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2015年04月07日21:29

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小説 SOS団VSスケット団 第3話『ハルヒ、普通人になる 前編』 その1

名前から察するように、涼宮ハルヒの憂鬱×SKETDANCEクロスオーバー小説。第3話。
今回はスケット団の顧問・チュウさんの薬でSOS団がひと騒ぎ。という話。
それにしても僕はやっぱりギャグやコメディが得意じゃない。
ハルヒとスケダンの組み合わせを考えて軽く明るくしたほうがいいと思ったんだけど。
(もう一つの二次創作系小説『Cross Ballade』が重低音の強い作風ということもあったし。)
ちょっと今回のギャグもひどいかも・・・。
まあ、それはおいといて・・・・。


若者よ、恋をしろ!

テーマソング:中島孝『若者よ!恋をしろ』

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「はぁ? おめぇら、北高SOS団とは友達じゃねえの?」
 ここは開盟学園化学準備室。
 2リットルペットボトルが床に無数に置かれた所で、中馬鉄治はスケット団に胡乱な目を向けていた。
「違うって、チュウさん!」ボッスンは両手を出しつつ、「あいつらは勝手に俺達に興味を持ってきて、しつこく俺達に付きまとおうとしてたんだ。部活の邪魔になるかもしれなかったんだよ。まあ手を引いてくれるとは言っていたけど……」
「でもよお、涼宮ハルヒは、俺の薬の実験台になってくれると言ってくれたんだよ。
俺としては、実験体が増えることは嬉しい限りなんだ。
今回の発明品は調子に乗ってたくさん作っちまったしさぁ。準備室では保管しきれないんだ」
「何やってんだアンタ……」
「とにかくおめえら、あのSOS団にも渡してくれよ。折角の発明品なんだからさ。こっちとしては処分するのはあまりにも惜しいんだ」
「そう言われてもなあ……」ボッスンはため息をついて、ペットボトルの1つを取り、「こりゃいらねえ薬だろう……。
それに渡すのは稀代の変人・涼宮ハルヒとその仲間達だぜ。手に入れたら何に使うやら」
『……まあ、なるべく俺達で何とか処理しよう』スイッチがフォローしてきた。『ボッスンは椿には飲ませたくないのか? そうすればうるさい人間が一人減るだろう』
「まあ、一つの案ではあるがな」ボッスンは腕組みをして、「とはいっても、それだけでこれだけの量を消費できそうなもんでもねえしな……」
「そや」横から聞いていたヒメコは、掌をぽんと叩いて、「SOS団の人達なら、一人だけ渡してもよさそうなのがおったわ」
「ヒメコ?」


