リストカットをする人間にも、いろいろあるらしい。小さい傷を、いっぱいつける人、つまり質より量。大きくバッサリ傷をつける人、量より質。私は後者だった。自分の気持ちが、こころについていけなくなると、無性に切りたくなる。切らないと気がすまなくなる

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居室に帰った私は、何をどうしていいか分からなかった。リストカットできない、が〜、どうしようこの気持ち・・・そんな私が選んだことは・・・自分の手を噛むこと。手の皮膚を噛み切ってやろうと思った。こころが痛くなると耐え切れなくなるから、身体に痛み

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３月になって、外の世界は陽気になってきた。今日は、そよそよ（ドクター）の診察の日だった。(あ〜、嫌だ。何聞かれるんだろ)毎日の体重測定も嫌だった。体重は教えてもらえない。（なんで？）診察室に入る。「何かありますか？」いつもその言葉から始

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私の出来ないこと水テレビ本運動入浴そして作業私が、毎日寝ながら見えるのは、居室の小さな窓から見える空だけ。天気のいい日は、太陽が見える。私は太陽を見た。目が痛い。ずっと見続けた。目が痛い。私は自分をいじめたかった。リストカットの癖のある私は

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年が明けた。新年をこんな所で迎えるなんて悲しかった。１５分おきに職員が、見回りに来る。通り過ぎたかと思うと、戻ってきてまたのぞく職員もいる。壁に張り付いて部屋の中を監視する職員もいる。そういう職員を、私たちは「忍者」といっている。そんなこと

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ここでの生活が始まり、３ヶ月経った。私は、相変わらず寝ている・・・職員が１５分おきに見回りに来る。目を盗んで寝返りしようとしても、出来ない。居室にある小さな窓から、空が見える。（雲になりたいなぁ、あんなふうに自由になりたい。）そんなことを思

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水禁とは、私の生活する居室の水を止められること。体重を増やそうとして、水を飲む人が多いとか・・・治療のためにここに来ている人は、ほとんど何もさせてもらえない。ましてや、休養ともなると、毎日ただただ寝ているだけ。後からわかったことだが、まだ水

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２日後、ドクターの回診があった。「神谷さん、あなたは前の施設から水をたくさん飲んでたのですか？」「飲んでないです」「ここへ来た時の体重と、今の体重があまりにも違うんですが・・・」「いっぱい食べてるから増えたんじゃないですか」ド

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毎朝、体重測定がある。でも体重は教えてもらえない・・・「なんで体重教えてもらえないんですか？」「ドクターの指示です」「ね、ドクターってそんなにえらいの？なんで全部がドクターの指示で動いてるんですか？」「あなたは、治療中です。ドクターの指示に

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それからの私の毎日は、想像がつくと思う。休養だから・・・を理由に、何もかも行動を制限された。私の収容棟の担当職員は、たぶん私と同じくらいの年だろう。私より前からいた人たちには、いつも怒鳴っていた。（なんで、そこまで言わないと気がすまないんだ

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診察を終えた私は、新入調室に戻った。これからのここでの生活で、必要なものとそうでないものを分けるためである。ほとんどのものは領置されてしまった。「ね、なんで本はダメなんですか？」「ドクターからの指示です。」担当の職員は、そっけなく答える。「

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若いもじゃもじゃ頭の医師と、その隣に頭の毛の薄い、蛇が蛙を見るような眼をした年配の医師が座っていた。パソコンを打つ看護師と、横の長いすには２人の看護師がメモをとる用意をして座っていた。「どうしてここへ来たかわかりますか？」若い医師が聞く。「

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