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2015年09月05日01:32

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゚Д゚) < 大地のうた(Pather Panchali)

テレビで「それヤメて!」と思うことランキング
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=45&from=diary&id=3600071

 そらまあ、「見所はここ!」とか言って映画のあらすじしゃべったかと思うと、いきなり出演者のいじりを始める所ですかねえ。それで、映画と関係ないお笑いネタやらされたとかで「もう二度と日本来ない」と言った人もいたとかいないとか。
 別に拝み倒せ、とは言わないけど「この映画面白そう」って思える演出なり情報の圧縮法なりが欲しいと思いますデス。ハイ。
 寡黙な映画には、饒舌な宣伝ではなく寡黙な宣伝で攻めて見るのもイイと思うけどなあ。

 ま、映画ファンなんて、人の語る映画論聞いてるだけで「ムキーーーオレの方がウマく語れるわー!!」とか言っちゃう人種ではありますが。てへ。
 そんなこんなで、今日も寡黙なインド映画を饒舌に語るのだゼイ。


大地のうた(Pather Panchali) 1955年 122分
主演 シュビル・バナージ & コルナ・バナージ & ウマ・ダシュグプタ
監督/脚本 サタジット・レイ
"務めも十分果たしました… 川を渡る時が来たのです…船賃は、持ってはいないけど"

https://www.youtube.com/watch?v=jsmZKpoW8bY
*「大地のうた」だけではなく、続くオプー三部作全部を含む予告編。

 ベンガル地方の農村ニスチンディプール。借金をかたに代々受け継いで来た果樹園を手放したローイ家は貧困に喘いでいた。
 文学を志す司祭職の父親ホリホル(通称ホリ)は、果樹園を買った地主の家で会計仕事をしながらも借金を返せない日々。貧困と家事に追われグチと小言ばかりの母サルバジャヤーと、居候の老伯母インドゥルはケンカばかり。娘ドゥルガーは子供好きな老伯母のためにたびたび果樹園で果物を盗んでくるため、村では「あの娘は盗人」と陰口を叩かれる毎日が続く。
 そんな中、一家に新しい男の子オプーが産まれる…。

劇中歌 Hori Din to Gelo

https://www.youtube.com/watch?v=8kBmDpb8Mvw

雨のシーン

http://www.youtube.com/watch?v=wnm7QP1JXgY

わーい(嬉しい顔) ビブーティブーシャン・バンドパタヤ原作による、1929年の同名ベンガル語(北東インドの西ベンガル州とトリプラ州の公用語で、バングラデシュの国語)小説の映画化(半自伝的な小説とかなんとか…)。インド映画界の巨匠サタジット・レイ(ベンガル語発音ではショットジト・ラエ)の初監督作であり、オプー三部作の第1作。原題の意味は「小さき道の歌」。
 日本では、66年に一般公開(一般公開に行き着くまで、かなりの苦労だったらしい…と言う話も伝わってきますけども)。

 世界でも日本でも最初に注目されたインド映画であり、世界の映画史に燦然と輝く傑作の1つ。
 本作で、批評家達に大絶賛されたサタジット・レイ監督を、日本では「インドの黒澤明」と呼ぶようになったとかなんとか。偶然にも、後に黒澤明自身が、自分で映画館をやるならと選定した100本の映画の中で最高作と絶賛したのが本作だったと言う。黒沢監督曰く「サタジット・レイの映画を見た事がないとは、この世で太陽や月を見た事がないに等しい」。

 サタジット・レイは、1921年英領インドのカルカッタ(現コルカタ)にて、作家兼イラストレーターの家に産まれる。
 3才時に父を亡くし、芸術を志しながらも母の勧めを受けてタゴール国際大学へ進学。東洋美術を学びながら英国人の経営する広告会社に映像製作助手として就職。映像の他グラフィックデザインや書籍カバーデザインをこなし、同じインド人同士で印刷会社やコルカタ映画組合を設立して行って、その中で本作の映像化を構想し始めたと言う。
 1949年、「河(Le Fleuve)」の撮影のためにカルカッタに来ていたジャン・ルノワールとロケハンの仕事での交流中に「是非作るべきだ」と背中を押された事、翌50年に会社のロンドン本社勤務となった際に「自転車泥棒」を初めとする数々の映画を見続けた事で、長年の夢だった「大地のうた」の映画製作に踏み切ったと言う。
 ほぼ素人たちの制作チームと個人資金だけの状態で、52年に撮影がスタート。製作資金の調達に四苦八苦しながらも、スポンサー等からの物語介入を許さなかったサタジット・レイは、数々の苦労を越えて3年かけて本作を完成させ、55年に封切られるや国内外で大絶賛されることになる。

