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2016年03月20日00:50

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経済談義第19回:貿易と需要供給

経済談義シリーズ第19回です。日本経済超悲観派の僕がその論拠を解説していきます。


物価シリーズの続き、今回は「貿易」が需要と供給に与える影響についてです。

これまで3回にわたって、需要と供給がバランスしない「絶対不均衡」について説明して、その両極端の例として「中古住宅」と「介護サービス」を挙げました。
かたや供給超過、かたや供給不足と対照的な状況でしたが、実はこの両者には共通点があります。それは、「貿易が難しい」という点です。
中古住宅の供給(空き家)を外国に輸出するのはまず不可能ですし、需要(家族)を輸入してくる(つまり移民を招くということですね)のもかなり難しいでしょう。


一方、これが貿易可能な商品の話であれば、状況は大きく変わってきます。ある商品がひどく品薄になったら海外から輸入すればよいし、逆に需要がなくて商品があまりに売れない時には外国にもっていって売りさばくこともできるでしょう。世界の市場が連携することによって、一国の市場の需給アンバランスを調整することができるのです。

それを需要供給曲線であらわすとグラフ1とグラフ2のようになります。それぞれ、輸出による需要の上乗せ、および、輸入による供給の上乗せにより曲線がシフト(移動)して、グラフが交わる、つまり需給の絶対不均衡が解消されていることが見てとれます。需給が交わるとなればこれは従来の経済原理が成り立つ世界ですから、経済学で確立された様々な考え方や手法を適用できることになります。一安心ですね。


ただし、貿易できる商品の価格には別の要因があります。それは国際競争です。世界市場で価格競争が起こりますから、生産コストの安い国に引っ張られて市場価格は下がっていくことになります。
「テレビ」を例に挙げると、日本でテレビの売れ行きが少々増えたからといってテレビが値上がりすることはほとんどありません。もし値上がりすることがあったとしても、それが日本の景気に与える影響は限定的です。

なぜなら、いまや日本ではテレビはほとんど生産されていないからです。日本で販売されているテレビは中国や東南アジアで生産されていて、そしてその主要部品である液晶パネルでは韓国や台湾、中国のシェアが増えています。日本でテレビが売れると、それは日本国内ではなく中国や東南アジアの工場の稼働率を上げることになるわけです。

一部のブランド品などは高くても売れますから値引き競争に巻き込まれずに済みますが、それは全体から見ればごく一部にとどまるでしょう。


貿易というのは各国が協力し合って得意な製品同士を融通する仕組みだから良いことである、と経済学では考えるのですが、こと物価を上げてインフレを起こそうとするアベノミクスにとってはと限っていえば、貿易というのは追い風より逆風になるケースのほうが多いだろうと僕は見ています。それは経済学が間違っているというわけではなくて、インフレさえ起こせば万事解決するかのような短絡的な考え方に再考の余地があるということです。


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