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2012年04月12日21:32

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三題噺「カラスミスパゲティ、東京ドーム、乙女座の少年」

今回のお題「カラスミスパゲティ、東京ドーム、乙女座の少年」は文学少女シリーズからのお題だ。
またずいぶん時間をくってしまった。
文学少女シリーズでは主人公はお題をもらって50分で原稿用紙に書き上げてたんだよね。超人としかいいようがないね。
今回はちょっと四人のガールズトークに挑戦してみた。いつもたいてい3人くらいでワイワイ言い合う話が多いんだけど。いーねえ、ガールズトーク。なんだか華やかだよねー。「四人の少女がシモネタでガールズトーク」もうストーリーとかいらないよねえ

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三題噺「カラスミスパゲティ、東京ドーム、乙女座の少年」

というわけである晴れた春の日のお昼過ぎ、あたしたちは話題のカラスミスパゲティを食べにきていた。
何が「というわけで」かというと、説明するのもメンドいんだけど、要するにあたしら四人はどういうわけだが毎月一回集まって外食産業の売り上げに貢献しようっていう主旨の会を開いてて、おいしいカラスミスパゲティを食べさせるお店があるそうだから今月はそのお店にいきましょう、ってゆう事になったってわけ。いわゆる女子会ってやつ? あ、でも女子会っていうと、もう仕事してる大人の女子のことを言ってるようなイメージがあるんだけど、あたしらみたいな高校生でも女子会って言っていいんだっけ。
席につくなりリンが口を開いた。
「えーこの度はうちのためにお集まりいただき」
「お、なんだなんだ、なにが始まったんだ」
別にお前のために集まったんじゃねー、という突っ込みは頭の中にあったんだが、とりあえず何を始めるつもりなのか、黙ってきいとく。
「実は彼氏が出来たってお姉ちゃんに言ったら、お姉ちゃんからこういうものをいただきました」
四人がけの白いテーブルの上にポンと四角いパッケージに入った円いゴム製品を置く。
あたしはバンッ!と叩き付けるように手で覆い隠して
「バカッ、こんなもんこんなとこに置いてんじゃねえよバカ野郎」
声をひそめて怒鳴った。
「ん? なに? 今さっきのなんだったの? なに隠したの?」
あたしの横の席のマイカが、テーブルにくっつけたあたしの手をはがそうとする。
あたしは小声で耳打ちした。
「っ、コンドームだよ。コンドーム」
「あーコンドームね。聞いた事ある」
「っ、バカ、声大きい!」
「って、なんだっけ。コンドームって」
と今度は声をひそめて聞いてくる。落語かお前は。
「っエッチの時に子供が出来ないようにするものだよ!」
あたしも声をひそめて返した。
「どうやって使うの?」
「っ頭にかぶせんのっ」
びっくりした顔してやがる。こっちがびっくりだよ、なんで知らないんだよ、ありえねえよ、避妊の事は学校で習ったはずだろうが。
「ちょっとやってみせて」
「っ出来るかっ!」
あたしが小声で怒鳴ると、マイカは今度はマオに「知ってた?」と振った。対面に座って知らんふりで携帯電話をいじくってたマオが「え? なんの話?」ととぼける。
が、顔が真っ赤だ。マオ、このムッツリが。
「お前も食事の前にややこしいもん持ってくんなよ」
とリンに文句を言うと
「いやあ、イカくくりでいーかなーと思って」
またわけのわからない事を言い出した。
「イカくくりって?」
「リン、今日はイカスミじゃなくてカラスミスパゲティだよ?」
とマオがケータイを閉じて言う。
「あちゃ、うまいこと言ったつもりだったのに。やば、ちょー恥ずかしい」
リンが真っ赤になった顔を両手で覆い、額をテーブルにくっつける姿勢でしきりに恥ずかしい恥ずかしいと連呼した。
「えっと、よくわからないんだけど?」
と言ったのはマイカだが、これについてはあたしも同感だった。
「カラスミじゃなくてイカスミだったら、何がうまいの?」
「言わせないでよ、もー。いやだからほら、イカスミとイカくさいのとで」
「そっちの方を恥ずかしがれ!女子として!」
思わず頭を叩いていた。
とりあえずいつまでもこんなもんテーブルに置いとく訳にはいかないので、他の客に見えないように手で覆ったままずらし、手の中から上着のポケットにうつそうとしたらリンが顔を起こして「あ、それ返して」と奪い取っていった。
「しかしお前もたいがいだけど、お前の姉ちゃんもたいがいだな。何考えてんだ?」
「うちのお姉ちゃんはあの事しか考えてないよ」
「ははあ、お前と同じか。もしかしてやりまんってヤツ?」
「えー、うちのお姉ちゃん処女だよ」
「え、お前の姉ちゃん、大学生だよな。 大学生でしかもあの事しか考えてないのに処女って、いや意味わかんないんだけど。病気?」
