mixiユーザー(id:2230648)

2011年04月03日14:22

168 view

あと出しのお話

勝負事においては,事前にルールが明らかにされている必要がある。
事前に決めておいたルールを事後になって変更するのは,明らかに不公正だ。

例えばサッカーでは,ゴールポストとクロスバーの下でボール全体が完全にゴールラインを越えたときに得点がカウントされるというルールがある。
このルールを,試合が始まった後で,「ボールの一部がゴールラインを越えたときに得点がカウントされる」と変更してしまったら。
ボールの一部がゴールラインを越えたときに得点になる,という新ルールは,それ自体は不合理なものとはいえないかもしれない。
しかし,試合が始まってしまったあとでそういうルール変更をして,しかもそのルールを,既に始まってしまった試合に適用するとすれば(当然,試合をしているプレイヤーたちはそのルール変更を知るよしもないのだから),どう考えたってアンフェアだ。

ここで問題視されるのは,ルールの内容が不合理かどうかということではない。
ルールを制定して適用する過程が公正かどうかということだ。
あと出しじゃんけんが公正でないのと同じようなものだろう。
----------------------------------------------------------------------
都立蒲田高校で,入学試験時に茶髪・ピアス・腰パンなどの服装をしていた受験生が,試験の成績では合格点に達していたにもかかわらず,点数を改ざんされて不合格になったそうな。
同校の当時の校長は懲戒免職になったという。
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819695E0E7E2E1E78DE0E7E2E1E0E2E3E39191E3E2E2E2;at=DGXZZO0195583008122009000000
http://www.asahi.com/national/update/0325/TKY201103250430.html
http://media.yucasee.jp/posts/index/7072

都立蒲田高校は,東京都の「エンカレッジスクール」に指定されている。
エンカレッジスクールというのは,要するに,小中学校では学習についていけなかったけれども高校でやり直したい,という生徒を受け入れる高校ということのようだ。
そして,このエンカレッジスクールの入試では通常の学力試験は行われず,調査書・面接・小論文等によって入学者を選抜する。

蒲田高校では,頭髪・服装・態度等に問題のある生徒を入学させないという方針を事前の学校説明会などで説明していたという。
しかし,エンカレッジスクールを含む都立高校の入学者選抜実施要綱には,面接の時間以外の受験生の様子に関する情報を入学者選抜に活用するという定めはない。
とすれば,仮に「頭髪・服装・態度等に問題のある生徒を入学させない」ということ自体には合理性があるとしても,実施要項に定められていない要素を合否判断に活用したという点で,ルールの適用過程が不公正であったといえるだろう。

この件については,東京都教育委員会のウェブページにて詳細が報告されている。
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/pr110325.htm
この報告には
「仮に頭髪等に関する情報を選考に活用するのであれば、面接の時間の中で、受検者に対して、そのようにした事情、改善への意欲及び入学後の学校の指導方針等に対する考えなどを問い、その結果を面接点に反映させるべきである」
と記載されている。
身だしなみの乱れを不合格の理由にするとしてもそれは面接点として考慮すべきであり,事後に点数を改ざんして不合格にするのはおかしい,というわけだ。
そりゃ,まあ,そうだろうなぁ。
----------------------------------------------------------------------
ことほどさように。
自由で公正な社会においては,結論の妥当性が重要であるのと同様に,結論を導き出す過程の公正さが重視されなければならない。
専制君主がいくら善政を行ったとしても,それが君主の独断による結論である以上は,やはり問題があるのだ。
結果が良ければ専制だろうが独断だろうが問題ない,ということにはならない。
----------------------------------------------------------------------
ついでにいうと。
この「頭髪・服装・態度等に問題のある生徒を入学させない」というルールが本当に合理的といえるのかについても,疑問無しとはしない。
なぜなら。
教育は「人を見た目だけで判断してはいけない」ということも教えるべきと思うからだ。

たしかに,現実の社会では,人は見た目で判断されうる。
私にしても,「見た目」が重要でないなどと言うつもりはない。
社会生活ではTPOをわきまえる必要もある。
そして,現実社会のそういう厳しさを教えるのも,教育の役割のひとつだ。
さらには,「エンカレッジスクール」がいわゆる教育困難校であることは想像に難くなく,そういった高校では「質の悪い」生徒は受け入れたくないという本音もあるだろう。

しかし,例えば私は,私の甥っ子や姪っ子たちには,人を外見でのみ判断する大人になってほしくはない。
外見だけで他人を判断するのは,やはり良くないことだと思うから。

0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2011年04月>
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930