幽霊になったお岩様が直接は出てこない。手が出てきたりはするんだけど、「恨めしい〜、伊右衛門殿〜」とか言って、お岩様の幽霊自体は出てこないのです(勿論、生身の時は出てくるよ。因みに、お岩様を演じたのが中村勘三郎)。
なので、登場人物はお岩様の思念(思惑)によって、皆操られているように見えるのです。
怖いというより、不思議な感じがするお芝居。

本家、歌舞伎の東海道四谷怪談に凄く思い入れのある人は、「こんなの四谷怪談じゃない!」と思うかも知れないね。

私は、確かに幽霊が出なかったりした部分では、物足りなさもありましたが、コレも表現としてアリだろう・・・と思いました。

現代風に解釈して、幽霊=その人の残留思念のようなモノ・・・だと演出家は考えたんじゃないかな〜と。

お岩様の妹・お袖を、勘三郎氏のご子息七之助氏が演じていたのですが、コレが結構嵌ってました。儚げな感じというか・・・。

それにしても、四谷怪談のお袖ちゃんが死んじゃう場面を見るたび私は「納得出来ねぇ〜!!」と思ってしまう(^_^;)。
お袖ちゃん、何で死ななきゃいけなかったの?
旦那さんと、直助との板挟みになって困ったとか、旦那さんに義理立てしたから・・・とか理由はいくつか見つかるケド、「それは、死ぬようなコトなのデスカ??」といつも思ってしまうのです。だって、お袖ちゃん悪くないじゃんよぉ〜。お袖ちゃんは、旦那は死んじゃったと思い込んでいたワケだし、1番悪いのは直助じゃ〜ん!!人妻のお袖ちゃんに横恋慕して、旦那殺しちゃう(実際は、間違えて別人を殺害する)んだから!!
まぁ、それで因果応報で、直助とお袖は生き別れの実の兄妹と分かり、妹とデキちゃった直助は後悔して自害するんだけど・・・。
お袖ちゃん可哀相過ぎるよなぁ〜・・・(T_T)。

あと、やっぱり、お岩様の身繕いのシーンは切ない。伊右衛門が、お岩様を捨てて伊藤家に婿入りして、嫉妬に狂ったお岩様は、伊藤家に行こうとする。按摩の宅悦に「おやめなさいませ」と止められ、「確かに、この恰好では行けぬ」と、武家の嫁らしく、身繕いをするシーン。鉄漿(おはぐろ)して、髪の毛を整えようとすると、髪の毛がバラバラッと抜け落ちるシーンですね。
四谷怪談を良く知らなくても、このシーンだけ何となく知っている人も多いはず。
コレ、切ないよなぁ〜。女性の命の黒髪がボロボロ抜けて、頭が血だらけ。怖いんだけど、怖いより、お岩様が気の毒で切ない。

そして、やっぱり思ってしまうコト。

伊右衛門は悪人だケド、このお話で、1番の悪人は、伊藤喜兵衛じゃないのかい?・・・と。

喜兵衛の娘のお梅が、伊右衛門に一目惚れして、伊右衛門を婿にする為に、お岩様に「血の道の薬だ」と嘘ついて毒薬飲ませるのって、伊藤喜兵衛が考えたコトよね?
確かに、伊右衛門は、お岩様と離縁させられたのに腹立てて、お岩様のお父さん殺すは、お岩様と一緒に暮らしたら暮らしたで、お岩様のコト邪険にするはで、イケメンだからって、調子乗ってんじゃねぇ!!と言いたくなる程の人ではある。
んが、体裁の為とは言え、伊藤家に言って「離縁は出来ない」って言うんだよね。悪党だケド、心底悪党なのか?本当の悪党なら、世間体なんか気にしないと思うのだが・・・。

それより、私は、伊藤一家が激怖い。「命は取らない」とか言ってるが、顔面が崩れる毒薬を盛る方が人間としてはどうかしてると思うぞ(^_^;)。しかも、娘のお梅も、それ聞いても、大して驚いた感じがしないし。お梅、オマエ本当に生娘か?
それとも、恋は盲目で「イケメンの伊右衛門様が、手に入ってラッキ〜♪」くらいしか思えなかったんでしょうか?

勿論、因果応報で、伊藤一族は御家断絶します。

余談だが、伊右衛門のような男前の極悪人を、歌舞伎では“色悪”というのだが、私は、この色悪が好きである。男前の悪党は、文句なしに恰好良くは、あるのだ。歌舞伎の世界ではね。

コクーン歌舞伎。おん亡堀のシーンで、黒子(というか青子?)が水の役をやったり、斬新な演出が沢山ありましたが、ちゃんと、“だんまり”(台詞なしで、パントマイムみたいに動きだけで表現する方法)があったのは嬉しかったです。
やっぱり、お堀のシーンには“だんまり”がないとな。

あと、面白かったのは、宅悦が、結構コメディリリーフになっていたところ。
本家・歌舞伎だと、こすっからくて嫌な奴だなぁ〜と思っていた宅悦が、ここでは、小心者で小ズルイケド、憎めない奴になっていた。笑いどころも結構あったし。
お岩様が酷い顔になるシーンですら、ちょっとコメディチックな雰囲気を出していた(この演出は好き・嫌いあるかもな)。

四谷怪談は、最後、伊右衛門だけは死なないのだが、ずっとコレが不思議だったのだが、中村勘三郎氏が「お岩は、伊右衛門のコトを愛してるんですよ。あんな酷いコトされても、愛してるんです。だから、最後殺さないでしょ?」と言っていて、何となく納得出来ました。
どこか切ないですケドね。どんなに酷いコトをされても愛故に、殺せないというのは。

鶴屋南北。コクーン歌舞伎にするなら、今度は“桜姫東文章”にチャレンジして欲しい。私の大好きなお芝居。
前半ボーイズラブ小説で、後半レディースコミックみたいな展開(笑)。現代風にアレンジすると、どうなるのかな?
特に冒頭の、清玄と白菊丸の心中シーン。
現代で考えたら、オッサンが美少年と心中するワケですからね。結構面白くなるのではないかと。
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