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2018年06月16日19:42

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映画 ”レディ・バード”  ”犬が島”

”レディ・バード”  グレタ・ガーウィグ監督
”犬が島”      ウェス・アンダーソン監督

以前から注目していた女優の初監督作品と好きな監督の新作をはしご。

”レディ・バード”

監督のグレタ・ガーウィグは”フランシス・ハ”(14/9/23日記参照)や
”20 century women”(17/6/7日記)でのサバサバした演技で注目していた女優。
今回初の監督・脚本作品にしていきなり去年のアカデミー賞監督&脚本賞に
ノミネートされたという優れもの。しかも主演のシアーシャ・ローナンと母親役が
共に主演女優&助演女優賞にノミネートされ、いずれも大賞は逃し
あまり話題にはなってませんが名実ともに素晴らしい作品でした。

2002年、サンフランシスコの郊外サクラメントに住むクリスティンは
自分のことをレデイ・バードと周囲に呼ばせ、退屈な学校と街から
”飛び立ちたい”と願う高校三年生の女子。
看護師の仕事で失業中の父の代わりに家庭を支える母親とは衝突してばかり。
そんな悩み多き女子の家庭、学校での友人関係、主役になれない演劇サークル、
進学問題、恋人探しといった日々をユーモアたっぷりに描いた物語。

主人公の将来への焦り、根拠のない自分への自信、友達とのくだらないことでの
盛り上がり、母親と喧嘩は絶えないけど次の瞬間は服選びで意気投合したり、
見栄で些細な嘘をついてしまったり、恋人との初体験幻想、
そういったごくごく日常の積み重ねがテンポよく描かれており、
大きなドラマはないもののすごく楽しめました。
監督の自伝的な物語でもあり、会話や表情などシーアシャとの息のあった演出も見事。
女子の物語ではありますが、家族、将来、友達、異性といったこの年代特有の悩みは
男子にも十分共感でき、そして笑えました。

冒頭の母親と喧嘩して車から飛び降りてしまうところから、
いきなりレディバードのエキセントリックな魅力にに引き込まれます。
そこからシニカルな発言やドジぶり、そして適度に下品だったり、
彼女は表情豊かで見ていて楽しくなります。
演じるシアーシャのそばかすとニキビの素ッピンとッファッションも良し。

旅立ちの日、お互い素直になれず素っ気なく別れた後の母親の姿に感動します。
新しい街で同じ思いに気づいた娘が母親に伝えたことが、少し意外な些細なこと。
でも、そこにすごくリアルティを感じました。
今までダサいと思っていた名前、良いところなんかないと思っていた街、
自分のことを愛していないと思っていた母親など、
若い頃は見えていないことが多すぎた、そんな誰もが通った愚かさを思い出させ、
大切なものは案外身近にあったということに改めて気づかせてくれる作品でした。
初監督ながら期待以上に素晴らしく、そして楽しい作品でした。

https://www.youtube.com/watch?v=yBJdLBn8d5k


ちなみにクリスティンのその後が、監督が主演だけでなく共同脚本を
担当した”フランシス・ハ”に繋がるんだということがわかりました。
憧れの都会に出ても演劇は中途半端、友達と喧嘩したり、男運がなかったり、
クリスティンはフランシスそのものでした。こちらもオススメです。
https://www.youtube.com/watch?v=coKpbsSaaGU



”犬が島”

”ムーンライズ・キングダム”(13/2月日記)、”グランド・ブダペスト・ホテル”
(14/6月日記)がよかったウェス・アンダーソン監督の摩訶不思議な人形アニメ。

今から20年後の日本、メガ崎市ではドッグ病が蔓延し、人間への感染を恐れた
小林市長が、全ての犬を沖合の犬が島に追放すると宣言する。
数ヶ月後、島には怒りと悲しみと空腹を抱えた犬たちがさまよっていた。
そこに小林市長の養子・アタルが乗り込み護衛犬だったスポッツを探しにやってくる。
アタルは島で生き延びていたノラ犬・チーフをリーダーにした五匹の犬に出会い、
一緒に探索の旅に出る。一方、メガ崎市では小林市長を批判し、ドッグ病の治療薬を
開発していた渡辺教授が軟禁され、不審に思ったメガ崎高校新聞部のヒロシや
女留学生ウォーカーが調査を始める、、、、。

日本大好きな監督らしく、三人の少年が叩く和太鼓の響きから映画は始まり、
続いて黒澤明作品の仲代達矢のような神主が現れてびっくり。
舞台はいたるところに日本語や浮世絵調の背景が氾濫する、少しレトロな日本。
登場人物は日本人なので日本語を喋り、劇中の通訳によってそれが英語に同時通訳、
犬は英語(監督作品に馴染みの名優達)を喋り、アタルは犬と通訳機を通して会話ができる。

そんな精緻に作られた背景や人形によって作り出された摩訶不思議なワールドで
展開するファンタジー、よく考えるとツッコミどころは多々ありますが、
あまり気になることもなくテンポよく話が進んでいきました。

そんな感じでストーリーというより、ムーンライズ〜、グランドブダペスト同様、
監督の作り上げた独特の色彩や浮世離れした世界観を素直に楽しむ作品です。
アタルとスポッツの再会だけでなくスポッツとチーフの因縁、犬たちの団結、
ウォーカーの頑張りとかのサイドストーリーもあったり。

和太鼓や日本語、背景だけでなく、途中には”七人の侍”の曲が使われたり
そういう小ネタにニンマリします。
もう一回画面の隅々まで見たいと思わされる、そんな愉快な作品です。

https://www.youtube.com/watch?time_continue=6&v=q6vR5Bqq3q0



あんまり何も意識せずはしごして見た二作品でしたが、
グレタは”犬が島”で行動的な留学生ウォーカーの声をやっていたし、
シアーシャを初めて見たのは”グランド・ブダペスト〜”でのお菓子屋の娘役。
さらに犬が島のボス犬・チーフ役の声をやっていたのは、
先日見たハル・ハートリー監督の”ネッド・ライフル”でCIA役をやっていた
ジェフ・ゴールドプラム、そしてグレタの出世作”フランシス・ハ”は
随所にハル・ハートリーの影響を感じられたり(詳しくは14/9/23日記を)、
色々と繋がっていました。

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