 いつもの秋晴れ、いつもの登下校の道。
 キョンはけだるげに、あくびをしながら歩いていた。
 秋が深まり、木の葉は大体落ちつくした。
 あれから3日たつ。
 ヒメコさんには一度も会えなかった。当然だが。
 まあ、1ヶ月後でも1年後でも、会える日を楽しみにしていよう。
「キョンくーん!」
 ふいに校門から、明るい声をかけられた。
「ヒメコさん!?」
 県立北高校と書かれた銅版の前で、ヒメコが金髪と色白の顔で、2リットルのペットボトルを抱きかかえて待っていた。
 再会が意外にも早いな。
「ええ天気やなあ」
「ええ、そうですね……」キョンはドキドキしながらも、「学校大丈夫なんですか? 遅刻してはまずいのでは?」
「大丈夫、この時間帯なら、急げば何とか間に合うやろ。
それよりあんなぁ、是非とも渡したいものがあるんや」
 そう言ってヒメコは、抱えていたペットボトルを差し出した。
 その中には、緑色だが多少濁り、お茶と言うより青汁のような液体が丸々と入っている。
「なんですか、これは?」
「チュウさん、あ、中馬先生が開発した、『あべこべ茶』や」
 そう言えばそんな先生がいたなと思いつつ、キョンは、
「ハルヒの奴、是非とも薬の実験体になりたいと言ってたんですよね」
「そや、その薬が完成したんや。お茶と言う形やけどな。
これは一言でいえば、飲んだ人の性格を真逆にするお茶なんや」
「性格を、真逆……?」
 何やらドラえもんのジキルハイドみたいな薬だな。キョンはちらりとそう思った。
「まあ要するに、気弱な奴は強く、明るい奴は暗く、飲んだ人間の性格とまったく正反対の人格を呼び覚ます効果があるんや」
 眉唾だな。キョンはそう思いつつも、
「ありがとう。とりあえず誰に飲ませるかは考えておきます」
味見も兼ねて自分が飲むのもやぶさかではないが、普通人の自分が飲んだら自分がハルヒみたいな稀代の変人になってしまうと、キョンは思いなおした。
「なあ、キョン君」
「はい?」
「あたしの勘違いなら忘れてほしいんやが……」ヒメコは顔をそっとキョンの耳に近づけ(キョンはぽっと赤くなった)、小声で、「SOS団に所属する宇宙人や未来人や超能力者って、あんたのことなんか……?」
 思わぬ質問に、彼は瞬き。
「いえいえ、俺は普通人ですよ。
そうだなあ、信じてもらえないかもしれませんが、実は宇宙人は……」
 今度はキョンが、ヒメコの耳に顔を近づける。
 その時、
「ひいいいいっ!!」
 という悲鳴が聞こえた。
 ふと横を見ると、皆皆がぎょっとした表情で1ヶ所を見ている。
 そこでは長門が無表情で、スイッチからもらったマンドセルを背負って歩いていた。
 3日間、ずっと愛用している。
「……長門の奴、あれからずーっとマンドセルを使ってるんか……?」
「ええ、どうやらすっかり気に入っちゃったみたいで……。ただでさえランドセルを使う高校生はいないのに……道行く人が卒倒しないといいけどな」
 マンドリルの頭部を背負っているかのような長門を見て、キョンもヒメコも、唖然とした。
 そっとキョンは付け加えた。
「実は長門は、本当の宇宙人なんですよ……」
「やっぱり?」
「正確に言うと、宇宙生命体に作られた人造人間。それから、朝比奈さんが未来人で、古泉が超能力者」
 ヒメコは思案顔になり、
「……とりあえず覚えておくわ。ま、ボッスンやスイッチに話しても信じてもらえへんやろうけど」
 駆け足で去っていった。


 教室に行くと、窓際の彼の机の隣で、友人の谷口がニヤニヤしながら待っていた。
「なあキョン、校門にいたさっきの可愛い子、誰だ?
お前涼宮以外にも親しい女の子いるのか。本当に色男だなあ」
「ハルヒとは親しくねえよ。ただ流されるままに活動につき合ってるだけさ」キョンは鞄の中のあべこべ茶を気にしながら、ぶっきらぼうに言う。「それから、さっきの子はただの友達。開盟学園の女の子だけどな」
「そうかなあ、なんだか親しげに会話してたけど」
 谷口は相変わらずニヤニヤ。
 こいつに例の茶を飲ますのも悪くないが……飲ませなくても大丈夫か。
 同じく友達の国木田が心配げに近寄ってきて、
「あの子、あおば中の鬼姫に似てるような気がしたんだけど……。大丈夫?」
「は?」
「中学のころに何度も教えたじゃないか。鬼姫の暴虐っぷりと、彼女の縄張り。
もし正真正銘の鬼姫だったら、キョンやばいことになるよ。どんな目にあわされるか……」
 まあその通り、正真正銘の鬼姫だが、今はだいぶ性格が丸くなった感じだから大丈夫だろう。
 もちろん国木田にそのことを話すのは控えた。
「キョン!」
 大きな声に、3人は反応する。
 涼宮ハルヒだ。
「今日はとっても大事な日! 校内の超常現象を探しに行くのよー!!
みくるちゃんや古泉君や有希にも言っといてねー!!」
 相変わらずのハイテンションっぷりに、はいはいとキョンは聞き流す。
 相変わらずの他人の都合を考えない手前勝手ぶりだ。
 あの茶を飲ませるべき相手が、すぐそこにいたな。


