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2009年10月10日19:14

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サッちゃんの明日

大人計画本公演(だったようです)『サッちゃんの明日』を見に行きました。

最初「何で、シアタートラムなんて小さい小屋でやるんだろう?チケット取り激戦になって、又、業者の餌食じゃん。」と思っていたのですが・・・。見て思いました。「あぁ、コレは・・・この濃密さは、トラムくらいの小さな小屋が丁度良い。」と。

でも、私が思っていた感じとは違ったケド。もっとドロドロした話かと思ったら、サクサクしてる感じだった。おそらく、各登場人物の不幸の原因が『ハッキリ』してるからだと思う。松尾氏は物語の中で、不幸もかなり複雑な不幸にするコトが多いケド、今回は登場人物の不幸がハッキリしてる。
あと、時間が、過去→現在と進むので分かりやすいし、空間も、2箇所しか移動しないし、入れ子細工方式ではないので、見やすいと思う。
で、おそらく、見やすかったので、私には「サクサクしてる」と感じたのかな?と。
「大人計画ってどんなお芝居するの?」と訊かれたら、コレを見せるのが1番良いかも知れない。(昔のは、映像残ってないし)

狭い小屋だったからか。昔の大人計画のお芝居を思い出した。『ゲームの達人』とか、『罪と罰』の初演とか。懐かしかった。

最初、サッちゃんが大嫌いだったのですが、最後、大好きになりました。

そして、見た後、やはり、清清しく嫌な気分になれました。今回は、見終わった後、清清しく、「この、偽善者どもめぇ〜!」と言いながら、ナイフで周りの人々を刺し殺したい気分になりました。で、当然、私も、偽善者だから、最後自殺する・・・ね。そんな気分の良さ。そんなウキウキした気持ち。

今回、松尾氏が目指したのは、『朝の連ドラの世界をパンクにする』だそうな。で、結果、下町とドラック(覚醒剤)の話になりました。松尾さんの思考って面白いね。「覚醒剤が悪いのは、楽して幸せになれるのが悪い」って言う考えなのね。そうね。幸せは、苦労した分、輝くのだは。

因みに。渋谷で缶詰で台本を書いてた時、のりピーが出頭して、渋谷大騒ぎになってたらしく、松尾氏「のりピー大丈夫かな?」と心配しながら、ドラックの話を書く・・・という微妙〜な経験をしたそうな(^_^;)。

※以下、『サッちゃんの明日』の感想を書きます。お芝居はまだ続いておりますし、どうやら、TV放送(おそらくWOWOW)されるらしいので、ネタばれがお嫌な方は読まれない方が宜しいと存じます。

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『サッちゃんの明日』
作・演出 松尾スズキ

会場:シアタートラム

キャスト 墨田サチコ・・・鈴木蘭々、墨田カズ・沼田・・小松和重、墨田三千男・・松尾スズキ、れい子・リリー・・家納ジュンコ、道潅・ノムロ・・宮藤官九郎、カチガネゴロー・ヤス・・星野源、ヅケヤマテビイチ・ポーチお化け・・皆川猿時、つぐみ・キヨ・・猫背椿

あらすじ〜。
下町生まれのサっちゃんは、蕎麦屋『墨田屋』をきりもりしている。サッちゃんの片足はびっこ。サッちゃんは、子供の頃、地元の大きな不動産会社カチガネの家の犬に噛まれたコトが原因で、びっこになったのだ。その犬を散歩していたのがサッちゃんの父親。父は元カチガネに勤めており、トップセールスマンだった。しかし、犬の件で、カチガネから莫大な慰謝料を貰い、周りから「慰謝料大臣」などと陰口を言われ、会社にいづらくなり、退社。トップセールスマンだったプライドが邪魔し、蕎麦屋にはなれず、現在は無職。どうやら以前は、酒に溺れ、酒乱だったようだ。
その犬・・・ゴローは、社長が死んだ息子の身代わりとして飼っていた犬らしい。サッちゃんは、襲われた時、吃驚して、ゴローを殺した。

サっちゃんには、脳性麻痺の友達の沼田がいる。カチガネ社に勤める、トップ営業マン。どうやら、沼田はサッちゃんにプロポーズをしたが、サッちゃんは保留にしてしまったようだ。

サッちゃんのお店に、店員募集の張り紙を見て来た青年ヅケヤマ。痴漢で3度捕まり、実刑をくらった青年だが、料理の腕は良く、サッちゃんは彼を雇うことにする。
そんな折、店で事件が。金髪の見るからラリってる女性が店内で暴れたのだ。しかし、女は、サッちゃんのおばあさんカズ率いる、『防空壕連合会(老人パトロール隊)』に捕まり警察へ。その時、女性は、ヅケヤマに何故かポーチを渡す。「後で取りに来てね。」と言い、一旦、ポーチを預かるヅケヤマ。

