『異世界居酒屋のぶ』

蟬川夏哉『異世界居酒屋のぶ』

板前一人に給仕のお姉さん一人、現代日本でならありふれた居酒屋「のぶ」が中世ヨーロッパ風異世界の古都城内になぜか現れたことで起きるささやかな出来事をつづった連作短編集。

無料オンライン小説公開サイト「小説家になろう」から生まれた一冊。

庶民のささやかな楽しみを提供するための店でありながら、現代日本でのありふれたメニューとあたりまえの物量を持ち込むことで実は王侯貴族や豪商までうらやむほどの贅になっているという発想が見事。

クライマックスでようやく起きる事件らしい事件、そこでいいところをかっさらうのは初期エピソードで登場したとある人物、いやもうこの人物が実にかっこいい！

ちなみにこの小説、読んでいる最中は「トリアエズナマ」（古都では「のぶ」でしか飲めない謎のエール）が飲みたくなり、読み終ると厚切りベーコン使ったナポリタンが食べたくなるという困った作品でもあります。

余談ながら、先日上京した際、購入したこの本を滞在中に読もうと開かないままで持っていたところ、宿の近くの書泉でサイン本の平積みに遭遇という惨事が発生した次第…





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