 いつものようにハルヒと一緒に、キョンはSOS団の部室へやってきた。
「ったく、みくるちゃんも有希も古泉君も、用事があって遅れるってどういう事よ! 今日は校内の超常現象を散策する大事な日なのに!!」
 ハルヒは毒づきながら、部屋のパソコンを起動した。
 キョンはこれ幸いと、自分の湯呑にただの水を、そしてハルヒの湯呑に例のあべこべ茶を入れて、
「ハルヒ、喉渇いてないか?」
「あ? ……まあ、声出してばかりだから渇いてるけど」
「ほら、お茶だぞ」
 キョンが差し出したお茶を見て、彼女は目をぱちくりして、
「……何変なサービスしてんのよ。本来これは、みくるちゃんの仕事でしょ」
「朝比奈さんばかりにこんな仕事をさせるのもよくないと思ってさ。それに、平団員が団長に気を使うのは当然のことだろう」
 キョンはなるべく、筋の通りそうなことを言った。
 しばらく、シーンとした時間が流れる。
「あんた、今日は馬鹿にしおらしいわね……。キョンらしくもない。まあ、いいわ」
 多少疑念の目を向けながらも、片手を腰に当てながら、ハルヒはグイッとあべこべ茶を飲み干した。
 それを見て安心しつつ、キョンがただの水を入れた湯呑に口をつけると、
 ガシャアン!
 湯呑の砕ける音が響き、続いて、
「ぎゃああああああああああああああああ!! ほぎゃあああああああああああああ!!」
 超神水を飲んだ悟空のように、ハルヒが床に倒れてもがき苦しみ始めた。
「ハルヒ? ハルヒ!!」
 思わずキョンは湯呑をおいて彼女の近くに寄る。
 救急車を呼ぼうと思ったが、彼は考えた。
 今は自分と2人きり、ということは傍から見たら、自分が彼女に毒を盛ったと思われてしまうかもしれない。最悪の場合、自分はしょっ引かれる。
 キョンはアジトの窓とドアを閉め切り、音が外に漏れないようにした。
 悲鳴が外に聞こえていないといいが。と言うか朝比奈さん達もこんな時に来ないでほしい。
 そう思いながらキョンは、自分の膝にハルヒを寝かせ、
「ほら、水だ!」
 自分が飲もうとした水を差しだす。
 口はきけないながらも、何とか上体を起こし、がばがばと彼女は水を飲み干した。
 間接キスだな。ちらりとキョンはそう思った。
 水だけはたくさんあるから、ハルヒがほしがるだけ彼は水を飲ませた。


 小半時ほどたった後、
 ピトッ
 急にハルヒの悲鳴がやんだ。
 どうしたんだ!?
 突然のことにそう思う間もなく、我に返ったハルヒは、ぱっとキョンの膝から飛び退いて、
「きょ、キョン君……こんなにくっついたら恥ずかしいよ……」
 はにかんだ表情で手を頬に当て、蚊の鳴くような声。
 君……?
 キョンは思わず瞬き。しかも今のハルヒは女の子座りで、彼女とは思えないくらい妙にモジモジしている。
「は、ハルヒさん……」思わずさん付けした自分に驚きつつ、「もう大丈夫なのか?」
「うん、大丈夫……」
 声も、別人と思えるぐらいか細い。
 もしかして、あべこべ茶が効いたのだろうか。
 普段傍若無人かつ猪突猛進だから、こんな風に大人しくなるのか。
 ハルヒは両腕で自分を抱きしめるような恰好でフラフラと立ちあがり、やはりモジモジした感じで、頭の中で何かを反芻しているようだった。
 豹変ぶりに戸惑いを覚えていたキョンだったが、このままでいてほしい気もする。
 ハルヒの呟きを聞いてみようと思いつつ、近づくと聞こえる。
「SOS団なんて訳わからない部を私が作ったなんて……ただの人間に興味がないって言ったなんて……宇宙人や未来人がいたら私のところに来いと言っていたなんて……!」
 ハルヒの独り言を聞いているうちに、彼女の顔がどんどん赤くなっていくことをキョンは感づいた。
「ああ、恥ずかしい!!」
 ハルヒは両手で顔を隠す。彼女はどうやら羞恥心を制御できないようだ。
 ハルヒは廊下へと走り出す。
「ちょっと待って、SOS団はどうするんだ!?」
「貴方達で何とかして……私、こんな変な団を結成して、団長になって、超常現象とか超能力者とか宇宙人とかを探していたなんて……顔から血が出る程恥ずかしい!!」
 血じゃなくて火です、とツッコむ間もなく、真っ赤な顔を両手で隠して、ハルヒはSOS団の部屋から逃げ出した。
「待て、ハルヒさん!」
 キョンも思わず追いかけてしまっていた。
 あまりに大きな出来事だったので、件のあべこべ茶を、机の真ん中においていたことはすっかり忘れてしまっていた。


「ハルヒさん! どこだー!!」
 思わず1階まで追いかけてしまったキョン。
 周りの人間が、怪訝そうな表情で彼を見る。
「どこ行ったんだ、あいつ……」
 彼女は思いっきり、過去の行動を恥ずかしがっていた。トイレにでも隠れたのだろうか。
 別の意味でトンデモなことをしないといいが……。
 すると突然、校内が小さく揺れた。地震だ。
 それから体勢を立て直しつつ、ふとキョンは、SOS団のアジトに自分の鞄を置いてきたことに気付いた。
 続いて、あべこべ茶を机の真ん中においてきたことも。
「あ、あべこべ茶忘れてきた。もし朝比奈さん達が飲んだら……!!」
 不安が頭をよぎり、あわてて彼は引き返した。


