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2012年05月11日02:11

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写真洗浄 寄稿


先日仕事の関係で某機関紙への寄稿依頼がありました。
袋井で行っている写真洗浄を題材に書かせていただきました。
以前ここで書いた日記を元に肉付けをしたものです。
以下、その時寄稿した原稿の草稿を紹介します。
時々参加の遅刻魔の私が書くにはおこがましい内容ではありますが。



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 袋井のどまんなかセンターにて、毎週日曜日に写真洗浄のボランティア活動が行われています。ここでは被災地と連携し、送られてくる写真を洗浄して送り返す、そんな活動をしているのです。袋井の写真屋さんが被災地で写真洗浄が行われていることを知り、それならば被災地まで行けずとも役立てるのではとの思いから始められました。

 活動場所は袋井ですが、浜松のほか、静岡や清水から来ている方もいます。被災地のために何かしたいけれど、現地までは行けない。そんな方々でも身近でできる活動です。黙々となりがちな作業ですが、和気あいあいとしたとても和やかなムードで活動しています。

 写真たちはいずれも悪環境で長期間放置されたもののため、バクテリアなどが付着しています。それらを1枚1枚丁寧に水洗いして乾燥させていくことで、この先長く保存できる状態にするのです。

 一見無事に見える写真でも、洗うと流れてしまうこともあります。既にバクテリアなどにやられている部分なので、残念ですが流してしまうしかありません。そうでないと残ったバクテリアが他の写真を腐食させてしまい、せっかくの洗浄に意味がなくなってしまうためです。

 活動初期には、せっかくの写真たちが消えていくことに参加者から悲痛の声が上がっていました。今では洗浄の前に汚れた状態の写真を写真で撮り、複製を作ってから作業をするようになりました。皆で常に手探りをしながら、より良い方法を編み出してきたのです。

 私が手がけた写真にも、様々なものがありました。

 旅行の写真がありました。還暦を迎えたくらいの方々の団体旅行のようです。日付は1989年になっています。健在であれば皆様80歳を越えるくらいでしょうか。

 結婚式の写真がありました。同じアルバムの中に幼稚園児の写真もあったので、しばらく前のものなのでしょう。この園児は今いくつくらいになっているのでしょう。

 全編猫のアルバム。大学祭で盛り上がる学生たち。

 おじいちゃんが孫を抱いている写真を洗ったら、孫の部分だけ流されてしまったという残念なこともあります。

 腐食が激しすぎて、洗うこともできずに処分するしかないものもあります。

 その写真たちに写っている方々が今どうしているのかはわかりません。犠牲になった方なのか、生き残った方なのか。

 作業をしていると、どこの誰とも知れない写真の1枚1枚に思い出が詰まっていると感じます。普段自分の写真なんてざっとなでるようにしか見ないのに、ここの写真たちには1枚の持つ重みを感じます。写真を通して遠くにいる方々と繋がっています。

 活動場所には、被災地にて写真を見つけた方々の感謝のメッセージが貼られています。

「自宅が土台を残して全て流されました。子供達の成長の記録や幼少の頃からの思い出の写真等何もかもなくしました。ボランティアの方々のおかげで立派にして頂いた成人式の時の写真が私の所に戻って来ました。」

「自分の今までの生活を、すべて失ったような気持ちでいたのできれいになった写真を手にして、確かに私達家族はここで生きていたのだと思えて、本当にうれしかったです。」

「父と子2人で暮らしてきて、3月11日、たまたま休漁で家にいた父は船の様子を見に行き、流されてしまいました。翌日から毎日海を探し歩きましたが今も見つかりません。写真はどこをさがしてもありませんでした。今日やっと友達のお母さんが見つけてくれました。小学校入学の時、父と写した写真でした。本当にありがとうございました。」

 1枚1枚の写真にこめられた切り取られた思い出の瞬間が、本当に大切なものになっていると感じます。

 全ての写真たちが持ち主のもとに帰れるように願ってやみません。




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袋井の写真洗浄は今も続いています。
1年が経過ましたが、新しい地区からの写真を受けています。
先日陸前高田から送られてきた写真が一段落し、今は山田町の写真を洗っています。少なくとも5月末までは続くということです。その後も依頼があれば受けていくそうです。

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