「ジェニーの肖像」 ロバート・ネイサン/1939年米。
物語は1938年のニューヨークの冬にはじまります。ジェニーは主人公イーベンの肘までしかない少女として現れるが、数日後に再会したとき、彼女はなぜか数年を経たかのように成長していました。そして、イーベンとジェニーの時を超えた恋がはじまるのです。時間の不合理によって「必ずしも現在に属していないような女性の永遠性」が暗示されるところがわたしにとってこの物語の最大の魅力です。そして、この物語は、わたしたちが「昨日」と呼び「明日」といって疑わないものが、実は極めて不確かなものであるということを教えてくれるのです。
後に映画化もされたネイサンの不朽の名作です。わたしは井上一夫さんの訳(ハヤカワ文庫)が一番好きです。