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2017年10月30日23:57

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貴族ごっこの仏料理、楽しめなければ苦行の体力勝負2時間半 (2/2)

魚料理は、「千葉県大原産黒蚫のムニエル、肝と卵のソース 、焼いたズッキーニ添え」(2,376円追加)。苦味たっぷりの肝ソースがしょっぱくて頭の毛が逆立つ。握りこぶし2つ分もある蚫は、でっかさの迫力こそあれ大味だ。身の締まりも歯ごたえも弱く、ソースが旨味を駆逐していた。表面のバターの塩気が多い。頼みの中和役の卵ソースは油っぽくて機能不全。鮑はやがて口の周囲と思われるブヨブヨした部位に。ゼラチンっぽくてわたしはひしがれる。

満腹感が押し寄せた。この蚫が肉料理のお皿だといいんだけど? (肉料理であれ。) 帰りたい気持ちにスイッチが入る。眠いッ。そして拘束が苦しくなってきた。そう、外出が週1回で、週6日は22時間をお布団で過ごす身には座位がきつい。コース料理って貴族の食事なんだ。もともとはそうだったはず。それを金持ちがまねて、今じゃ庶民にも開放された娯楽。受益する幸せに浸れないようでは価値がない。隣のご主人は寝落ちした。かわいそうに。

わたしも油断したら眠るかも。疲れたし。そこに長いスティックケーキ(?)2本が登場。しめ鰯のスライスがカリカリのトーストに乗って。なんとそれが魚料理と肉料理の中間の口直しだと。ミラクルしつこい油分だが。3口分はあったから、1本を2口に分けると、噛み切れず苦労。どんな臭いものも口に入れる自信があったのに負けた。残る1本をまるまる諦める。秒速で給仕は察知して駆けつける。
「嫌!? 嫌?」
そう、口に合わなくてスイマセェーン。

「16年ぶりに入荷しました南仏ロゼール地方産仔羊のもも肉のロースト」(594円追加)。長い火入れを頼んだけれど足りない足りない。サラサラのしおはゆいタレが涙腺を刺激する。握りこぶし大の塊の2個は責め苦。2人で分けるはずのお皿を出された責任かも。下に敷かれたじゃがいものピューレのざらついてむっとするミルク臭。南仏ロゼール地方の仔羊が16年ぶりに入荷しました値打ちはわかるものの、もうさ、ローマ貴族の「羽を持ってきて」を発動したい。

やっとチーズにたどり着けた。4種類から選べて、3キレもらえた。「わたしはチーズに目がない」と言い聞かせて口へ運ぶ。機械的に、そう、考えず、感じず。くるみとレーズンの焦げたトースト2枚はパス。給仕は見抜き、訊きもせずに下げてくれた。

コーヒーマシーンが爆発したそうで、すべてのお客がコーヒーを断られる。6種類から選べるハーブティーのうちヴェルヴェンヌをもらう。おっと、きついレモングラスそっくりのフレーバー。草臭い。

苦しみ以上の贅沢を味わい尽くした。寝落ちした隣のご主人は、何度か起こされ、また眠りこけた。わたしは最後の1個のパンを紙袋に隠して、おかわりのパンとバターを断る。それはしっかりとバレていたんだな。

アルミホイルに包まれた3個のパンを渡された。裏返したビニール袋に入って。袋に髪の毛が混入していたのは偶然かどうか。

お店を出ると給仕の声がした。
「出て! 国旗の横の旗を見て!」
そりゃ振り向くじゃない。給仕は、
「帰っていいですよ」
と。旗を見せたいのはわたしでなく従業員だった。わたしが貴族なら嫌な顔をするところだが、2時間半で満腹にさせれば愉悦する客の1人なので。

「型にはまった」ものを愛するわたしは、お店の色を楽しめる人間ではないし、満腹という塗炭の苦しみの中で、車を置いた駐車場まで200mの徒歩は度しがたし。仏料理店に来ればそういう2時間半を過ごすことになるんだと想像してあったのに、予見が足りなかった。ごっこならおもしろがっていればよかったのだし、起きて耐えただけできっと合格だ。わたしは二度と満腹にならないと誓う。またひとつ知恵と嗜みが養われた。
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