 駆け足で文芸部部室、もといSOS団のアジトに戻ってくると、ゆらりとアジトのドアが開いた。
「!?」
 次の瞬間、キョンは全身に悪寒を覚え、後ろに下がった。不安が恐怖に高まった。
 全身にどす黒いオーラを身にまとった男子生徒が、映画に出てくる貞子のように四つん這いのような格好で、キョンの前に歩み出てきた。
「お……お前誰だ……!!」
「…………!!」
 地の底から呻くような低―い声を、その男子生徒はもらす。
 キョンはその生徒が誰か一瞬分からなかったが、呼ばれたのは自分の名前だったと気づき、すぐに感づいた。
「……お……お前……古泉……!?」
 恐怖で冷や汗がだらだら出、声が裏返っているのに気付かないまま、キョンは顔を上げた古泉の顔を見て、さらにぎょっとなった。
「あのお茶を持ってきたのは……君なのか……」
 やはり地の底のような低い声で、表情はこれでもかと言うぐらいに暗い。
「あ……あのお茶? お前もしかして、あのお茶飲んだのか……?」
「やはり持って来たのは君なんだな……。僕は君のことを、親友だと信じていたのに・・・クククク……」
 古泉は幽霊のように、恨めしげに肩を掴んできた。
「ククク笑いやめろ!! つーかお前にあれを飲ませる気はなかったんだあっ!!」
 普段こいつはさわやかだから、陰湿になるのか。
 古泉の手を弾き飛ばし、キョンはドタドタとSOS団のアジトへと逃げだす。
「長門−っ!! 朝比奈さーん!! 古泉が変だああっ!!」
 入った瞬間、
 ドォン!!
「こらキョン!!!」
 机をたたきながら部屋を震わすような大声を出したのは、朝比奈みくるであった。
「ヒッ!!」キョンはぎょっと後ずさりをして、「朝比奈さん? と言うか俺のこと呼び捨て?」
 上ずった声で言う間もなく、キョンはみくるに自分の襟首をつかまれ、ロリ顔にはありえないほどにすごい剣幕で、
「あのお茶、キョンが持ってきた物!?」
「は、はいっ!!」
 バキッ!!
 目の前にパンチが飛んできた。
「いったいどういうつもり!? 最初からあんなまずいものを飲ませるつもりだったの!?」
「いたあっ!! やめて朝比奈さん! 暴力反対!! っていうか何がどうなってるんですか!?」
 すると、みくるの傍らにいた長門が、怒った表情で、
「実はねーキョンと涼宮のいない間に私達はこの部屋にやってきたんだよーそしたら机にお茶が置いてあったからみんなで飲んだんだーその後舌が焼けるようなまずさでみんなでのたうち回ったんだよーあのお茶は一体何なのか是非とも話してもらいたいなー」
 黒柳徹子にニトロブースターをつけたかのような、早口かつ甲高い声でしゃべった。
 豹変ぶりを見て、キョンの胃の腑が縮みあがり、危うく吐きかけた。
「とにかくキョン、あのお茶は一体何なのよ!!」
 キョンのネクタイをギリギリと締めあげたまま怒鳴るみくる。そのものすごい視線でキョンは震えあがった。
 普段気弱な彼女だから、短気で乱暴になるらしい。
「見た目はお茶だけどー中身はまずいなー、あれはいったい何なのー」
 その横で、怒った表情で長門は誰にともなくぺちゃくちゃしゃべる。
 背後に古泉のヌワァーッっとした雰囲気と、クククと言う笑い声を聞き取り、
「うわあ、逃げ……!!」
 裏返った声でキョンはみくるの腕を払いのけ、部屋の奥へと駆けだす。
 それから尻にみくるのヤクザキックを受け、思わず床に転ぶ。
「いたあっ!! 話します!! 全部話しますから!! お前らは元に戻って!!」キョンの表情は完全に泣き顔になり、声も震えてひっくり返っていた。「お願ぁい!! 戻って!! このままじゃ話す前に俺の気が狂っちゃうよ!!
とはいってもどう戻せば……? あれ、あべこべ茶がないじゃないか。 どこにあるんだ? どこにあるんだ? 
いたあっ!! 朝比奈さん、だから暴力反対! 今のキックは俺のケツの穴にジャストミートしてましたよ!!
そうだ! あべこべのあべこべで元通りにできるかも!! とはいってもどこにあるんだ?」
 赤ん坊のように這って3人から逃げ回りながら、キョンは床を探ってあべこべ茶を探す。
「あ、あったぁ!!」
 湯呑が複数割れているところのド真ん中に、あべこべ茶の入ったペットボトルは転がっていた。
 這ってそれを取り、立ち上がる。
 バイオ○ザード並みの恐怖のままに、キョンは目をつぶり、
「うわああああああああああああああああああああああ!!」
 甲高い奇声をあげて3人に向かって突進し、古泉の頭をつかんでじかにあべこべ茶を飲ませた。
「うわわ、何をして……っ!!」
 続いて驚く長門にあべこべ茶を飲ませ、最後にみくるに飲ませる。
 こんこんとせき払いをしながらも、何とか3人は飲んでくれた。
 みくるから金的蹴りを食らって痛かったが。