店に、沼田の後輩、カチガネゴローが来る。ゴローは孤児院育ち。鼻が生まれつき黒いのだが、その鼻の黒いのが、ゴロー(犬)の生まれ変わりっぽく、名前もゴローだし・・・と言う理由で、ゴローはカチガネ社長の養子になる。どうやらゴローは、孤児から大金持ちになったコトに、コンプレックスがあるようだ。そしてどうやら、ピュアなサッちゃんのコトを好きになってしまったらしい。

選挙シーズンなのだろうか。町には“幸せ追求党”という党が、党のアピールをしている。

サッちゃんには、お母さんがいない。6年前死んでしまったのだ。しかし、死んだはずの母からは毎年暑中見舞いが届く(笑)。父に言うと「それは、幽霊が『うらめしや〜』っと言いながら書いているんだ」と言うが・・・。サッちゃんのお母さんは、サッちゃんのおじいちゃんと一緒に駆け落ちし、心中してしまったそうだ。

サッちゃんには、ダンサーの友達つぐみがいる。高校のダンス部の先輩PJ先輩が、この町に帰って来た。PJ先輩は、アメリカデビューも果たした地元の星。その先輩が、新しいダンスユニットを作るらしい。去年白血病で旦那を亡くしたつぐみだが、俄然張り切っている。つぐみは、オーディション料50万をサッちゃんから借りようとするが、サッちゃんは、「そんなお金はない」と言う。売り上げの10万をつぐみに貸そうとするも、見かねたカチガネが、50万をつぐみに貸す。
明日は、サッちゃんの誕生日。沼田と誕生日を一緒に祝う約束があるが、PJ先輩にも会いたいサッちゃん。つぐみは言う。「会いに来ても良いケド、私が先に(セックス)やるからね。あと、コンドームは自分で用意して。」 

サッちゃんには秘密の楽しみがある。PCで、エロサイトを見るコトだ。元、山際証券の有能社員だった祖母が、株取引に使っているPCを駆使し、エロサイトを堪能するサッちゃん。そのコトを父も知っていたらしく、父もそれを容認する。

しかし、ここで大事件が!死んだはずの母親が帰って来てしまったのだ。母は義父とデキてしまい、駆け落ちしたのだが、崖の上で義父に「死のう」と言われ、全然死ぬ気のなかった母・れい子は、吃驚。裾を掴まれ、それを振り払いその場に倒れたら、何か赤いボタンがあって、それを押したら、大音量で『津軽海峡冬景色』が流れた!誰もいない崖の上で、大音量の津軽海峡冬景色。吃驚したれい子は、そのまま走って逃げ、タクシーに飛び乗り・・・それから裏日本の裏社会(笑)を渡り歩いたようだ。義父とはそれから会っておらず、自殺したコトすら知らなかったようだ。

れい子は、ここに戻ると言うが、義母のカズがそれを許すワケはなく、れい子に冷たく当たる。「アナタは死んでいないんだから。」とカズ。

三千男は、その状況から逃げる為、酒を飲み、暴れだし、サチコを殴る。

一方。PJ先輩宅に行ったつぐみ。しかし、PJはおらず、謎の青年“道潅”がいた。道潅はPJのマネージャーだと言うが、どうにも胡散臭い。言われるままコーラを飲んで、変な状態になるつぐみ。どうやら、コーラにはクスリ(覚醒剤)が入っていたらしい。さらに覚醒剤を勧められ、つぐみは断るも、道潅の「PJも勿論やってるし、やってないダンサーなんていないんじゃねえの?」その言葉につられ、つぐみは覚醒剤に更に手を出す。
そこには、ポーチお化けと呼ばれる変な女がいる。どうやら自分がなくした銀のポーチを探しているらしい。

家がゴチャゴチャ面倒くさい状態になり、家にいたくなくなったサッちゃんは、沼田と共に、PJ先輩宅へ。
しかし、そこにはPJはおらず、つぐみとサッちゃんは口喧嘩を始める。つぐみは言う。「アンタなんか普通の夢しかないくせに!」 サッちゃんは言う。「私にだって普通じゃない夢くらいあるよ。それは自分の葬式を見るコトだ。」と。サッちゃんは、母と義父の葬式の時、全然泣けなかった。父や祖母は裏切られたと言うのに、号泣していた。サッちゃんは言う、「私のお葬式でどれくらいの人が泣いてくれるか知りたいの。」 道潅は言う。「その夢、良いじゃ〜ん。出来るよ。クスリを致死量ギリギリまで飲むんだよ。まぁ。(生還する)確率は五分五分だケドな。あげても良いケド・・・その代わり・・・やらせろ!」
道潅にレイプされそうになり、サッちゃんは「沼田君、沼田君!」と叫ぶ。

