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2015年04月04日22:34

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小説(というより随筆)函館百景 その2

随筆、函館百景その2。

この時に久々に読み返しても、やっぱり淡々としている。
もう少し山を作ったほうがいいと思ったんだけどね。
やっぱり山は函館山に登る時か。
イルミネーションは是非とも載せたいけど、いかんせん載せることができるのは3枚。
残りは読者に想像してもらうしかないか。
もうしわけありません。

テーマソング:リチャード・クレイダーマン『午後の旅立ち』



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函館駅のプラットホームから駅構内に入ると、
『きのうの敵はあすの友 箱館解放 1868年』
と書かれたモニュメントが目に入った。
ちょっと気に入らなかった。
その陰で土方歳三が死んでいったのだから。『新撰組!』『燃えよ剣』を見て以来、僕は土方のファンになっている。理想の人物像も彼である。


長い廊下を歩み、汗ばんできた額を拭いて改札口を出ると、青い空の下、ロータリーに出た。
伸びやかであった。
北海道らしかった。
少し不満げだった気持ちも、和らいだ。
提灯を吊るしているあたりを考えると、駅前でビアガーデンでもやるのだろう。実際は結局、行けなかったが。旅の身の上、あまり酒は飲めない。
泊まるホテルは駅を出てすぐ左手にあった。
リュックが重いので、荷物をホテルの窓口に預ける。
チェックインはまだで、部屋には入れない。少しロビーをぶらついてみる。
右に曲がって細い道に入ると、パソコンが二台置いてある。無料で使えるので、ちょっと自分のブログをのぞいてみた。
隣のパソコンを見ると、眼鏡をかけた丸坊主の男性がパソコンを使っている。ディスプレイには漢字ばかりで、平仮名がほとんどない文章が羅列していた。中国語と思われる。
函館は最近、外国人客に人気があるという。
やはりこの人も観光客なのだろうか。
まだまだ日本観光は捨てたもんではないかもしれぬ。
もっとも、それは自分が様々な外国に行ってから言うべきなのだろうが。


蒸し暑い、というほどではないが、暑い中を歩くのにはこたえた。ホント、自分の住むところと変わらない。
今日中に元町はなるべく征服したい。
そう思って、路面電車の1日券を購入し、函館駅前を通る路面電車に乗る。
五稜郭は明日に行くことにしていたので、そこからJR五稜郭駅までバスがあるかどうかも聞いてみた。そのまま五稜郭駅を出発して、札幌に行く予定だった。
一応あるというが、本数は少ない。正午には通っていないという。
とりあえず、五稜郭に行ってから考えることにして、券を受け取った。
路面電車は道路交通の妨げになるということで、一時は縮小・廃止の一途をたどったが、ヨーロッパでは二酸化炭素をあまり生み出さない交通機関ということで見直されてきているという。北海道でもそうなのだろうか。
プラットホームは鉄道というより、道路の真ん中に位置するバス停という感じで、バスと認識してもいいような気がした。
やがて電車が来たので、乗って見る。
入口で整理券を受け取り、降りるときにはボタンを押し、勘定を支払う。
このあたりもバスに似ている。
乗り心地もバスのようであった。
ただ、席は向い合せで、電車に似ているが。
昼時ということで、少し混みそうなものだったが、中は数人しかおらず、楽々と座れた。
旅行誌るるぶをめくり、いい料理が食べられそうなところを探す。魚介類は当たり外れが大きい。肉系がいいとおもいつつ、一つの店の情報が目に留まる。
『バーガーショップ ピエロ』
ハンバーガーではあるが、ここの地の店であるし、悪くはないかもしれない。
軽く食べるか。


末広町で降りて、北島三郎記念館入口で少し休む。
とはいっても、なんだか行く気がしなかった。
幼いころ聞いたのは吉幾三の歌ばかりで、サブちゃんの歌にはなじみがなかった。それに函館にはちょっと合わない。それもあったかもしれない。
潮風に吹かれたくて、外に出て港を眺め見る。
風は全くない、無風状態だった。
でも、景色はなかなか綺麗だった。
海がご無沙汰だったからだろう。
黒い海の上に、白い客船が通る。松島でも、千葉海浜公園でも、南房総和田浦でも、この光景は見たことがなかった。そのまま船を追いかけるように港を横切り、赤い煉瓦の建物へ。
赤レンガ倉庫群である。
以前見学した、ニッカウヰスキー工場に似ていた。


暑さを避けるため、レンガの中に入る。
ちょうどお土産処といった感じで、イカの干したもの、ワイン、ラーメンなど、函館の土産としてはそれなりに名の知れたものが置かれていた。冷蔵庫から出る冷たい空気が、涼しい。
日本人から金髪の男女まで、様々なお客が歩き回る。江戸末期に開国してから今日まで、多国籍が似合う港町というイメージは変わっていない気がした。
ワインの試飲コーナーがあったので、白ワインを一杯飲んでみた。多少アルコールの刺激があるものの、口当たりはいい。甘くて、グイっと飲むことができた。
甘すぎて、多少のども渇いてしまったが。