「ぎゃああああああああああああああああああああ!!!」
「があああああああああああああああああああああ!!!」
「げえええええええええええええええええええええ!!!」
 それからSOS団のアジト中に、悲鳴の三重奏が外に漏れる程響いたのは言うまでもない。
 キョンは水を用意して皆皆に飲ませながらも、悲鳴が漏れないかと冷や汗ダラダラになっていた。
 外に聞こえて皆が駆け付けたら、自分は3人に毒を盛った疑いで確実に逮捕されるだろう。
 悪夢を見ているかのような一時。
 ピタッ
 悲鳴が一斉にやんだ。
 額を拭いながら、キョンは3人の様子を見てみる。
 床から顔を上げた古泉は、いつものニコニコとした表情。
 長門も普段のような無表情になっていた。
 こんなひどい目にあいながらも、いつものペースを崩さないこの2人の耐久力に、今更ながら脱帽させられる。
 へなへなと壁にもたれかかるキョン。風が吹いても倒れそうだった。
 そう言えば、この3人に間接キスさせちゃったな。
 みくるは泣き顔の表情で、彼のところに寄ってきて、
「キョン君……。私が貴方に暴力をふるったこと、悪夢だと思って忘れてください……。ごめんなさい……」
 そう言われると逆に夢として出てきそうなんですが。
 キョンはそう思いつつも文句は言わず、
「性格が変わった後の記憶が残ってるなら話は早いです。実はこのお茶はですね……」
 あべこべ茶のことを、洗いざらい説明した。
 スケット団からもらったこと、飲んだ人間は性格が真逆になること、本来はハルヒだけに飲ませるつもりだったこと。
「成程……」古泉は腕組みをしながら、「それで、今の涼宮さんはどうなってるんですか?」
「あべこべ茶のおかげでとてもおとなしい性格になってくれたけどね。
ただ……。過去の行動を今の人格が受け付けていないみたいなんだ。
『ただの人間に興味がない』の、『宇宙人や未来人やらがいたら自分のところに来い』だのと言ったこと、とても恥ずかしがってたし。
そして廊下に行ってしまってな。探しても見つかんねえ」
 すると、ずいっと古泉が進み出てきた。笑顔が消えて焦燥の表情になっている。
「ひょっとしたら涼宮さん、自分をはかなんで自殺してしまうかもしれません!! そしたら世界が本当に滅亡してしまうかもしれない!!」
「そんなバカな!?」
「忘れた?」長門が無表情で、「涼宮が世界の滅亡を望めば本当に滅亡してしまうこと。自分の滅亡を望めば、一緒に世界も道連れになるということ」
 みくるはそれを聞いて、涙顔で慌てふためき始めた。
 おいおい、じゃあハルヒが年を取って死んだら世界は滅ぶのか?
 とはいっても、今のネガティブになった彼女なら、そういう行動もしないとも限らん。
 思わず彼は立ち上がった。
「みんな、ハルヒを探しに行くぞ!」
 すると、SOS団アジトのドアがドカンと開き、そこに谷口が立っていた。
「谷口!?」
「キョン、汗ぐっしょりじゃないか……。もうすぐ冬なのに、どうしたんだ?」
「それはまあ、おいおい……。それより谷口、ハルヒがどこにいるか知ってっか?」
「実はその、涼宮のことなんだ」
「何だって!?」


日記に収まりきらないので、その2に続きます。



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