そんな折、とあるニュースが。昨日、蕎麦屋で暴れた女はリリーと言い、クスリの運び屋で、彼らの仲間だったらしい。捕まったコトがバレたら、警察が来る。しかも、ポーチお化けのポーチには、末端価格で1000万の覚醒剤が入っていた。それを今日中にボスに渡さねば。道潅は殺されるらしい。

沼田が、サッちゃんを助けに来るが、沼田はそのポーチお化けからヤクを買っていた。沼田は言う「年々、筋肉が硬くなって、痛くて動けなくなるんだ。でも、俺はトップセールスマンでいたいんだ。」どうやらヤクを使うと、その痛みから解放されるらしい。その為のヤク。

サッちゃんは、その場から逃げ、蕎麦屋へ戻ると、そこには縛られた三千男が。母は手に包丁を持っている。
追って来た道潅。ポーチの場所を知る祖母に話を聞こうとするも、祖母は話が出来る状態ではなかった。祖母は数年前から、まだらボケになっており、部屋の中で“パラパラとよさこいソーラン節”を混ぜたような踊りを踊ってる(笑)状態だったようだ。

と、そこに物音が。どうやら道潅はつけられており、中国人のボス登場。さぁ、サッちゃんの運命は、サッちゃんの明日はどうなる!
・・・と言う物語。

サッちゃんには好きな人が出来た・・と言うコトが物語りの中盤に分かるのだが、最後、その男性はヅケヤマだったコトが判明。しかし、ヅケヤマは、祖母カズのコトが好きで、どこまでも不幸なサチコ(笑)。
道潅に「オマエ金持ちなんだろ」と言うも、サチコ「金なんかないは!全部エロサイトで使っちゃったよ!無料サイトは、良いところで終わるし。リンクして行ったら、海外のサイトに行ってさ。カード決済だから、金銭感覚もおかしくなるし。解約方法分からないし。3000万は、全部私のエロ代に消えたは!」と言う台詞が恰好良い。
サッちゃん、ヅケヤマに「最後に1つお願いが。金玉触らせてくれ。」と言うのも恰好良い。
ヅケヤマ何故か、金玉殿(侍っぽい)になり、それが、三船敏郎って言う、くだらなさ(笑)。

私、最初、サッちゃん嫌いだったのです。偽善は大事だケド、あまりの偽善者っぷりに。沼田君との結婚がOK出来ないのも、劇中の台詞にもあるが、「私も障害者だケド、アンタとはレベルが違うんだ。しかも、アンタ性格悪いし。だから結婚出来ない。」ってハッキリ言えば良いじゃねえか・・・と思っていたのだが。
でも、終盤になるにつれ、どんどんサッちゃんが好きになった。
そうか。この娘さんは、スゲエ偽善者として生きるしか道がなかった、娘さんなんだよな・・と。

結果、中国人ボスに、三千男が威嚇で頭を撃たれ死亡。その場にいた、ヅケヤマも撃たれる。しかし、中国人ボスをれい子が包丁で刺し、ポーチをゲット。さち子の「サッちゃん。私、また、ここにいられなくなっちゃった。でも、助けたからね。私サッちゃん助けたからね。」と言う台詞が良い。

最後。臨時ニュースが流れる。“本日、北朝鮮からミサイルが5発発射され、そのうち、2発が、京都と大阪に命中。東京にも向かっており、迎撃ミサイルを打つも、迎撃に失敗。着弾する模様です”。一時正気に戻ったカズが、防空壕連合会に連絡に行き、サッちゃんは、道潅から致死量ギリギリの覚醒剤を貰い飲む・・・が。TVからはこんなテロップが。
『コレは、日本幸せ追求党が、もしもの事態を想定し、シミュレーションしたフィクションです。このような有事が起こらぬ様、日本幸せ追求党は、拳法9条を・・・・』

ヅケヤマ。「サッちゃんどう?」 サッちゃん「凄く味がする。」 ヅケヤマ「そうだろうなぁ。それ、味の素だもん。ウチに帰ってポーチの中見たら、ポーチの中に、味の素が沢山入ってて、それが固まってて(覚醒剤は本来固まってます)。あの女の人、折角買ったのに、しけて固まってたらガッカリすると思って、新しい味の素入れておいたんだもの。」

