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2014年12月10日17:42

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『SFマガジン』1月号特集「円谷プロダクション×SFマガジン』

資料性が高い記事も詰まった一冊ながらここでは小説・エッセイをとりあげたき所存

山本弘「多々良島ふたたび」

多々良島測候所先遣隊唯一の生存者、松井が中谷教授をはじめとする探検隊の一員としてふたたびあの島に向かう!美しき密航者・江戸川百合子も加わった一行が島で遭遇したものは…
さすが山本先生、『ウルトラQ』『ウルトラマン』のエピソードを踏まえつつ多々良島に怪獣が異常に群生していた謎解きは見事。
ちなみに私は10ページのイラストとある箇所と、11ぺージの本文冒頭近くで松井さんがある事実に言及していないことに違和感を覚えましたが読み進むうちにそれが伏線となっていたことに感服した次第。

北野勇作「宇宙からの贈りものたち」

『ウルトラQ』の世界観を背景に現実と妄想のバランスが崩れた世界を「一平ちゃん」視点で語る怪作。シナリオのみの未映像化作品「火星のバラ」まで出てくる!
惜しむらくはメインの下敷きが「宇宙からの贈りもの」だというのに一の谷老人(元ネタでの一の谷博士)の口からあの印象的な一言が出てこないことw

小林泰三「マウンテンピーナッツ」

ふつうの少年少女がウルトラヒーローに選ばれうる『ウルトラマンギンガ』設定で初代ウルトラマンに変身するアイドル志望の女子高生。しかし彼女の前に怪獣以上に恐るべき敵が立ちはだかる。それは自らの正義を疑うことがない人間たちだった…今にして思うと、佐々木守の遺作『ウルトラマン 怪獣聖書』(未映像化シナリオ)でさえこの作品に示された正義の罠を避けえなかったのだなあ、と感慨しきり。


紀田順一郎「<怪獣博士>大伴昌司の真実」
生前の大伴と親交があった紀田先生ならではの一本。怪奇・恐怖文学の草創期に大伴が果たした役割について語るあたりはまさに当事者の証言として貴重。興味深いのは学生時代の大伴が黒澤明『七人の侍』について「消去法のゲームに似ている」「(クライマックスの活劇が)何故か一個のささやかなチェスにしか見えなかった」と指摘していたというくだり。『七人の侍』をゲームに還元できる視点を持っていた大伴が80年代以降のゲーム隆盛の時代まで生き延びていてくれたらいかなる可能性を切り開いていたか…改めてその早世が惜しまれる。


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