腹がすいたのと、のどが渇いたのとで、いったん外に出て、ピエロを探す。
が、お昼時であったということもあり、混んでいた。
8人ほど若い男女が、入口でたむろしていることを考えると、結構混んでいるだろう。案の定、30分くらいは待たされるという。
あきらめて隣の店で、エスカロップを食べることにした。
その店はレストランというより、喫茶店に近い。やはりお昼時で、家族連れが4組ほど座り、あいている席は真ん中のところしかなかった。
迷わずるるぶにも紹介されていたエスカロップを注文する。
これは注文して正解だったと思う。夜の十時まで何も食べなかったが、そんなに腹も減らなかった。
できるまでに20分ほど待たされた。
カメラをもう少し使いこなせたほうがいいと思い、周りの額縁や、窓を撮っていく。
昼食場所
エスカロップは、ウインナーだけ熱いという感じで、ミートソースは解凍したものらしく、妙にぬるく、ぬるぬるしていた。それでも口当たりは良く、一口食べたら止まらなくなっていた。
30分弱で完食した。


そしてまた、赤レンガ倉庫へ戻る。
エスカロップの味が濃く、少しのどが渇いた。
持ってきたCCレモンの残りを飲み干す。炭酸の抜けたCCレモンほどまずいものはないが。
暑さで頭がぼんやりした状態で、お土産処に入った。
お土産処で一番長い時間を費やしたのは、ガラスを売っている場所。そこには様々なグラスが置かれていた。
鉢型のグラスが多いが、ワインを入れるのに使うつづみ型、長身の型もある。どのグラスも蛍光灯の光に反射して、七色に見える。あまりワイングラスはおいてほしくなかったが。下手に取り上げると壊れてしまう。
『アイヌ仕様グラス』が気になった。自分の目線よりも高い棚から、一つとってみる。
アイヌ人は昔から、狩猟や採集で生計を立ててきたといわれている。大方この模様は海沿いに住み、魚を主食としてきたアイヌ人が生み出していったものなのだろう。曲線の文様がアンモナイト、さらには波を思い出す。やはりどこの文化でも、渦状、波を思わせる曲線が美しいと感じるのだろうか。
人間の美意識は結構面白い。大体あまり変わらない。
トポロジーは人間の美意識を追求するためにもあるのかもしれない。
ぼやけた意識も、ようやくはっきりしてきていた。


肩掛けがグラスにぶつからないようにしながら、グラス売り場を後にする。奥のほうにすすんでいくと、檜の部屋にスルメイカが置かれていた。
茶色い。
あまりこの函館という土地には似合わない気もした。昔からイカ漁が盛んであるのは分かっていたが。少なくともイカは白い身のまま刺身にして食べるに限る。
その隣に、『イカール星人』と呼ばれるグッズのフィギュアがある。のちに札幌で見たマスコット『イラックマ』に似たご当地マスコットといった感じか。
ぎょろ目で茶色く、黒いまだら模様がついている。
ご当地ヒーローでは、イカはイカール星人として悪役のポジになっているようだが。戦隊ヒーローではなく、ウルトラ警備隊のような軍団の宿敵である。
タコに比べるとイカは、人々にあまり親近感を与えていないような気がする。
タコは日本人にとってはユーモラスで、『蛸薬師』というタコの神様も存在する。一時期「火星人はタコのようだった」という噂が流れたこともある。西洋人にとってはクモと並んで気持ち悪い生き物の代表らしく、『devilfish』の異名を持つ。ギリシャ神話でも『クラーケン』というタコの化け物がいる。
それに比べてイカはなぜ、人々に印象を与えなかったのか。体が白いのと、割としっかりした胴体をもち、規則的に足を動かすからだったからだろうか。タコは不規則に動く。
函館で『不規則な』悪役を見たような気分である。それでも結構全国で話題になっていたらしく、朝日新聞では特集を組んでいたようだ。記事のスクラップを読んでみると、この悪役は妙に人気が高い。
昔からインパクトの強い悪役は、主人公以上の人気を博するといわれている。このイカール星人、ばいきんまんやフリーザ程とはいかぬとも、インパクトはそれなりにあるらしい。


外に出てみる。
結婚式場を通り過ぎる。
また頭がぼんやりとする。
船の波止場を横切り、そこから赤レンガ倉庫、そして函館山をのぞき見する。


夜になったら、函館山の景色を楽しもう、と思った。
その時間まで、思いっきり元町を楽しもう。車が激しく往来するが、それも悪くはないではないか。鈍角の函館山と、4本ほど生えている展望台の鋭角な電柱を仰ぎ見る。太ったトトロに似ていた。


続く

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