最後、ヅケヤマが作った新メニュー『サッちゃん定食』をがむしゃらに食べるサッちゃん。こんな台詞がスクリーンに出る。
『この蕎麦屋は明日、大事件になっているだろう。そして、3ヶ月もたった頃、皆の記憶から忘れられる。その時、私の明日はどうなっているだろう?おばあちゃんの世話をするコトだけは決まっている。』

最後の文章も好きです。父が殺された大事件より、母がヤク(ではなく、味の素なんだケド(^_^;))を持って、又、自分を捨てて逃げたコトより、サッちゃんには、介護の方が大問題って言う。

当たり前のコトだケド、自分の幸不幸なんて、自分でしか決められない。何だったら、核打ち込まれて死ぬより、明日嫌な上司に会う方がイヤな奴だっている・・てか、その方が多いはずなんだ。
それを、まるで、「皆が、核問題を大事に思ってますよ〜」って言っちゃうから、偽善になって、偽善は大事だケド、偽善過ぎて腹が立ってきたりするんだよね。

れい子役の家納さんの演技が素晴らしかった。
義父との駆け落ちを、稲川淳二風に話す場面で死ぬほど笑った。「なんだかな〜って思って。赤いボタンがあって、赤いな〜赤いな〜って思ったんだケド、押してみようかなぁ〜って。」

あと、れい子が義父との濡れ場を話す場面も好き。「夫がこうだから、私が蕎麦打たなきゃって思って。で、お父さんに教えてもらおうと思って。こう、打つじゃないですか。お父さんが、こう後ろから手を持って、ゴーストっぽくなりますでしょ?ゴーストNYの幻っぽくなりますでしょ?(この言い回しがスゲエ松尾調)。で、2人とも、薄い下着だったんで、こう、ツルンと入っちゃったんですね。」 カズ「ツルンて・・・。」 三千男「入るよね。下着薄いもんね。」 れい子「私も久しぶりだったもんで、『あんっ』て声、出ますよね。お父さんも久しぶりだったのか、もうカッチカチで。で、あんっあっイクって・・・で、最後、お父さん、外に出しましたか?『出した。』じゃあ、セーフですね。」 カズ「(食い気味に)アウトだろぉ〜!」

家納さん。サモ・アリナンズですから、笑わせるのは得意かとも思うのですが、凄く良かったです。美人なのに・・・。ヅケヤマ転がすところとかも好き。

あと、ヅケヤマが沼田を「アイツ、靴以外は全部ダメですもん。イヤな奴ですよ。自分が障害者だって言うコトを利用して、サッちゃんの偽善につけこんでるんでしょ?ありゃダメです。」という言葉も真理だよなぁ〜。
本当にいるんだもん(^_^;)。自分が障害者だから、老人だから、所謂『社会的弱者』(この言葉も、イヤな言葉だなっ!)だからって、それを利用する輩。私には、身体障害者の友人も精神障害者の友人もいるが、普通に好きなところと、ここは合わねえ!というところがあるのですが、その友人から話を聞くと「イヤな障害者もいるよね。」と思う。てか、それが普通!!人なんだから、嫌な奴もいるさ、当然。
終盤、沼田が言う「障害者が皆、TVで見るように微笑んでる奴らばかりだと思うな!」は、心に刺さりました。所謂、健常者(この言葉の方が障害者って言葉より、好きじゃねえんだよ。私)って呼ばれてる方々。そう思ってる人いるよなぁ〜って・・・。

沼田が誕生日プレゼントに持って来てた芝居のチケット。フライヤーにくるんであったのだが、それが『ヘブンズ・サイン』なのが笑った。
沼田が言う「障害者をテーマにして、笑いを取る、黒い笑いで社会をきってる劇団なんだ。おそらく、これを作った人は、凄く優しい人なんだ。本当の優しい人は、こういう人なんだ。」に爆笑した。
『ヘブンズ・サイン』の作者は勿論、松尾スズキ氏。大人計画の芝居だからね。障害者出て来たっけ?(松尾氏のお芝居には障害者が良く出てくるのだが)

おそらく、松尾さん、自分の偽善的な部分まで笑いにしちゃったのね。言われるんだろうなぁ〜。「松尾さんは、障害者を笑いにしてるケド、本当は優しい人なんでしょうね。」とか。その度に、おそらく、松尾氏は居心地が悪い思いをするんだろうね(^_^;)。
もしくは、松尾さん、そう言われたいのかも。

松尾さん。優しいかどうかは知らないが、素直な人だとは思います。だから、「偽善は偽善で良いじゃない」って思うのだろうね。

面白いお芝居で、かつ、古参の大人フリークには懐かしいお芝居でした。
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