 劇中に描き出されるのは、緑濃いベンガル農村地域の生活臭、貧困、新生児と老醜、多様な生物層、失われる夢想と厳しい現実、影、闇、雨、ドゥルガーの眼、母親の眼、老伯母の眼、オプーの眼…。
 物語自体は、淡々とした農村の日常を切り取りながら、貧困のどん底から抜け出せないローイ家に起こる1つ1つのエピソードを、やはり淡々と積み重ねて行く。原作を知らないので、どこまで原作通りなのかは分からないけど、その日常生活の切り取りかた、エピソードの積み重ねかた、それぞれの登場人物たちに託されている暗喩めいた存在感…そのどれもが詩的に、そして素晴らしく映像的に描写されて行く。
 浮世離れした"楽観的な夢"を体現する父親、"非情な現実"に押し潰される瀬戸際の母親、"死"を体現しながら、だからこそ狂言回しのように家族に関わってくるユーモラスな老伯母。一家の生活を支える牝牛。貧困に喘ぐ家庭に鎮座する財富神ガネーシャの像。天上を思わせる蓮池やススキ野。無邪気な姉弟に降り掛かる数々の突発的事件…。そこに流れるゆっくりした時間や、感情の渦や、一家それぞれの人生模様が、淡々とした映画の中に大きなうねりとして描き込まれて行くダイナミズム。まさに、映画でしか描けない珠玉の映像詩である。

 主役オプーを務め、世界中から絶賛されたシュビル・バナージは、5〜7年かけてサタジット・レイが探し出したと言う子供で(きっかけは、オーディションで見つける事を諦めかけていた時に、レイ監督の妻ビジョヤ・レイが自宅アパートの隣の屋根で遊んでるシュビルを見つけた事からだとか)、演技経験なし、父親の反対などありつつ、結果世界を驚かす名子役として名声を博すこととなった。
 しかし、その後シュビルは一切映画界と縁を切って一般人として生活し、1980年に雑誌インディア・トゥデイが彼の消息を報じるまで誰も彼に関心を払わなかったと言う。その後、彼の映画出演後の人生(奇妙にオプーとシンクロする人生なんだとか!)を題材とした再現ドキュメンタリー映画「オプーのうた〜『大地のうた』その後(Apur Panchali)」が2013年に上映、翌14年に公開されている(日本では、14年の東京国際映画祭で上映)。
 オプーの姉ドゥルガーを演じたウマ・ダシュグプタ、幼少期のドゥルガーを演じた子役ルンキ・バナージ(生誕名シャンパ・バナージ)も、本作以降映画界を離れたようで、その後の情報が出てこない。

 オプーの母サルバジャヤーを演じたのは、1919年カルカッタ生まれの女優コルナ・バナージ。
 すでにベンガルの演劇界と映画界で活躍していた彼女は(1942年の「Mahakavi Kalidas」と言うヒンディー語映画に出演しているらしい)、本作の後もサタジット・レイ監督作を始め映画出演を続けた後、01年にラクノウにて物故されている(享年81歳)。

 異彩を放つ存在感で印象的な老伯母インドゥル・タクルンを演じるのは、1872年生まれの女優チュニバラ・デヴィ。
 演劇界で活躍していた中、1930年に「Bigraha」で映画初出演。39年の「Rikta」の後に俳優業をリタイアしていたものの、本作に出演しているレバ・デヴィ(セジャ・タクルン役)を通じてサタジット・レイと会い、本人の強い希望のもと出演が決定したと言う。本作で、史上初の国際映画祭での賞を獲得したインド人俳優となったと言うが、本作公開前にカルカッタにてインフルエンザで物故(享年83歳)。レイ監督は、彼女の自宅で公開前に本作をプロジェクター上映して彼女に見せていたそうな。

インタビュー集ドキュメンタリー:「大地のうた」その反響(英語)

https://www.youtube.com/watch?v=arzpoAOFlfQ

受賞歴
1955 National Film Award 金蓮賞・ベンガル語映画銀蓮賞
1956 カンヌ国際映画祭 パルマ・ディオール賞・ヒューマンドキュメント賞・OCIC(国際カトリック事務局)特別賞
1956 伊 ローマ映画祭 ヴァチカン映画賞
1956 フィリピン マニラ映画祭 金牛賞・最優秀俳優賞(チュニバラ・デヴィ)
1956 英 エジンバラ国際映画祭 功労賞
1957 独 ベルリン国際映画祭 セルズニック金月桂樹賞
1957 米 サンフランシスコ国際映画祭 金門監督賞・金門作品賞
1958 加 バンクーバー国際映画祭 作品賞
1958 加 ストラトフォード映画祭 批評家選出作品賞
1958 米 ナショナル・ボード・オブ・レビュー 外国語映画賞
1959 米 ニューヨーク映画祭 外国映画賞
1966 キネマ旬報 ベストテン第1位・ベスト外国映画賞
1969 デンマーク ボディル賞 非ヨーロッパ映画賞
1980 BFIロンドン映画祭 ウィングストン賞


・大地のうたを一言で斬る!
「それにしても、猫飼ってる描写の出て来るインド映画って初めて見たかも」
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