「うーんまーねー、病気とゆーか、実際あの事しか考えてないのは本当だけど、基本的には夢見る文学少女だから。って言っても、見てんのは白昼夢だけどね」
「あ、なんかうまいこと言ったって顔。うざっ、どや顔うざっ」
マイカが隣で不機嫌な顔で腕組みして
「なんか、リンたち何の話してんのかよくわかんないんだけど」
「だいじょうぶ、私もよくわからない」
真っ赤な顔で答えてるけどマオ、お前は絶対分かってるだろ。
「いやいや、そーゆーんじゃなくて」とリン、「いやいや」の形で手を振って「いわゆる腐女子ってやつ」
「あー、腐ってんのか」
「え? リンのお姉ちゃん、腐ってるの?」
「うん、腐ってるね」
「どんだけ」
「あらかた。たとえば本屋で三国志みつけて、ニヤけるくらい」
「そらひでえな」
「東京ドームでいうと?」とマオが訳の分からない換算を求める。
「うーん、八杯分くらい」
「換算できんのか、東京ドームで。ていうかそれ、八杯って何すくってんだ?」
「うーん、体液?」
「いやあたしが悪かった。もういいから喋るなお前」
「あ、そうか、もしかしてコンドームって東京ドームと関係あるの?」とマイカが突然ポンと手を打つ。
「あるか! エッチの時に使うもんだって言ってるだろうっ」
「あーでもいーなあ。あたしも彼氏ほしーなー」
マイカ、コンドームが何かわからないから自分がどんな最悪のタイミングでそのセリフを言っているか自覚ないんだろうが、その文脈だとエッチしたがっているようにしか聞こえないぞ。
「マイカ、男がほしいの?」とマオがまたそれに拍車をかけるような言い方をする。
「そりゃあ、ねえ」
「ていうかマオ、男言うな。なんかエロい」
「よし、わかった」
「いやわかったって、ちょっと待て。お前またそれ、ホームルームの議題に出す気じゃないよな」
「え? ダメなの?」心底驚いたような顔をする。ちょームカつく。
「ダメに決まってんだろ!」
「でも、この間は私がホームルームで議題に出したから、リンが高橋とつきあう事になったのに」
「あれは特別! てゆーか、もうあんなことしちゃダメ! ったくありえねえだろ。友達の好きなヤツの話をホームルームで手を挙げて言うとか」
「いやマジで、うちも、うまくいったからその点は感謝はしてるけど、恥ずかし過ぎて死にそうになった。てゆーか、今思い出してもマジで死にたくなる。軽いトラウマだわあれは」
「じゃあ、どうするの。告る?」
「ま、なんだかんだ言ってもそれが一番だろうな」
「わかった。じゃあ1週間待つ。それで告らなかったらホームルームに出す」
「なんでお前に期限切られないといけないんだよ!」
「いやちょっと待って。それ以前にあたし、今特に好きな人とかいないんだけど」
マイカが場を制するように両手を広げて言う。
「あーじゃーこの話はここで終わりだねー」
リンがそう言うと、マオは鞄の中に手を突っ込み
「いや、そんな事はない。まだこの話は広げられる」
と言って何かをゴソゴソ取り出した。
「特定の誰かいないんだったら、こういう時こそ占い。占いはこういう時の為にある」
「いや占いは別にそういう時の為にあるわけじゃないと思うけど、って産經新聞?」
マオが鞄から取り出したのは産經新聞日曜版の占いコーナーのページだった。
わざわざ大見得切って出してきたにしちゃ、なんか微妙だなその占い。
「そもそも、なんで日曜版なんか持ってきてんの?」
と聞いたのはリンだ。
「日曜日バタバタ急がしてく読めなかったから」
「なんかショボい。高校生なのに」
マイカはすごく残念そうにマナジリを下げた。
「何座?」
「えーっと、乙女座」
「あーマイカ、なんかイメージ通りだねー」とリン
「あ、あたしも。あたしも乙女座」とあたしも手を挙げた。
「おー、乙女座の少年かー」
「なんであたしだと少年になるんだよ」
「でも、乙女座の少年ってなんか美少年っぽいイメージ」
いやマオ、それフォロー? フォローなわけ? フォローはいいから否定してくれよ! 先にさあ!
リンが「わかるけど、現実はもっとしょっぱいよ」と暗い目をして呟くと
「うん、知ってる。」とマオも同じ目をして返した。
もう誰もフォローすらしてくれる気がないようだ。
「あ、でもそういえばうちの姉ちゃんのベッドの下にある漫画にいっぱい出てくるよ、そんな感じの少年」
「お前の腐った姉ちゃんの話はもういい」
マオが産經新聞の占い欄を読み上げた。
「えー、今週の乙女座は『明るい運気です』」
おお、いいじゃないか。今日初めていーこと言われたような気がする。
「年末年始のイベントには積極的に参加して吉」
待て待て待て。それいつの占いだ。
そのすぐ後にカラスミスパゲティがきたんだけど、食べている間中、頭の中で「イカくくり」という言葉がリフレインされてて、ちょっといやだった。
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